自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★"phase down" か "phase out"でもめたCOP26

2021年11月14日 | ⇒ニュース走査

   イギリスのグラスゴーで開催されていた国連の気候変動対策会議「COP26」が13日夜(日本時間14日朝)に閉幕となった。成果文書「グラスゴー気候協定」を採択した。時折、ニュースなどをこの会議をチェックしてきたが、ポイントはいくつかあった。BBCニュースWeb版の記事(13日付)=写真=などからまとめてみる。

   「It’s been a long two weeks of wrangling at COP26 in Glasgow to reach a deal.」で始まるBBCの記事は、「COP26は合意に至るまでに長い2週間を要した」と合意に至るまでの議論の白熱ぶりを表現している。そもそも会期は12日までの予定だったが1日延長となった。注目する数字が「1.5度」だった。世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力を追求すると成果文章で明記された。2015年のパリ協定で各国が合意したこの「1.5度目標」の実現には、世界全体の温室効果ガスの排出量を2030年までに2010年比で45%削減する必要がある。さらに、2050年にほぼゼロに達するまで排出量を削減し続けることになる。

   そこで議論の焦点となったのが石炭対策だ。世界の年間の二酸化炭素排出量の約4割が火力発電など石炭を燃やすことで発生している。気候変動対策に関する国連の合意文書で石炭対策が初めて明記されたことになる。ただ、その表現をめぐって土壇場で議論が交わされた。文書案では当初、石炭の使用を「phase out(段階的に廃止)」という表現になっていた。しかし、合意採択を協議する最後の全体会議でインド代表がこれに反対した。飢餓の削減に取り組まなくてはならない発展途上国にとって、石炭使用や化石燃料を段階的に廃止する約束するなどはできないと主張。インドの主張を中国も支持し、石炭産出国のオーストラリアも賛同した。議論の挙句に「phase down(段階的な削減)」という表現になった。

   BBCニュースはこの土壇場のドラマをこう述べている。議長国イギリスのアロク・シャーマCOP26議長は、「この展開について、謝ります」と全体会議を前に謝罪。「本当に申し訳ない」と述べた。ただし、合意全体を守るためには、不可欠な対応だったと説明すると、声を詰まらせて涙ぐんだ。この議長の様子に、各国代表は大きな拍手を送った。

   これも議長国イギリスの提案だった。2040年までにガソリン車の新車販売を停止し、全てをゼロエミッション(排出ゼロ)車とする提案に24ヵ国が合意したが、日本やアメリカ、中国などの主要国は提案には参加しなかった。電気自動車(EV)への急速な移行を掲げたイギリスの思惑は外れた。ただ、EV普及のため、充電インフラの整備や車体価格の引き下げなどを目指す取り組みには日米独などが参加を表明した(11日付・時事通信Web版)。一方、航空機の温室効果ガス排出量を削減する宣言には、日本は米英仏などと共に署名。炭素を排出しない航空燃料の開発・導入を目指す(同)。

   全体を通じて議長国イギリスの大胆で急進的な提案が目立った。18世紀半ばに石炭利用によるエネルギー革命を起こしたのはイギリスだった。次なるゼロエミッションの産業革命もイギリスが興すと意気込んでいるのかもしれない。

⇒14日(日)夜・金沢の天気      はれ


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