自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆メディアのツボ-03-

2006年07月30日 | ⇒メディア時評

 このところテレビメディアの事件が多い。それも傾向がある。NHKならば番組関係者による出張費などの横領、フジテレビは一時期「やらせ」が続いた。そしてTBSは政治家がらみの表現の問題である。それにしても今月21日(金)のTBSの報道番組「イブニング5」で問題となったシーンはよく理解できない。

   映像表現と政治家

 実際に「イブニング5」の問題シーン(当日午後6時13分ごろ)を見ると、池田裕行キャスターが「旧日本軍の731部隊の石井隊長の日記の中に、終戦直後、上陸するアメリカ軍を細菌兵器で攻撃しようと計画していた記述があったことが分かった」と前ふりをしてVTRがスタートする。カメラマンがドーリー撮影をしながら、小道具置き場から数㍍離れて電話取材をする記者がいるブースまでの数秒間を移動する途中で、床にある安倍晋三官房長官の写真パネルが映っている。1秒間も映ってはいないが、安倍氏とはっきり認識できる。

  何点か疑問がわく。第一、なぜ雑然とした道具置き場でドーリーショットで撮影しなければならなかったのか、という点だ。電話をする記者を強調したいのならばムーズインでもよかったのではないか。しかもこれはVTRの冒頭のシーンである。このドーリーのシーンには「終戦直後もゲリラ活動」という女性のナレーションが入る。ひょっとしてこのコメントをイメージさせるためあえて雑然とした雰囲気が必要だったのか…。

 それにいくら使用済みの写真パネルとはいえ、あれほど雑然と、うっかりすると踏みつけてしまいそうな場所に置くものなのだろうか。次期首相を狙う政治家の写真である。普通に考えれば、再度あるいは緊急にスタジオで利用すことも想定して、パネルに傷がつかないように保管しておくのが常識だろう。キー局だったら大道具小道具を整理し保管する担当者がいるはずだ。

  新聞報道によると、TBSの広報は「決して意図的なものではありませんでした」とコメントしている。が、TBSは03年11月の「サンデーモーニング」で、石原慎太郎東京都知事の「日韓併合の歴史を100%正当化するつもりはない」という発言を「100%正当化するつもりだ」と字幕を付けて放送。知事から告訴と損害賠償訴訟を起こされた。そして、ことし6月の「ニュース23」で、小泉総理の靖国神社参拝について「行くべきでないと強く感じているわけではない」と語ったヘンリー・ハイド米下院国際関係委員長(共和党)のコメントを、「行くべきではないと強く思っている」との日本語字幕を付けて放送。今月5日になって、番組中で釈明した。意図的ではなかったにしろ、何度か続いた後だけに「またか」と思ってしまうのだ。

  関連法として、「放送法」の第三条の二には、テレビが番組の編集に当たって守るべき点が強調されている。一・公安及び善良な風俗を害しないこと。二・政治的に公平であること。三・報道は事実をまげないですること。四・意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。今回は、三のポイントが焦点だろう。事実を曲げる意図があったかどうか。テレビ局側のお詫びのコメントだけで安倍氏が納得できるかどうか。

 ⇒30日(日)夜・金沢の天気  はれ


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ★メディアのツボ-02- | トップ | ★ブログ300回、印象に残る1枚 »

コメントを投稿

⇒メディア時評」カテゴリの最新記事