自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆続・韓国経済のキナ臭さ

2006年05月20日 | ⇒メディア時評

  18日付「韓国経済のキナ臭さ」のタイトルで韓国経済についての朝鮮日報と中央日報の記事を紹介した。不動産バブルが弾けそうだが、金利の引き上げなどでバブルを沈静化させようとすると今度は、カード破産者が一気に増大し、ひいては金融破綻へと連鎖するのではないかというのがその主旨だった。偶然にも20日付の中央日報インターネット版(日本語)で、ノ・ムヒョン大統領が19日、「投機者によって全国不動産価格が高騰し、その結果、経済が深刻な状況になるというのに、政府がこれを放置できるはずがない」と述べ、大統領が不動産バブル崩壊の可能性について憂慮していると伝えている。

  これまで述べてきたのは、突き詰めれば金利の話だが、実は産業構造そのものが問題点を抱えている。キーワードは中国である。以下は20日付の朝鮮日報の記事だ。訪韓中のシンガポールのリー・クワンユー前首相が講演し、「20年後には中国が、現在韓国が行っているすべての産業を代替するようになる」「今は韓国の企業が中国に進出しているが、10ー20年後には中国が韓国に投資する時代が訪れる」とし、「中国がついてこられないような完全に新しい産業、新しい製品を絶えず開発しなければならない」との提言した。

  韓国が世界市場でシェア1位を占める品目は2003年には63品目だったが、04年には59品目に縮小した。逆に中国は760品目から833品目に拡大した。テレビや洗濯機のような家電製品を含む中級技術の分野では、すでに中国製にシェアを奪われている。しかも、移動通信、ディスプレー、2次電池などの先端分野でも2010年には韓国と中国の間の技術格差が1年分ほどに狭まる(朝鮮日報)、という。

  問題は技術だけではない。中国では生産過剰となっており、国内であふれかえった製品が世界市場へダンピングして売られ、韓国のシェアをさらに奪っている。たとえば、中国全体でおよそ3億㌧程の生産実績があるものの、その40%にあたる1億2000万㌧が過剰となっている。これが韓国製などとバッティングし、世界市場における価格の下落を招き、各国の企業収益を圧迫している。韓国では為替市場でウォン高が続き、輸出産業をさらに疲弊させている。

  こうした経済の負のスパイラルがジワリと大統領の支持率を下げている。03年4月で59.6%(韓国ギャロップ)あった支持率が上がり下がりを繰り返して最近では37.5%(東亜日報)。日本の小泉内閣の支持率は50%(ことし4月・朝日新聞)である。国が違うので比較にはならないが、直接選挙で選ばれた大統領の支持率が37.5%というのは、実感としてかなり低いのではないか。

  このところノ・ムヒョン大統領は「靖国、独島(竹島)」と外交面で声高に叫んでいる。しかしこれは、ナショナリズムを刺激して支持を訴え、内政上の経済失政(不動バブル、カード破産者の増大、輸出企業の疲弊など)を覆い隠そうとしているようにも見える。しかし、経済破綻を想定していまから手を打たないと、「日本の失われた10年」どころではなくなる。韓国の新聞記事を読みながら思ったことを2回に分けて記した。

 ⇒20日(土)午後・金沢の天気  くもり  

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