自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆選挙とメディア‐上

2013年07月16日 | ⇒メディア時評
  金沢大学共通教育の科目で「マスメディアと現代を読み解く」の授業を担当している。ちょうどいま参院選挙なので「選挙とメディア」が講義のテーマだ。今回の選挙は何かと話題性が多い。ひとつには、インターネットが選挙活動に解禁される初めての選挙として注目され、また、安倍政権がいうところの、いわゆる「ねじれ国会」、衆院と参院で与党・野党の議席数における優位が逆転した状態で開催される国会を解消したいとの政権側の思惑。そして、3つめがアベノミクスの国民の評価であろう。

     選挙期間中、記事では公平・平等な扱いがされているか

 先の授業で選挙公示以降の新聞・テレビのメディアの公平性をテーマに講義をした。候補者を紹介する写真と記事の量・スペースの平等性など、新聞・テレビとも結構気を使っている、との講義内容だった。学生から質問があった。公平・平等とは言え、4日の公示の各陣営の模様を伝える5日付の新聞紙面で、自民の党首(安倍氏)の写真が他党の党首の顔写真より6倍もサイズが大きな写真だった。学生から「これは政権与党だからの配慮ですか」と問われ、これをどう説明しようか迷った。

       
 新聞やテレビのメディアには、いわゆる選挙公報的に、各候補者の主張を平等、公平に扱い、有権者に対し、投票の判断材料を提供するという役割がある。テレビで言えば、放送法で公平な報道が明記されている。一方で、メディアには「報道・評論の自由」がある。メディアが考える選挙の焦点について有権者に詳しく伝え、読者や視聴者や考えてもらう役割だ。何を、どう書き、どう扱うか。それはメディアの自由裁量の範囲として認められている。メディアの選挙報道には大きくこの2つがある。

 学生から質問があった写真の扱いは、後者だ。「報道・評論の自由」の範疇の中で、「安倍政権を問う」という今回の選挙構図、自民という巨大政党に対し、中小政党が乱立している現状をわかりやすく伝えたもの。まったく平等に、すべての政党を同じ大きさで扱うのなら、何の面白みもない、平板な選挙公報、あるいは選挙管理委員会のチラシになってしまう。石川選挙区には5人の候補者がいる。新聞各紙、テレビを見たり読んでいると、ニュースの価値や読者、視聴者の関心を考慮し、自民、民主、共産の主要政党の候補3人と他の諸派・無所属の候補2人とは、記事の扱いで差をつけている。しかし、その場合でも候補者の経歴紹介や候補者アンケートについては、まったく平等に扱っている。諸派や無所属の候補者であってもできるだけ公平に、できるだけ不平等な扱いをしないように、気を配っている。

 そこで、学生が質問した紙面を見ると、確かに安倍氏の写真は他の党首の6倍の大きさだ。しかし、よく見ると背景とポーズが入っているので大きくなっている。顔のサイズは他の党首とは変わらない大きさなのだ。これだと他党から不公平ではないかとクレームが来たとしても「顔のサイズは同じ」と言い張れる。微妙にして、足がすくわれない写真の掲載の意図である。質問した学生も「う~ん。なるほど」とうなった。この件、公平か、不公平かの議論より、選挙報道の面白さ、妙味とした方がよさそうだ。

⇒16日(火)朝・金沢の天気   はれ

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