ヨーロッパの中世都市では城を中心に都市を囲む城壁が築かれた。ことし1月に訪れたイタリアのフィレンツェでも石垣で構築された城壁が残っていて、防備ということがいかに都市設計の要(かなめ)であったのか理解できた。多くの場合、川の向こう側に城壁が設けられ、その城壁が破られた場合、今度は橋を落として堀にした。城壁と川の二重の防備を想定したのだ。
先月15日に金沢市の山側環状道路が開通した。寺町台、小立野台という起伏にトンネルを貫き、信号を少なくした。このため、この2つの台地をアップダウンしながら車で走行したこれまでに比べ15分ほど時間が短縮したというのが大方の評価となっている。この道路は金沢市をぐるりと囲む50㌔に及ぶ外環状道路の一部で、今回は山側が開通し、海側は工事中だ。
この道路を車で走りながら、思ったことは、外側環状道路は金沢という「都市の城壁」を描いているかのようである。これまで、金沢の都市計画が市内の中心部がメインに構成され、道路の幅何㍍などといったことが中心だった。が、この道路が完成するにつれて金沢という都市の輪郭がある意味ではっきりしてきたというのが実感だ。これは今後の都市計画を策定する上で、キーポイントとなる。道路計画や民間の宅地開発プランが外側がはっきりしたことで策定あるいはセールスがしやすくなったのではないか。
先に述べたフィレンツェも城壁の内側がすこぶる整備された都市なのである。人が濃密に交流する場ができ、そこへのアクセスが容易になることは都市機能としては重要だ。これによって、都市で熟成される文化もある。フィレンツェの場合、ミケンランジェロやラファエロ、レオナルド・ダ・ビンチなどイタリア・ルネサンスの巨匠を生んだ。現在でもたかだか37万人ぐらいの都市で、である。
金沢の外側環状で面白いのは、偶然かもしれないが、金沢大学、金沢星稜大学、金沢工業大学、北陸科学技術先端大学院大学(JAIST)など大学のロケーションが外側環状道路でつながっていることだ。その意味で、道路を介してさらにお互いが近く親しくなればと思っている。それにして面白い道路ができたものだ。あとは地元の人がこの「都市の輪郭」という道路をいかに活用するか、であろう。
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