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韓国内の映画の興行成績 [10月1日(金)~10月3日(日)]と人気順位 ▶ドキュメンタリー「TADA: 大韓民国 スタートアップの肖像」で知る世界レベルの大きな社会の変化←現在進行中

2021-10-08 13:53:11 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回は各ランキングに入っている作品の出入りが少なく、当方の作業は「こりゃあラクだな~。久しぶりに火曜のうちに終わるゾ」と思ったのですが、そうは問屋がおろしてくれませんでした。[独立・芸術映画]の興行成績第3位の「TADA: 大韓民国 スタートアップの肖像」という、一目見て全然意味もわからないタイトルの韓国ドキュメンタリー関係の記事を読み、内容を理解してあれこれ考えたりしているうちに丸2日以上費やしてしまいました。
 まず、<TADA>とは2018年の起業以来爆発的に成長してきたベンチャー企業です。この<ベンチャー企業>という言葉は和製英語で、本来の英語では副題にもある<スタートアップ(Startups)>なんですね。ポスター(右画像)を見ると、「三ト二ト」という字がありますが、三と二に縦棒を入れると「타다」(TADA)というハングルになります。「乗る」という意味があります。
 この<TADA>という企業は「韓国のUberと呼ばれる」とのことで・・・、と言うとコロナ禍でよく見かけるようになった<Uber Eats>のようなフードの宅配かと思う人も多いのではと思いますが、そうではなくてモビリティサービス・プラットフォーム[MSPF]関係。これまた耳慣れない言葉ですが、車もスマホアプリ等を活用して関連するサービスを構築していこうというもので、さすがにトヨタなんぞは→このような構想をすでに公表してますね。って当然か。(しかしマイカーで帰宅して車庫に入れる前にスマホアプリで部屋のエアコンの電源を入れるなんてのが暮らしの向上になるとも思えんのですが・・・。) Uberの場合は、2009年にアメリカで誕生して以来主事業は配車サービスで、現在世界63ヵ国450都市で事業展開されています。(→コチラ参照。) ←この記事にあるように、Uberは客からスマホアプリで連絡を受けるとそれを(タクシー免許のない)一般人の登録者に伝えて客の送迎をする仕組みで、料金は利用者が事前に登録したカードで決済されます。このような方式で拡大してきたというわけですが、どうもこれがUberの世界標準のようです。
 しかし、日本人の場合は「それって白タクじゃないの? 違法じゃん!」と思う人が多いのではないでしょうか? Uber側もそれは承知で、日本ではタクシー会社と契約し、(とりあえずは)法律に触れない形で今のところ東京・京都等9都市で運営しているとのことです。※詳しくは<Uber Taxi>の説明記事(→コチラ)を見てみてください。
 そのUberの<世界標準>に沿った方式でスタートしたのが「TADA」で、起業後急成長したのですが、当然のようにタクシー業界から「違法タクシーだ!」との声が上がり、裁判沙汰になり国会でも論議・・・となるわけですが、続きは記事の最後の方を御覧ください。
 映画から離れて関連記事を探すと<滴滴出行(ディディチューシン)>という多様な配車サービスを主事業としている中国の大企業が2016年Uberの中国事業を買収し、同年「Uberを大幅に上回る等世界で最も支配的なライドシェア企業となった」ことや、その滴滴出行が2018年には「トヨタ、フォルクスワーゲン、ルノー、日産、三菱アライアンス等とライドシェア用の電気自動車を共同開発する企業連合<洪流連盟(Dアライアンス)>を立ち上げた」といった記事が見つかりました。そして「2019年よりソフトバンクとの合弁会社DiDiモビリティジャパンがサービスを行っている」とのことで、そのDiDiのサイトが→コチラ。以前佐野眞一「あんぽん 孫正義伝」を読んで金持ちになるには「先見の明」と「行動力」と「交渉力」が必須なんだなと思いましたが、その彼が動いたということは、この分野が今後発展するという確信があるんでしょうね。
 車関係では、電気自動車はもちろん、自動運転それも無人車が近い将来のものとなっているようです。
 しかし、こういう技術の進歩が多くの人々の生活の改善や幸福増進につながるとは言えないのが問題で、車に限って言えば、将来的にタクシー運転手という職業はなくなるものなのか?等の不安要素はあるし、車以外でも、無人レジ等々機械が人間にどんどん取って代わっている現状がありますよね。このまま行くとそれなりのスペック(!)の持ち主以外の人々に残される仕事に一体何があるんだ!ということになる・・・というのが橘玲「無理ゲー社会」が読まれる理由なんだろうな。そういえば毎日新聞にも最近2日連続で橘さんのインタビュー記事が載ってましたね。→コチラと→コチラ
 うーん、なんだかカナシイねー・・・。(ベーシックインカムへの関心も必然的か・・・。)

    ★★★ NAVERの人気順位(10月5日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 夢見るネコ(韓国)  9.85(40)
②(2) さすらいのシェフ(韓国)  9.63(350)
③(3) パクカン・アルム結婚する(韓国)  9.63(43)
④(4) 学校に行く道(韓国)  9.58(156)
⑤(5) シャーマン・ロード(韓国)  9.56(16)
⑥(9) BanG Dream! Episode of Roselia II:Song I am.(日本)  9.37(27)
⑦(8) コーダ  9.34(486)
⑧(6) 映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者  9.29(317)
⑨(10) 奇跡(韓国)  9.28(2,965)
⑩(-) 花束みたいな恋をした(日本)  9.12(412)

 新登場の作品はありません。

     【記者・評論家による順位】

①(2) グリーン・ナイト  8.20(5)
②(3) ノマドランド  8.00(8)
③(4) 水を抱く女  8.00(6)
④(5) バクラウ 地図から消された村  8.00(5)
⑤(6) あの日のように抱きしめて  7.80(5)
⑥(7) イントロダクション(韓国)  7.67(3)
⑦(-) ガールフッド  7.60(5)
⑧(9) モガディシュ(韓国)  7.27(11)
⑨(10) 終着駅(韓国)  7.20(5)
⑩(-) アシスタント  7.00(6)

 新登場の作品はありません。

    ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績10月1日(金)~10月3日(日) ★★★
         日本と同じく「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」が1位に

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・007/ノー・タイム・トゥ・ダイ・・9/29・・・383,679・・・・・・・・564,255・・・・・・5,400・・・・・2,201
2(1)・・ボイス(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・9/15 ・・・・・90,881・・・・・・1,120,163・・・・・11,054・・・・・・・860
3(2)・・奇跡(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・9/15・・・・・・45,330 ・・・・・・・532,947・・・・・・5,015・・・・・・・674
4(3)・・シャン・チー ・・・・・・・・・・・・・・・・9/01 ・・・・・19,195・・・・・・1,705,627 ・・・・17,370・・・・・・・464
      テン・リングスの伝説
5(30)・・竜とそばかすの姫(日本) ・・・・9/29・・・・・・15,217・・・・・・・・・22,455 ・・・・・・・213・・・・・・・214
6(4)・・映画クレヨンしんちゃん ・・・・・9/15・・・・・・14,612 ・・・・・・・148,262 ・・・・・1,407・・・・・・・314
       激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者(日本)
7(5)・・劇場版ポケットモンスター ココ(日本)・・9/15・・12,395・・・178,202・・・・・・1,616・・・・・・・324
8(新)・・捜索者(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・10,635・・・・・・・・・16,240・・・・・・・・118・・・・・・・205
9(6)・・モガディシュ(韓国)・・・・・・・・・・7/28・・・・・・・9,214・・・・・・3,583,662 ・・・・34,286・・・・・・・318
10(7)・・キャンディマン ・・・・・・・・・・・・9/22・・・・・・・1,649・・・・・・・・・49,426・・・・・・・・489・・・・・・・・93
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 新登場は1・5・8位の3作品です。
 1位「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」は日本でも10月1日から公開されています。韓国題は「007 노 타임 투 다이」です。
 5位「竜とそばかすの姫」は私ヌルボも観たゾ! ただね、映画ジャーナリストのイ・ウンソンさんが書いているように「作画や音楽はますます完璧になっているが、物語の領域だけ足踏み状態のようだ」という感想は多くの人に共通しているのでは? 宮崎駿監督作品にあって細田作品にかけているのはテーマの掘り下げ。どれだけ自身の問題として深く考えているか?ということではないかなあ・・・。韓国題は「용과 주근깨 공주」。<주근깨>(チュグンケ)=そばかすという韓国語は初めて知りました(恥)。
 8位「捜索者」は韓国のスリラー。軍隊で暗い夜に銃声が鳴り、派遣されていた教育将校が死亡する事件が起きます。何一つ声を発することなく、という不可解な事件でした。同時刻、北朝鮮との間のDMZ[非武装地帯]で脱走兵が逃走する事態が発生し、3小隊がDMZ捜索作戦に緊急投入されます。現地には事件の調査官としてカン・ソング(ソン・チャンイ)大尉が派遣されます。隊員たちはDMZ脱走兵でも捜索隊員でもない正体不明の兵士を目撃します。そして不可解な死の連鎖が始まります。しかし事件を暴こうするたびにカン・ソングはペク・ヨンチョル中佐(ソン・ヨンギュ)という壁にぶつかります。それにもかかわらず彼は勇気を持って事件を最後までつきとめようとします・・・。原題は「수색자」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・捜索者(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・9/29・・・・・・10,635・・・・・・・16,240・・・・・・・・・・118・・・・・・205
2(再)・・セッション・・・・・・・・・・・・・・2015/3/12・・・・・・・1,109・・・・1,644,361・・・・・・・13,146・・・・・・・18
3(新)・・TADA : 大韓民国・・・・・・・・・・・・・10/14・・・・・・・・・727 ・・・・・・・・・・890 ・・・・・・・・・・・・9・・・・・・・・2
       スタートアップの肖像(韓国)
4(4)・・コーダ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/31・・・・・・・・・638・・・・・・・56,516・・・・・・・・・・526・・・・・・・20
5(3)・・アイム・ユア・マン ・・・・・・・・・・・・・・9/16・・・・・・・・・451 ・・・・・・・・7,430・・・・・・・・・・・66・・・・・・・18

 1・3位の2作品が新登場です。
 1位「捜索者」については上述しました。
 3位「TADA: 大韓民国 スタートアップの肖像」は韓国のドキュメンタリー。記事冒頭にも書いたように、<TADA>とは2018年の起業以来爆発的に成長してきたベンチャー企業です。
 つまり、この作品は<韓国のUber>と呼ばれるベンチャー企業の悪戦苦闘の物語です。
 TADAは、前述のUberの<世界標準>方式でスマホアプリを介してのカーシェア(配車サービス)を主事業として2018年スタートしました。その9ヵ月後にはユーザーが100万人、2020年には170万人にまで達すると共に、顧客・ライダー(運転者)の満足度も4.7/5と高い評価を維持してきました。ところが案の定タクシー業界から「違法タクシーだ!」との反発の声が上がります。一方、2019年7月国土交通部(省)がタクシー制度改編方案を発表すると、「TADAの参入障壁を高めてタクシー業界だけ保護している」「(ベンチャー等による)革新的成長を阻害するものだ」という批判があふれます。
 論議は法廷に持ち込まれ、TADAは旅客自動車運輸事業法違反の疑いで起訴されます。その判決は2020年2月ソウル中央地裁で下されました。「無罪」! これは「顧客との間の短期間レンタル契約」とのTADAの主張を認めたものでした。ベンチャー側がこの判決を歓迎したのはもちろんですが、法曹界でも罪刑法定主義に基づく当然の判決だという評が多かったそうです。
 ところがそれからわずか14日の間に国会で旅客自動車運輸事業法改正案(別名TADA禁止法)が与党・共に民主党側から発議され、国会国土交通委員会を全会一致で通過しました。この法案が本会議を通過すると、TADAが合法だとする根拠自体が消えてしまい、その事業は大きな制約を受けることになります。そして現在、結局TATAの営業形態は日本のUberと同じような方式になっているようです。(ということは、カカオモビリティのような配車サービスアプリと同じものになってる?)
 このドキュメンタリーは、とくにこのTADA禁止法以後6ヵ月間の悪戦苦闘の記録のようです。1審で無罪判決が出た日に全チームメンバーが集まって紙コップワインパーティーで祝ったのも束の間、となったわけですが、技術の発展とそれに伴う社会の変容、人々の意識の変化が急速に進む中、今後どうなるか、予測がむずかしいところです。本作に対する評価も、「スタートアップを目指す学生に貴重な教材になるだろう」と評価する米スタンフォード大教授もいれば、「企業からの投資して製作されたのか」という誤解もあってか「TADAの宣伝か」という見方もあるようです。原題は「타다: 대한민국 스타트업의 초상」です。

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