自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★懐かしい未来

2011年02月14日 | ⇒トピック往来
 先月1月27日、東京・経団連ホールで三井物産環境基金特別シンポジウム「~がんばれNPO!熱血地球人~」に参加した。その基調講演で、日本野鳥の会会長の柳生博氏が「森で暮らす 森に学ぶ」をテーマに話した。独特のテンポの語りが人をひきつけた。

  柳生氏が35年前に八ヶ岳に移り住んで森林再生を始めたきっかけや、いまの環境問題に関する人々の意識の高まりについて、生活者目線で語った。印象に残ったのが「確かな未来は、懐かしい風景の中にある」という言葉だった。人が生き物として正常な環境は「懐かしい風景」だ。田んぼの上を風が吹き抜けていく様子を見た時、あるいは雑木林を歩いた時、そんな時は懐かしい気持ちになる。超高層ビルが立ち並び、電子的な情報が行き交う都会の風景を懐かしい風景とは言わない。「懐かしい風景」こそ、我われの「確かな未来」と見据えて、自然環境を守っていこうという柳生氏のメッセージなのだ。

 つい先日2月12日、金沢で開催された自動車リサイクル企業「会宝産業」の講演会に誘いを受けて出席した。東北大学大学院環境科学研究科の石田秀輝教授が「遊べや遊べ、もっと遊べ!~あたらしいものつくりと暮らし方のかたち~」をテーマに話した。我慢する環境の取り組みではなく、心豊かに暮らしながら環境負荷をどう低減させるものづくりを進めたらよいかというのが話の趣旨。そのためには、大量生産、大量消費の「イギリス産業革命」的な発想と決別して、自然観を持った、ある意味で日本的な産業革命が必要だ、と。その中で、石田氏は「懐かしい未来」とたとえて、こんな話をした。ご近所の熊さんと八っつあん。熊さんが旅に出るので、「うちのソーラー発電の電気、どうぞ自由に使ってくださいな。その代わり、留守中は頼むよ」といった昔懐かしい日本的なセリフが、テクノロジーを伴って言えるような未来の姿をイメージさせる。

 我われが地球から受けた恩恵を次世代にどうやって引き継ぐのか、手渡すのか、その岐路に立っている。柳生氏の「確かな未来は、懐かしい風景の中にある」と、石田氏の「懐かしい未来」の表現は多少違うものの、我われが共有する自然観や人間観をベースにした「未来への遺産」こそ確かなのであると強調している。今の我われが想像もできなような未来観というのは、映画『バイオハザード』のようでなんだか危なかしい。良き光景は懐かしい。それは未来も変わってはならない。そんなメッセージを二人から頂いた。

⇒14日(月)朝・金沢の天気  くもり

 

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