自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★マエストロの死、その後

2006年06月16日 | ⇒トピック往来

  オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の音楽監督だった岩城宏之さんが13日に急逝した。地元金沢では後継者問題などいろいろと話題が出始めている。そして追悼の番組やコンサート、追悼行事が具体化してきた。マエストロの死のその後を…。   

  地元テレビ局の北陸朝日放送はきょう16日(金)午前10時半から、岩城さんがベートーベンの交響曲1番から9番を演奏し終えるまでを描いたドキュメンタリー番組「人生振るマラソン」(55分)を再放送した。2004年12月31日から翌1月1日までの9時間40分にも及ぶ演奏。指揮者控え室に固定カメラを置いて、ベートーベンの交響曲の一曲一曲ごとの指揮者の息遣いを撮り続けた。控え室で休憩中、苦しげでうなだれるマエストロ岩城が、「時間ですよ」のステージマネージャーのひと声で気を取り直してまたステージへと向かう。プロの宿命と気迫、そして使命感をタクトのひと振りひと振りに刻んでいく姿がリアルに描かれる。見ていて、なぜそこまで人生を追い詰めるのかと物哀しくもあり、また「ベートーベンを指揮してステージで倒れるなら本望」と言い切る姿はまさに悟りの人であり神々しくもある。その生き方をどう受け止めるかは、視聴する側の人生観によるだろう。

  6月18日(日)午後11時10分からNHK総合テレビでは05年12月31日のベートーベン演奏を追ったドキュメンタリー番組「岩城宏之ベートーヴェンとともにゆかん」が予告されている。

  追悼コンサートは7月16日(日)午後3時から石川県立音楽堂で。指揮者は岩城さんと親交があった外山雄三、OEK初代常任指揮者の天沼裕子。武満徹、モーツアルトなどの曲が予定されている。その2日後の7月18日(火)午後2時から東京・サントリーホールの小ホールで「岩城宏之お別れの会」がある。岩城さんが拠点としていたNHK交響楽団、OEK、東京コンサーツ、メイ・コーポレーション(三枝成彰事務所)の4者が実行委員会をつくり追悼の会を催す。

  今月26日(月)午後7時から朝日新聞金沢総局の4階ホールで講演が開かれる。講師はOEKゼネラルマネジャーの山田正幸さん(63)88年の創設当初からのメンバーで、岩城さんが「ジミー」とニックネームで呼んで信頼を置いた人だ。舞台裏から見た岩城さんの知られざるエピソードが語られるかもしれない。

  ところで、岩城さんの後継について、岩城さんがだれかれと具体名をあげたという話を聞いたことがない。むしろ、周囲には「そろそろ考えて置けよ」と笑いながら言っていた。人事に頓着せず、だった。  

 ⇒16日(金)夜・金沢の天気  くもり

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