自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★ペンギンのドミノ倒し

2006年05月25日 | ⇒トピック往来

  この話の真贋をあなたはどう思うか。ある時、南極の皇帝ペンギンのルッカリー(集団繁殖地)の上空を低空飛行のヘリコプターが飛んだ。一羽のペンギンが空を見上げ、頭上をヘリが通り過ぎるとそのまま後ろにひっくり返った。ペンギンは集団でいたので、次々とドミノ倒しのような状態となり大混乱に陥った。その光景を目撃したイギリス軍のヘリの操縦士は自責の念にかられ、「ペンギンのルッカリーの上空を飛んではいけない」と仲間に話したという。この話が世界に広まった。

   南極では、地上に敵なしのペンギンだが、空には卵やヒナを狙うトウゾクカモメがいるので、上空を常に警戒している。でも本当にひっくり返るだろうか。確かに、写真のように不安定な流氷の上では、サルも木から落ちるのたとえがあるように、ペンギンも氷上でバランスを崩して転ぶかもしれないと思ったりもした。

   この話が日本のマスコミの話題にも上るようになったころ、南極に調査団が派遣された。2000年12月のことである。以下は本当の話だ。イギリス極地研究所のリチャード・ストーン博士らがサウスジョージア島の皇帝ペンギンのルッカリーで、イギリス軍のヘリが上空230-1768㍍の高度で数回飛行を繰り返し、ペンギンの反応を観察した。すると抱卵していないペンギンはヘリが近づくと逃げ出した。抱卵しているペンギンは逃げなかったが、縄張り行動(突っつきあいや羽でたたく行動)が見られ、明らかに動揺している様子が見て取れた。しかし、ひっくり返るペンギンはいなかった。軍から出たうわさを軍が否定したかたちだ。以上の調査結果は01年8月、アムステルダムで開かれた南極研究科学委員会のシンポジウムで発表された。(※国立極地研究所ホームページより一部抜粋)

  ところで、最後に疑問が残る。なぜ唐突に「自在コラム」の筆者が専門でもないペンギンの話をしたのか。実は、6月17日(土)13時から、金沢大学では小学高学年と中学生を対象に「南極教室」を開く。私はこのイベントを担当するワーキンググループの一員なのだ。この話は仲間と雑談をしている中で出てきた。南極教室では実際に南極の昭和基地と金沢大学をテレビ電話で結んで、金沢大出身の隊員と対話する。こんな楽しい話がいくつも聞くことができるかもしれない。(写真提供は第47次南極越冬隊、尾崎光紀隊員=金沢大学自然科学研究科助手)

 ⇒25日(木)朝・金沢の天気   はれ

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