ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国内の映画 NAVER映画の人気順位 と 週末の興行成績 [9月6日(金)~9月8日(日)]

2019-09-11 23:54:35 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▸シネマ・ジャック&ベティで9月6日(金)「ニジノキセキ」を鑑賞。この作品の認知度は低いと思いますが、兵庫県青商会(在日本朝鮮青年商工会)が製作したドキュメンタリーで、朝鮮初級学校の先生や、朝鮮高級学校の生徒とその両親等に焦点を当てつつ、民族学校のようすを撮った作品です。副題は「『4・24』の未来へ、七色の架け橋」なのですが、『4・24』とは1948年4月24日の<阪神教育闘争>(阪神教育事件)のメモリアル・デーのこと。この出来事については→コチラや→コチラ参照。2月に観た高賛侑監督のドキュメンタリー「アイたちの学校」ではこの出来事について当時の映像と共に詳しく説明されていましたが、昨年70周年という区切りの年を迎えたというだけでなく、在日の人たちも3世・4世が主体になってきた現在、過去の重要な出来事を共通の記憶として後続世代にきちんと伝えていかなければならないという事情があるということだろうと思います。(国籍の変更等、日本社会への同化も進んでいるし・・・。)

▸続く7日(土)・8日(日)は、台風の接近が懸念される中、同じくシネマ・ジャック&ベティで <インチョンから横浜まで ミリム劇場×シネマ・ジャック&ベティ同時上映展>開催。7日は「1991、春」、8日は「妓生:花の告白」というドキュメンタリー2作品が上映されました。ともに日本初公開で、私ヌルボ、もちろん両日観に行ってきました。
     
 「1991、春」は、1991年の<カン・ギフン(姜基勲)遺書代筆操作事件>を扱ったドキュメンタリー、・・・ということまではわかっていたものの、詳しい内容や事件の背景までは知りませんでした。1987年の6月抗争によって大統領の直接選挙制が実現したものの、軍人出身の盧泰愚が当選。91年当時は激しい街頭闘争と、過酷な弾圧が続いていました。官憲側の弾圧は日本のレベルよりもはるかに強圧的で、この年4月には明知大のカン・ギョンテ君が警察が振り回した鉄パイプにより殺されました。この事件がその後の抗議の焼身自殺の連鎖の景気となります。それも約20件(!?)とは・・・。私ヌルボ、以前ソウル大や延世大のキャンパスを歩いた時、(6月抗争の時の)朴鍾哲や李韓烈の他にも民主化闘争の中で犠牲になった多くの<烈士>の碑があることを知りましたが、その中に抗議の自死を選んだ学生もいて、また安東大等々各大学にも慰霊のモニュメントが残っているのですね。(詩人金芝河は相次ぐ焼身自殺を「伝染病だ」と非難したとか。)
 そのように焼身自殺事件が続く中、西江大学のパク・ホン総長は「背後に組織による<死のリスト>がある」と主張します。つまり、順番を決めて焼身自殺闘争を組んでいるのだ、というもの。それを前提に、警察は5月8日運動組織の社会部長だったキム・ギソルさんが西江大で自殺したのも組織的な方針によるものとみて、彼の遺書も彼の同僚であるカン・ギフンさんが代筆したものと決めつけ、自殺幇助罪で捜査・立件。裁判では日本人の専門家による「彼の筆跡ではない」との鑑定結果をも否定して懲役3年の刑が確定し服役しました。再審で彼の無罪が確定したのは2015年。<事件>から14年も経った後でした。
 私ヌルボの感想は、闘争形態と官憲の弾圧の激烈さ。日本だと学生運動の犠牲者で思い浮かぶのは樺美智子さん(1960)と山崎博昭君(1967)の2人くらい。焼身自殺は学生でなくてもごくわずかでは? 日韓のこの違いはなぜなのでしょう?
 また、20年近く前の出来事が現在の政治状況にも関係がありそうということも何となく(?)わかったような・・・。
 上記のような冤罪事件のこととは別に、カン・ギフンさんの弾くタルレガとかヴィラ=ロボス等のギター曲の名曲はとても印象的でした。(ヌルボ、10代の頃少し齧ったので懐かしかったです。)

▸「妓生:花の告白」は、元妓生だったお年寄りに直接話を聞いたり、戦前の券番(日本ではふつう検番or見番と表記)のようすを詳しく説明したりと、妓生について<思い込み>を廃し、とても具体的に、多角的な視点から追究したドキュメンタリーでいろんな知識を得ました。
 「1991、春」とともに、今回だけの上映で終わるのはもったいない話です。今後上映の機会が増えることを期待したいものです。
 7日は上映後の懇親会にも参加。両監督や、仁川から来られた皆さんともいろいろ話せてよかったです。

