きょう(17日)金沢の友人たちと朝から「酒の秘境」をめぐる旅をした。秘境の意味はまだ一般に知られていない場所という意味ではある。まずは日本酒のルーツをめぐる旅から始めた。
最初に訪れたのは「雨の宮古墳群」(中能登町)。国指定史跡である雨の宮古墳群は、眉丈山(びじょうざん)の尾根筋につくられた古墳群で、地元では古くから「雨乞いの聖地」として知られた。尾根を切り開いて造られた古墳は前方後方墳(1号墳)と前方後円墳(2号墳)を中心に全部で36基が点在している。全長64㍍の1号墳は、4世紀から5世紀の築造とされ、古墳を覆う葺石(ふきいし)も当時ままの姿。まるでエジプトのピラミッドのようだ。山頂にあるこの古墳からは周囲の田んぼが見渡すことができる。この地域は能登半島のコメの産地でもある。1987年に古墳近くの遺跡から炭化した「おにぎりの化石」が出土し、2千年前の弥生時代のものと推定され、日本最古のおにぎりとして当時話題になった。
コメの恵みに感謝する神事も営まれてきた。同町にある天日陰比咩(あめひかげひめ)神社は稲作の実りに感謝する新嘗祭(にいなめさい、毎年12月5日)で同社が造った「どぶろく」をお供えし、お下がりとして氏子らに振る舞っている。今回、同神社を参拝してお神酒としてどぶろくをいただいた。蒸した酒米に麹(こうじ)、水を混ぜ、熟成するのを待つ。ろ過はしないため白く濁り、「濁り酒」とも呼ばれる。神社の説明によると、どぶろくを造る神社は全国で30社あり、石川県内では3社とも同町にある。コメ造りと酒造りが連綿と続く地域である。
次に能登半島をさらに北上して、穴水町に。この辺り一帯は赤土(酸性土壌)だ。ブドウ畑に適さないと言われてきたが、畑に穴水湾で養殖されるカキの殻を天日干しにしてブドウ畑に入れることで土壌が中和され、ミネラルが豊富な畑となり、良質なブドウの栽培に成功している。白ワインの「シャルドネ」、赤ワインの「ヤマソービニオン」は国内のワインコンクールでグランプリに輝いている。さっそく、予約してあったかき料理の店に入った。けさ水揚げしたカキを炭火で焼く。プリプリとしたカキの身はシャルドネにとても合う。
穴水湾ではカキのほかにボラが獲れる。同町の寿司屋では、ボラの卵巣を塩漬けにして陰干した珍味のカラスミが楽しめる。このカラスミは柔らかく、まるでチーズのような濃厚な風味なのである。これもシャルドネと合う。そのような話をしながら、焼きガキとシャルドネの「マリアージュ」を楽しみながら旅のクライマックは終了したのだった。
⇒17日(日)夜・金沢の天気 はれ
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