自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「山一つ」「海二つ」曳山の醍醐味-下

2018年08月19日 | ⇒キャンパス見聞

   学生たちが祭りで担う役割はとてもシステマチックに構成されている。曳山の運行で方向転換など担う「舵棒取り」に2基の曳山にそれぞれ男子学生10人が配置された。祭りの舞台となる黒島の街並みは重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)に選定されていて、しかも道幅は狭いところで4㍍ほどである。ここを曳山が巡行するので道路沿いの家の屋根部分に接触しないよう舵取りが必要となる。そこに学生たちの活躍の場がある。巡行する街路は山と海それぞれに平行に走っている。地元のベテランの舵取り担当が「山一つ」と声を上げると、学生たちが一斉に山側に舵棒を1回押す。すると、曳山の車輪は海側に10度ほど舵を切ることができる=写真=。「海二つ」と声が上がると、海側に2回押して山側に20度ほど舵を切る。この作業を繰り返しながら、曳山は曲線道路を器用に巡行する。

     祭礼の人出不足、その地域課題にどう向き合うか

   女子学生は行列の先頭で枠旗を持ちや奴振りの扇ぎ手を担当する。地域の子どもたちが扮する奴振り行列では、子どもたちに歌舞伎役者のような化粧が施される。ところが顔に汗が出ると化粧が崩れてくるためにウチワで顔を扇ぐ。獅子舞係の男子学生は地元の若手といっしょになって路上でパフォーマンスを演じる。とくに、「お立ち」と呼ぶ行列の出発を神輿の担ぎ手に催促したりする。

   祭りで学生たちがそれぞれの役割を演じると、活き活きとした表情になる。この意味で、学生たちが地域の伝統文化をフィールドで学ぶ、教育的な体験プログラムにもなっている。地域にとっても、今年5月に日本遺産「北前船寄港地・船主集落」に追加認定されてから初めての天領祭だったので、妙に街全体が盛り上がっていて、参加者、見学者ともに例年に比べ多いように思えた。

   能登だけではなく、日本の多くの過疎地で祭礼の人手不足現象が起きていることは想像に難くない。一方で祭りが大好きな都会人や、日本で文化体験をしたいインバウンド観光客は大勢いるはずだ。人手不足の祭礼と、参加したい人たちとのマッチングをどう図るか、まさに課題解決型のプランが求められていると実感している。

⇒19日(日)午後・金沢の天気    はれ

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