ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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好感がもてる取材!  釜山からの対馬ツアー同行記(「文藝春秋」1月号)を読む

2010-12-13 19:08:15 | 韓国・朝鮮と日本の間のいろいろ
 私ヌルボ、今年のゴールデンウィークに佐賀旅行に行って、さて次なる韓国オタクの向かうべきところは、と思い浮かんだのが対馬です。8月に行こうと本気で計画を練り始めましたが、あいにく空路も博多からの船便も早くから予約が満杯状態で結局断念。気をとりなおして、来年春くらいでも・・・、ということを同じサークル仲間の<物識り>S氏に話したら、「韓国側から対馬に行くのもおもしろそうだよ」と、ちょっとフツーじゃないけどナ~ルホド、という発想。

 こんな話をしてから何日も経ずして、「文藝春秋」の新刊(1月号)を見ると、そのちょっとフツーじゃない発想そのまんまの取材記事が載っているではないですか!
 葉上太郎(地方自治ジャーナリスト)という人の「ツアー同行記 対馬を呑み込む韓国人観光客」というのがその記事。

 私ヌルボ、葉上太郎さんがどんな人か今まで知らず、タイトルだけ見て、もしかしたら近年よくある「対馬が韓国人に乗っ取られる」とか、「野放図な(?)韓国人観光客に対馬では大迷惑」といった内容かな、とチラッと思いましたが、読んでみると先入観をもたず多角的に取材をしていて好感がもてる記事で、またいろいろ知識も得ることができました。

 釜山の小さな旅行社に2泊3日のツアーを申し込んで、韓国人観光客に同行するという取材姿勢が買えますね。
 対馬ツアーは①釣り ②登山 ③歴史・自然 の3コースに大別され、各々ほぼ同数だといいます。登山目当てが多いのはやっぱり韓国人らしいですね。
 葉上さんは歴史・自然コースに参加。大卒後1年ワーホリで東京に行っただけという若い女性ガイドの説明も具体的に書かれています。豆酘崎(つつざき)、そして鮎もどし自然公園は絶景らしいですが、「私、ここが大好きなんです。でも、日本人はいつもいません」とガイドさん・・・。
 史跡・景勝の地を次々にバスで巡ってガイドの説明を聞くという、昔の修学旅行のようなor研修視察のようなメニューが対馬ツアーの定番のようです。
 ヌルボは対馬の史跡等についてはあまり学習していないのですが、いろいろあるんですね。記事によると参加者の心を引きつけたのが対馬藩主の末裔・宗武志(そう・たけゆき)と李朝最後の王女・徳恵姫の結婚記念碑。1931年に政略結婚させられましたが、徳恵姫は病気にかかり55年に離婚します。記事には記されていませんが、実は今年に入って韓国で彼女の生涯を物語った「徳恵翁主(덕혜옹주.トッケオンジュ)」という本がベストセラーにもなってとくに注目されているんですね。
※「徳恵翁主」の本については<amihsimの歳時記><やさしい風と白い花>等のブログに紹介されていました。

 葉上さんは、90歳という対馬の郷土史家の永留久恵さんにも取材しています。儒者・雨森芳州の精神を受け継ごうという「芳州会」の名誉会長だそうです。永留さんによれば、戦争のない良い時代だった江戸時代から明治になると対馬は国防の観点から開発は遅らされ、「対馬が文明国になったのは大正時代になったから」だとか。
 戦争の激化とともに再び閉ざされてゆく対馬は長崎県にはお荷物で、1938年には県議会で「対馬を朝鮮総督府の管下に移管してはどうか」と演説もあったといいます。また戦後になると対馬では福岡県への転県運動が起きますが、これに対して長崎県が一転して反対に回って対馬を引き止めたのは近海の漁場が目当てだったらしいです。このあたりの歴史はなかなか興味深いところです。
 続いて、70年代以降、韓国に開かれた対馬のプランニングにあたった厳原市の元助役・橘厚志さんの話。経済の前にまず文化交流、と朝鮮通信使を思いつき、対馬アリラン祭が始まったのが1980年。
 以後さまざまな交流が広がっていきます。
 ツアーの人気スポットに9つもの碑があるんですね。その中に、義兵を指揮して捕えられ対馬で亡くなった儒者・崔益鉉の殉国碑があるとは知りませんでした。
ウィキの説明では崔益鉉は断食死したように書かれていますが、本当の死因は「高齢と病気」だそうです。

※県立対馬高校では韓国の言葉や文化を学ぶコースが解説され、卒業生が釜山の大学に進学するようになった、とも記されています。そこでヌルボが思い出したのは10月24日の「毎日新聞」の記事。「日韓交流作文コンクール」で最優秀賞を受賞した対馬高校の田中花保里さんは韓国語が勉強したくて親元を離れてこの高校に入ったそうですよ。詳細は「聯合通信」のサイトで。

 葉上さんは記事の最後に、今「対馬が、安価と自然と歴史だけで勝負するのは難しい」という韓国の旅行代理店の部長の見方を紹介しつつ、「自活できない離島とは、日本そのもののことではあるまいか」等々思いをめぐらしています。

 ヌルボとしては、対馬の過去から現在、社会と観光、韓国人からの視点等々、いろいろとためになった記事でした。
 あえていえば、<韓国人の土地買占め>だとか<韓国人観光客のマナー>とかの事実だか風評だかについてもふれてほしかったですが・・・。
 広く韓国について興味のある方はぜひご一読を。

※葉上さんの取材を受けた対馬の方(元助役さんかな?)のブログ<島暮らし満喫‥国境の島・対馬 Tsushima island>に、この記事の紹介記事がありました。

★「文藝春秋」のこの号真ん中あたりの写真ページに「通が教える韓国・ソウル散歩」という記事があります。北村&通義洞や法頂ゆかりの吉祥寺等のカルチャースポットや、韓食の<名店>を数点紹介しています。

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3 コメント

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ありがとうございます (橘 厚志)
2011-02-16 18:33:37
文春1月号の記事の紹介ありがとうございます。
日韓交流史を中心に、新世紀の日韓親善交流を目指してブログを書いています。
また、遊びに来てください~。
返信する
これはこれは・・・ (ヌルボ)
2011-02-16 19:51:28
橘さんのブログを紹介したのに、私の方からお知らせもしないままで失礼しました。

単に朝鮮半島への中継地ということではなく、対馬という島自体に興味をもっています。
今後もブログを参考にさせていただきます。
よろしく・・・。
返信する
徳恵翁主の涙の花 (namidanohana)
2012-02-04 22:25:08
徳恵翁主の涙の花という歌があります。ここのブログで紹介をいたします。日本のどのブログに紹介されました。アドレスをお知らせいたします。
http://papercascade206.blog.so-net.ne.jp/2012-01-24
そして、ミュージックビデオがあるアドレスをお知らせいたします。
http://www.youtube.com/watch?v=KAyC-GSCHT0
感動的です。
ありがとうございます。
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