世界に向かって大声で言えない3つのことがあると個人的に思っている。一つは、自由貿易を目指すべき日本が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をためらっていること、日米安保条約のもとで巣ごもり状態の日本の防衛のこと、そして日本の選挙ではインターネットの利用が禁止されていること、である。最初と2つめについては世論が割れる。ただ、3つめは有権者なら誰しも不可解に思っているだろう。なぜなら、有権者の間で是非をめぐる論争は聞いたことがない。政治家が決断できずに先送りしているだけなのだ。
世界から嘲笑が聞こえる。「ネットを政治や選挙に活用できなくて、何がICT(情報通信技術)先進国だ、笑わせるな」と。アメリカでも韓国でも、「YouTube選挙」と言われるくらいに選挙でネット動画が盛んに利用されている。一方、日本の選挙で唯一の動画ツールである政見放送などは視聴率数%の低レベルだ。税金を無駄遣いするなと言いたくなる。
ネット利用が公職選挙法で違法という意味合いは実に消極的な理由だ。現行法では、選挙期間中に、法定ビラなどを除きチラシやポスターなどの図画の頒布が制限されているからだ。公選法第142条(文書図画の頒布)では、衆院選(小選挙区)で使える選挙ツールは候補者1人につき、通常葉書35000枚と選管に届け出た2種類以内のビラ7万枚と決まっている。これ以外は選挙期間中使えないのだ。ネットが出始めた平成8年(1996)に総務省は「パソコン画面上の文字や写真は文書図画に該当」との見解を出し、今でも選挙期間中にホームページやブログを更新することや、電子メールを送信することを「不特定多数への文書図画の頒布」とみなして禁止している。選管などがチェックしている。
ネットの選挙利用に政治家が消極的な理由として、政党や候補者になりすましたメールが出回ったり、ネットで政党や候補者の誹謗中傷が想定されるからだ。また、他国の国益に反する公約を掲げた候補が国外からのサーバ攻撃にさらされることを危惧する向きもある。
とはいえ、ネット選挙は時代の流れであり、ことし7月の参院選前には解禁するよう与野党でガイドラインがまとめられたが、鳩山退陣など政局で混乱があり、公選法改正は先送りとなった。現在の公選法は1950年に制定されたもの。この60年も前の縛りで、当時はテレビやインターネットを使用した選挙活動は視野に入っていなかったが、21世紀に入ってもネットの解禁どころか、「政見放送」(第150条)によって、候補者はテレビ広告すら流せないでいる。
さる11月28日投開票の金沢市長選の期間中に、初当選を果たした山野之義市長の支持者がツイッターで投票を呼びかけたとして、市選管がこの支持者に削除を求めていたとの記事が14日付の新聞各紙で掲載された。山野氏本人は告示後、ブログ、ツイッターとも更新していない。石川県警は警視庁と相談し、「(ネット利用を解禁する)公選法改正の動きがある微妙な時期なので立件は難しい」と警告などの措置は見送りと判断した。
アメリカは1996年の大統領選挙が実質的な「ネット解禁」元年だった。アメリカに遅れること14年。さらに日本でのインターネットの利用者数が9408万人、人口普及率が78.0%(総務省「2009年通信利用動向調査」)に達しても、まだ法が現実に追いついていない。問題にすべきはこの点ではないか。
⇒14日(火)夜・金沢の天気 くもり
世界から嘲笑が聞こえる。「ネットを政治や選挙に活用できなくて、何がICT(情報通信技術)先進国だ、笑わせるな」と。アメリカでも韓国でも、「YouTube選挙」と言われるくらいに選挙でネット動画が盛んに利用されている。一方、日本の選挙で唯一の動画ツールである政見放送などは視聴率数%の低レベルだ。税金を無駄遣いするなと言いたくなる。
ネット利用が公職選挙法で違法という意味合いは実に消極的な理由だ。現行法では、選挙期間中に、法定ビラなどを除きチラシやポスターなどの図画の頒布が制限されているからだ。公選法第142条(文書図画の頒布)では、衆院選(小選挙区)で使える選挙ツールは候補者1人につき、通常葉書35000枚と選管に届け出た2種類以内のビラ7万枚と決まっている。これ以外は選挙期間中使えないのだ。ネットが出始めた平成8年(1996)に総務省は「パソコン画面上の文字や写真は文書図画に該当」との見解を出し、今でも選挙期間中にホームページやブログを更新することや、電子メールを送信することを「不特定多数への文書図画の頒布」とみなして禁止している。選管などがチェックしている。
ネットの選挙利用に政治家が消極的な理由として、政党や候補者になりすましたメールが出回ったり、ネットで政党や候補者の誹謗中傷が想定されるからだ。また、他国の国益に反する公約を掲げた候補が国外からのサーバ攻撃にさらされることを危惧する向きもある。
とはいえ、ネット選挙は時代の流れであり、ことし7月の参院選前には解禁するよう与野党でガイドラインがまとめられたが、鳩山退陣など政局で混乱があり、公選法改正は先送りとなった。現在の公選法は1950年に制定されたもの。この60年も前の縛りで、当時はテレビやインターネットを使用した選挙活動は視野に入っていなかったが、21世紀に入ってもネットの解禁どころか、「政見放送」(第150条)によって、候補者はテレビ広告すら流せないでいる。
さる11月28日投開票の金沢市長選の期間中に、初当選を果たした山野之義市長の支持者がツイッターで投票を呼びかけたとして、市選管がこの支持者に削除を求めていたとの記事が14日付の新聞各紙で掲載された。山野氏本人は告示後、ブログ、ツイッターとも更新していない。石川県警は警視庁と相談し、「(ネット利用を解禁する)公選法改正の動きがある微妙な時期なので立件は難しい」と警告などの措置は見送りと判断した。
アメリカは1996年の大統領選挙が実質的な「ネット解禁」元年だった。アメリカに遅れること14年。さらに日本でのインターネットの利用者数が9408万人、人口普及率が78.0%(総務省「2009年通信利用動向調査」)に達しても、まだ法が現実に追いついていない。問題にすべきはこの点ではないか。
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