自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★バス代ランキング上位の理由

2006年06月25日 | ⇒メディア時評

  ニュースの面白さというのは記事の長さだけでは測れない。そのニュースのバックグラウンドを読み手が理解できていれば、長短にかかわらず、「なるほど」とうなずけるものだ。書き手はそこまで意識して書いているのか、と逆に推測したりする。

   きょう25日の朝日新聞第2石川面の記事。「なんでもランキング」で1世帯当たりの年間支出額の統計(県庁所在地と政令指定都市など)から、タクシー代とバス代のランキングを上げていて、そのトップ(1位)がともに長崎市であるという解説記事を読んだ。で、そのランキングトップの理由は、坂道が多い街の地形による。長崎市はことし3月にプライベートで旅行をしたので、実感としてうなずける。坂道の街なので自転車の購入額は、長崎市が下から2番目という裏づけ記事も好感が持てる。

   少々不満に思ったのはバス代の支出額である。ランキングでは、1位は前出の長崎市なのだが、金沢市も9位にランキングされている。タクシー代とバス代は地形という事情から相関関係にあり、上位のランキングはほとんどだぶると思ったらそうでもない。上位10でだぶりがあるのは長崎を除いて2都市(札幌、神戸)だけである。バス代では福島、奈良、徳島などが金沢と並んで上位にランキングしてくる。ところが記事にはその言及がない。では、なぜなのだろうか。これは当地に住んでいる人は実感として理解できるかもしれない。バス運賃が高いのである。もっと有り体に言えば、地域交通の独占度が高いエリアだ。

   金沢市を例にとれば、民間のほぼ1社独占。JRバスも走ってはいるが特定路線のみ。だから高い。最近では100円で乗ることができる区間を設けたりして、その批判をかわす努力はしている。金沢大学のバス停を利用する特定区間でも「100円バス」を試験的に実施しているが、去年5月の同区間の利用は9420人だったのが、100円バスを実施したことし5月は26245人に伸びた。ざっと2.8倍である。バスの運賃が下がれば、利用者も増えるという証左である。通勤でバスを利用している身なので目に止まった記事かもしれない。

   もう一つ。そのランキングの下の記事。福井県が1口5万円(年利1.34%、1人当たり100万円限度)の新幹線債を発行した。すると10億円分が3時間半で売り切れた、というニュース。新幹線債は新幹線福井駅の建設に充てる。短時間で売り切れた理由の分析記事がないので、ここからは私見である。共働き率が高く年間世帯収入は全国一、失業率の低さも全国一、世帯当たりの貯蓄残高も全国一という福井県は経済的な充実度が高い。預貯金の額が多ければ、それだけ金利には敏感になる。現在の金利が低すぎる。それに比べ、県の公募債の金利1.34%は魅力である。この思惑がどっと「3時間半」の間に流れた。これは郷土愛のバロメーターなどではない。

 ⇒25日(日)夜・金沢の天気  くもり

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