自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆シンゾーとドナルドの「レアアース談義」

2019年05月26日 | ⇒トピック往来

         この写真を見て感じたことは、お笑いコンビのようだ、と。写真は総理官邸のツイッター(26日)で公開している。安倍総理と(右)とトランプ大統領(左)が千葉県のゴルフ場で自撮りした写真だ。とくに、安倍氏の顔がなんとなく、あの芸能人っぽく見える。アメリカのCNNニュース(日本版)は「外務省によれば、昼食は米国産の牛肉のダブルチーズバーガーだった。トランプ大統領は相撲観戦も行った。優勝した力士には、トロフィーの上部に翼を広げたワシをあしらった『トランプ杯』も贈呈した」と。米国産の牛肉のダブルチーズバーガーとあえて取材して伝えているところがアメリカのメディアらしい。

   ところで、アメリカと中国の貿易戦争が安全保障問題と絡まって複雑さを増している。今月20日、習近平国家主席は江西省にある長征記念公園を訪れ、「我々はかつての長征の出発点にやってきた。いままた新たな長い道のりが始まった」と述べたと報じられている。長征は国民党軍に敗れた中国共産党が拠点のあった江西省瑞金を離れ、2年かけて1万2500㌔を徒歩で移動しその後攻勢に転じる、苦難と栄光の歴史である。習氏は米中貿易戦争の現状を長征になぞらえたのだろう。「必ず勝つ」と。

   中国にはもう一つの思惑があった。習氏は江西省にあるレアアース(希土類元素)の関連企業を視察した。レアアースは、ハイブリッド車や電気自動車、風力発電機などの強力な磁石、発光ダイオード(LED)の蛍光材料といった多くの最先端技術に使われる。ハイテク技術を支えるレアアースはアメリカにとっても欠かせないが、中国からの輸入に依存している。ここで思い出す。2010年9月、尖閣諸島で海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件が起きて、中国が日本向けのレアアースの輸出を全面禁止にした経緯がある。今後、中国がレアアースを対米交渉のカードにする可能性は十分にある。

   あす27日、トランプ氏は即位した天皇陛下と外国首脳として初めて会見したあと、11回目となる日米首脳会談に臨むことになっている。ここでの日米首脳会談のタイムリーさがある。会談で数々の議題はあるが、優先課題としてトランプ氏はおそらく、中国が「レアアース輸出禁止」のカードを切ってきた場合、アメリカとしてどう対応すればよいのか、日中のレアアース問題を乗り越えた日本の経験知と対応策を教えてほしいと尋ねるだろう。そのとき、安倍氏は「脱中国化」を進言するに違いない。一つはレアアースの輸入先の分散化により、中国依存度を下げる。もう一つはアメリカ企業の研究開発力でレアアースの消費量そのものを下げる。その事例として、ホンダがレアアース不使用の磁石の開発に成功し、すでにハイブリッド車用駆動モーターとして実用化していること、などだ。

   1ヵ月後の「G20大阪サミット」(6月28、29日)では、習氏も日本を訪れる。トランプ氏とすれば、今後中国との貿易交渉で浮上するであろう「レアアース問題」に先手を打ちたいと考えるのは当然だろう。ひょっとして、米中の「レアアース問題」が日本の新たなビジネスチャンスとして浮上してくるかもしれない。冒頭のにっこり笑った2人の笑顔に次なる可能性が。

⇒26日(日)夜・金沢の天気     はれ    

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ★ 魂のジェラート | トップ | ★「かが」にドナルドを誘うシ... »

コメントを投稿

⇒トピック往来」カテゴリの最新記事