▸9~11日は韓国とか映画とは関係のない2泊3日の岡山旅行。そのため記事の更新が1日遅れてしまいました。岡山では予定外で朝鮮関係のネタにも遭遇。それらについてはまたいずれ・・・。

▸池袋の新文芸坐で15日(土)「白蛇伝」(1958)と「太陽の王子 ホルスの大冒険」(1968)の特集上映! 昔ナツカシの60歳以上の皆さんだけでなく、若いアニメファンにも黎明期のニホンアニメの名作をぜひ観てほしいと思います。

         ★★★ NAVERの人気順位(9月3日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
       ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 痛いほど愛する(韓国)  9.65(150)
②(2) 愛の贈り物(韓国)  9.64(283)
③(-) 僕のワンダフル・ジャーニー  9.53(269)
④(3) 主戦場  9.52(923)
⑤(4) アラジン  9.39(26,287)
⑥(8) 明かりの下で(韓国)  9.27(15)
⑦(6) 教会のお兄さん(韓国)  9.26(1,534)
⑧(5) レッドシューズ(韓国)  9.25(3,677)
⑨(-) ディーター・ラムス  9.23(44)
⑩(7) トイ・ストーリー4  9.09(6,522)

 ③「僕のワンダフル・ジャーニー」が新登場ですが、この作品については後述します。

     【記者・評論家による順位】

①(1) 寄生虫[パラサイト](韓国)  9.06(16)
②(2) 幸福なラザロ  8.40(5)
③(3) ハチドリ(韓国)  8.38(13)
④(4) トイ・ストーリー4  8.09(11)
⑤(-) キム君(韓国)  7.57(7)
⑥(5) 主戦場  7.33(6)
⑦(6) EXIT(韓国)  7.23(13)
⑧(-) 動物、園(韓国)  7.20(5)
⑨(7) ユヨルの音楽アルバム(韓国)  7.13(8)
⑩(-) 僕が生きる世界(韓国)  7.00(3)

 ⑧と⑩の2作品が新登場です。
 ⑧「動物、園」は、韓国のドキュメンタリー。あなたにとって動物園はどんなイメージですか? 本来は野生動物で、容易に人を近づけないといっても、動物園の動物たちは人に頼らざるをえません。多くの動物たちはそこで生まれ、死ぬまでそこで一生を生きていくしかないのです。魚の獲り方から教わる子供アザラシ、清州動物園で生まれ育った最古参のヒョウ、生の最後の道を歩みつつある年老いたトラ、野生の世界に飛び立つ準備をしているワシ、人に育てられ人の姿だけ探しているオウム等々の動物たちや、掃除・飼育・繁殖・診療・手術等々で動物の世話にあたっている人たちの、表からは見えない日常や問題点をさまざまな角度から撮ったものです。原題の「동물, 원」は「動物、one」と訳した方がいいかも。(<園>も<one>も同じスペル。)
 ⑩「僕が生きる世界」は、今年3月7日公開の韓国のドラマ。夜はDJをしていて夢は花形DJ!・・・といっても、ミンギュ(クァク・ミンギュ)の現実はバイク便のアルバイト。ある日同僚が賃金がおかしいといいだし、一緒に街で見かけた労働相談のテントに入ったところ、非正規労働者であってもきちんとした労働契約を交わして、天引きしているという保険料も確認してみる必要があるとのアドバイスを受けます。ミンギュの彼女のシウン(キム・シウン)は、夢はアーチスト!・・・といっても、現実は美大に進みたい学生のための絵画塾講師。ところがある日、先輩でもあるオーナーから、シウンより年下だがブランド大学の学位を持った後輩が入ってくるので、君は中学生クラスに廻れ、給料も下がると告げられます・・・。今の韓国に多い非正規雇用の若者たちを主人公に、彼らのおかれた厳しい状況を描くとともに、労働問題について知るべきことを知るように告げる作品です。原題はは「내가 사는 세상」です。

      ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績8月30日(金)~9月1日(日) ★★★
           「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」の続編ホラーが1位に

