自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆不逮捕特権を持つハクビシン

2006年06月02日 | ⇒キャンパス見聞

  「またイチゴをやられた」。市民ボランティアの残念無念という声が今朝も聞こえた。金沢大学の中の農園でのこと。ボランティアはメロンやイチゴのほか野菜を栽培している。そのイチゴがハクビシンに先取りされたのだ。ボランティア氏によると、ことし人間が食べたのはイチゴ10個ほどで、ハクビシンには200個くらいは食べられている。「ちょっとでも赤くなっているのを上手に見つけて食べている。青いのには手と付けていない。敵ながらあっぱれですわ」と賛辞も。

  金沢大学の森には確認されているだけで2匹のハクビシンがいる。ハクビシンはジャコウネコ科の動物。この雑食性がたたって、里に出てきては果樹園などを食い荒らす。「鳥獣保護及び狩猟に関する法律」では狩猟獣にも指定されている。「白鼻芯」の当て字がある通り、額から鼻にかけて白い線がある。大きく目立つ動物でありながら、国内に生息しているという最初の確実な報告は1945年の静岡県におけるものが最初で、それ以前の古文書での記載や化石の記録もない。北海道の奥尻島には昔から生息しているとの報告もあり、日本の固有種なのか外来種なのかはっきりしてない。

  話は戻る。イチゴ畑が荒らされ、畑の畝(うね)にネットがはられた。しかし、「上手に破られた」。では捕獲して、ほかの場所に移すことはできないのか。実はできない。ここのハクビシンは「不逮捕特権」を持っているのだ。国会議員の不逮捕特権(憲法50条)でもあるまいし、「なぜ」と思われるだろう。種明かしをしよう。

 大学の森は「学術の森」でもある。そこでハクビシンに発信機をつけてその行動を調査している修士課程の院生がいる。朝、昼、夜、そして雨の日も寒空の中でもラジオテレメトリーの装置を持ちながら追跡調査をしている院生の姿はさながら犯人を尾行している刑事のようだ。つまりハクビシンはマスターの論文がかかった研究対象なのだ。

 ボランティア諸氏もそこは十分に理解しているので、「ほかの場所に移す」などという野暮なことは言わない。ただ、農園をエサ場にしておくわけにはいかない。収穫の喜びを得るためには防御はしなけらばならない。そこで知恵の出し合いがある。後ほど妙案が出たら紹介する。

 ⇒2日(金)午後・金沢の天気   はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする