自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆続々々・いま伝えるべきこと、誰が伝えるのか

2018年04月19日 | ⇒メディア時評
   前回(18日)のブログを更新した後に、テレビ朝日の報道局長が記者会見を開きし、セクハラ発言を受けたとする女性記者は同社の社員であると発表した。けさの新聞各紙は報じている。女性記者は会社の上司に相談したが、消極的だったという。そこで、女性記者は週刊誌に音声データを提供したと経過説明をしたというのが経緯のようだ。財務事務次官が報道陣に向かって辞任を表明したのが18日午後7時ごろ、テレビ朝日側が記者会見を開いたのは19日午前0時すぎ。この5時間のタイムラグの意味は何だろう。

    一連の報道を注視しているが気になる点がある。音声データを公開している新潮社のニュースサイト「デイリー新潮」でその音声を聞くと事務次官が、女性記者の「森友問題」の取材し対し「胸触っていい」「予算が通ったら浮気するか」「抱きしめていい」などと話す言葉が聞くことができる。気になるのはバックのノイズだ。飲食店での会話だと想像されるが、鉄板の上でステーキを焼くようなカチャカチャという音や、カラオケのような音声も聞こえる。ここから推測すると、複数の店での会話を録音であることが分かる。つまり、公開されている音声は場所が異なるいくつかの会話を切り取って編集されているのだ。テレビ局の記者らしく「セクハラ発言の特集」をつくっていた。

    上記のことを積極的に評価するとすれば、女性記者は事務次官をセクハラ発言に耐えかねて、番組で訴えようと準備していた。そのため、これまでの発言の数々を別途編集していた。そう考えると、女性記者は報道番組で自ら出演して、記者として「#MeToo」、セクハラ告発を事実として訴えよう、と。その女性記者の志(こころざし)に冷や水を浴びせたのは、ほかならぬ職場の上司だった。報じられているテレビ朝日側は会見内容で「放送すると本人が特定され、二次被害がある。報道は難しい」と却下したと述べているが、もし本人が自ら番組に出演して「#MeToo」を訴えたいと提案していたにもかかわらず、却下したとするならば、むしろ問われるべきは報道機関としての対応だろう。

    その報道番組への企画が通らず、女性記者は取材し編集した素材(音声データ)を週刊誌側に提供した。おそらく無念の思いだったろうことは想像に難くない。記者が取材活動で得た素材をまったくの第三者に渡すということはそれ相当の覚悟があってのこと、つまり懲戒免職も覚悟の上ということだ。今回のセクハラ発言の一件、いろいろと考えさせられる。

⇒19日(木)朝・金沢の天気    はれ

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