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・・累積収入・・・上映館数
1(52)・・IT/イット THE END ・・・・・・・・9/04 ・・・・・・・・309,355・・・・・・・・414,879・・・・・・・・・3,603 ・・・・・・・999
       “それ”が見えたら、終わり。
2(31)・・劇場版 ハローカーボット・・・9/04・・・・・・・・・271,838・・・・・・・・319,417・・・・・・・・・2,444 ・・・・・・・889
       :月世界を助けて!
3(1)・・ユ・ヨルの音楽アルバム(韓国)・・8/28・・・・・・・・・230,162 ・・・・・・1,117,420・・・・・・・・・9,160 ・・・・・・・908
4(3)・・EXIT(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・7/31 ・・・・・・・・・191,987 ・・・・・・9,215,334・・・・・・・・77,456 ・・・・・・・732
5(2)・・変身(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/21 ・・・・・・・・・135,475 ・・・・・・1,757,682 ・・・・・・・15,045・・・・・・・・728
6(4)・・ワイルド・スピード・・・・・・・・・・・8/14 ・・・・・・・・・108,809 ・・・・・・3,607,512・・・・・・・・31,828 ・・・・・・・652
       /スーパーコンボ
7(5)・・47メーターズ・ダウン・・・・・・・・・8/28 ・・・・・・・・・・66,078・・・・・・・・440,356・・・・・・・・・3,598 ・・・・・・・526
       アンケイジド
8(新)・・僕のワンダフル・ジャーニー・・9/05 ・・・・・・・・・・32,635・・・・・・・・・39,817 ・・・・・・・・・・347 ・・・・・・・184
9(6)・・鳳梧洞[ポンオドン]戦闘(韓国)・・8/07・・・・・・・・・・26,441 ・・・・・・4,767,092・・・・・・・・40,446 ・・・・・・・336
10(10)・・ハチドリ(韓国)・・・・・・・・・・・・・8/29 ・・・・・・・・・・13,132 ・・・・・・・・44,868 ・・・・・・・・・・377 ・・・・・・・・91
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 今回の新登場は1・2・8位の3作品です。
 1位「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」は、スティーヴン・キングの原作を映画化したアメリカのホラー「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」(2017)の続編。メイン州の長閑な田舎町デリーはかつて子供たちが“それ”と呼ばれる怪物と闘った町。その町で新たな連続児童失踪事件が発生します。そこで立ち上がったのは、まだ子供だった27年前に「再び“それ”が現れたら僕たちも戻る」と誓い合ったビリーをはじめとするルーザーズ・クラブの仲間たちでした。忌まわしい思い出のあるデリーに大人になった彼らが帰ってくるのですが・・・。韓国題は「그것: 두 번째 이야기」。日本公開は11月1日です。
 2位「劇場版 ハローカーボット:月世界を助けて!」は、韓国のアニメシリーズの新作。車がロボットに変身するcarbotが今回も活躍します。地球を征服しようと企むエイリアンによって平和だった地球からタワークレーンや宇宙ステーションが消え、月の裏面で暮らしていたウサギ族の村はエイリアンロボットの攻撃を受けて危険にさらされます。チャタンとカーボットたちは、エイリアン軍団に立ち向かうために、月の国へ向かいますが・・・。原題は「극장판 헬로카봇 : 달나라를 구해줘!」です。
 8位「僕のワンダフル・ジャーニー」は、犬と飼い主の深い絆を描いたアメリカのドラマ「僕のワンダフル・ライフ」(2017年)の続編。日本公開は9月13日ですでに諸情報が流されているので、内容紹介等は省略します。韓国題は「안녕 베일리(アンニョン ベイリー)」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・・・上映館数
1(2)・・ハチドリ(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・8/29・・・・・・・・・13,132・・・・・・・・44,868 ・・・・・・・・・377 ・・・・・・・・・・91
2(1)・・カレント・ウォー・・・・・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・・6,278 ・・・・・・・206,919・・・・・・・・1,787・・・・・・・・・・59
3(4)・・私の家(韓国) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・8/22 ・・・・・・・・・5,516 ・・・・・・・・42,586 ・・・・・・・・・344 ・・・・・・・・・・92
4(11)・・はじまりのうた ・・・・・・・・・・2014/8/13 ・・・・・・・・・4,506・・・・・・3,443,458・・・・・・・27,199 ・・・・・・・・・・68
5(3)・・盲目のメロディ・・・・・・・・・・・・・・・・8/28 ・・・・・・・・・3,138 ・・・・・・・・22,620 ・・・・・・・・・183 ・・・・・・・・・・82
       ~インド式殺人狂騒曲

 5位「盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲」が今回の新登場です。インド映画ですが、ミュージカルシーンや豪華な衣装、派手なアクション等はない、これまでのイメージとは異なるブラックコメディで、世界的な大ヒット作。アーカーシュ(アーユシュマーン・クラーナー)は芸術を極める盲目のピアニスト。しかし実は「盲目を装っている」のです。ところがある日、演奏のために訪れた豪邸で殺人事件を目撃(!)してしまいます。(ありゃま。) それでも警察に駆け込んだらなんとそこの署長が犯人とは!(ありゃま2。) そして署長に命を狙われるハメに。そればかりか、さらに妻シミー(タブー)からひどい仕打ちを受けてしまい、ヤヤコシイ事態がどんどん進行していきます・・・。韓国題は「블라인드 멜로디)」。日本では11月15日から全国ロードショーとのことです。
 なお、⑧「はじまりのうた」は、韓国では「비긴 어게인」というタイトルで2014年公開され、日本でも2015年公開されました。

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