自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★畠山重篤氏の森への想い

2012年03月20日 | ⇒トピック往来

 「森は海の恋人」運動の提唱者で、気仙沼市在住の畠山重篤さんが、2011年の国際森林年を記念した国連森林フォーラム(UNFF)のフォレストヒーロー(世界で6人)に選ばれ、先月9日、ニューヨークの国連本部で表彰された。畠山さんは20年以上も前から広葉樹の植林を通じて森の環境を育て、川をきれいに保ち、カキ養殖の海を健康にしてきたことで知られる。

 震災後、畠山さんとは3回お話をさせていただくチャンスを得た。1回目は震災2ヵ月後の5月12日にJR東京駅でコーヒーを飲みながら近況を聞かせていただき、9月に開催するシンポジウムでの基調講演をお願いした。その時に、間伐もされないまま放置されている山林の木をどう復興に活用すればよいか、どう住宅材として活かすか、まずはカキ筏(いかだ)に木材を使いたいと、長く伸びたあごひげをなでながら語っておられた。2回目は9月2日、輪島市で開催したシンポジウム「地域再生人材大学サミットin能登」(主催:能登キャンパス構想推進協議会)で。シンポジウムが終わり、居酒屋で地域の人たちと畠山さんを囲んで話し込んだ。3回目はことし2月2日、仙台市でのシンポジウム「市民による東日本大震災からの復興~創造と連携~」(主催:三井物産)の交流会で。9月のシンポジウムのお礼の挨拶をした。すると畠山さんの方から、「内緒なんだけれど、今度ニューヨークに表彰式があるんだ」とうれしそうに話された。UNFFのフォレストヒーローのことが新聞記事になったのはその数日後だった。

 しかし、畠山さんの受賞の喜びは半ばだろう、と想像している。輪島での講演でこう述べていた。「戦後の拡大造林計画により雑木林が広がっていたのですが、エネルギー革命により薪炭林が役に立たなくなり、お金になるスギ、ヒノキを植えることになったのです。問題は木の種類ではなく、きちんと管理されているかどうかです。昨夕(9月1日)、飛行機に乗って上空から見ていたら、能登半島でもいかに真っ黒の山が多いかがよく分かります。つまり、貿易の自由化と為替などの問題があり、外材を買った方が安い時代になったため、せっかく植えたスギが伐期を迎えているのに、山に全然手が入らず、枝と枝が重なって日の光が差し込まない、下草が生えない、雨が降れば赤土が一気に流れる。つまり、海にとって良くないことばかりが川の流域にはあるということです」。受賞はしたものの、日本の山林では問題が山積している、と忸怩(じくじ)たる思いがあるのではと察している。5月12日にお会いしたとき、山林をもう一度何とかしたいと語っておられたことと重なる。

 「森は海の恋人運動」を続けてきた畠山さん。海の復興、山の復権、地域の再生、どれも重いテーマを訴えて全国各地で講演が続く。来たる4月3日、受賞を記念して畠山さんの「海と共に生きる~よみがえる海の生き物・復興へのメッセージ~」と題した講演が日経ホール(東京)である。(※写真は、2月2日、仙台市でのシンポジウムでパネリストとして意見を述べる畠山重篤氏)

⇒20日(祝)夜・金沢の天気  くもり


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