ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

1950年代韓国のヒット歌謡「がんばれ、クムスン」と、映画「国際市場で逢いましょう」

2015-06-22 13:28:25 | 韓国の音楽
 今回の記事のきっかけは、4月大韓民国歴史博物館で見たこの展示物です。

 朝鮮戦争(1950~53)の直後に大ヒットした2つの歌のレコードです。
 上は「断腸의 미아리고개」。1955年李海燕(イ・ヘヨン)の歌で発売された「断腸のミアリ峠」です。フムフムこれは知ってるゾというわけで下に目を移すと、コチラの曲名は「굳세어라 今順아」です。今順の読みは금순(クムスン)。あれ、「がんばれ、クムスン」ではないの!?
 「がんばれ、クムスン」といえば、ペ・ドゥナ主演の映画「頑張れ!グムスン」(2002)や、ハン・ヘジン主演のドラマ「がんばれ!クムスン」(2005)を思い出す人が多いでしょう。実は私ヌルボもその1人でした。で、後で調べてみたら原題は同じでも内容はどれも関係がありません。というか、1953年玄仁(ヒョン・イン)の歌った大ヒット歌謡のタイトルだけを取って映画やドラマを作ったということ。(こんな例は他にも何かあったような・・・。)
 で、この歌の動画を探すといろいろヒットしましたが、玄仁(ヒョン・イン)の歌で、発表当時に近いバージョンのものを貼っておきます。

 歌詞は次の通りです。
  눈보라가 휘날리는 바람찬 흥남부두에
   吹雪が吹き荒れる 風の冷たい興南(フンナム)埠頭で
  목을 놓아 불러봤다 찾아를 봤다
   声をかぎりに呼んで捜した
  금순아 어디로 가고 길을 잃고 헤매었더냐
   クムスンよ どこへ行って 道を見失って迷ったのか
  피눈물을 흘리면서 일사이후 나홀로 왔다
   血の涙を流しながら 「1.4(イルサ)」以後自分一人で来た

  일가친척 없는 몸이 지금은 무엇을 하나
   一家親戚のいない身が 今は何をしているか
  이내 몸은 국제시장 장사치기다
   このわが身は国際市場で商売をしている
  금순아 보고 싶구나 고향꿈도 그리워진다
   クムスンよ 会いたいな 故郷の夢も 懐かしい
  영도다리 난간위에 초생달만 외로이 떴다
   影島(ヨンド)橋の欄干の上で 三日月だけがさびしく浮かぶ

  철의 장막 모진 설움 받고서 살아를 간들
   鉄のカーテン ひどい悲しみを被って生きてきた
  천지간에 너와 난데 변함 있으랴
   天地の間にお前と俺なのに 変わりがあろうか
  금순아 굳세어다오 북진통일 그날이 오면
   クムスンよがんばれ 北進統一その日が来れば
  손을 잡고 웃어나 보자 얼싸안고 춤도 춰보자
   手を取って笑ってもみよう 抱きしめて踊ってもみよう


 興南は、現在北朝鮮の日本海に面した咸興市に属する港湾都市で、朝鮮戦争中一時は韓国&国連軍が占領していたが、その後中国の人民解放軍参戦で戦局は逆転して中朝軍は再度南進して1950年12月24日には興南埠頭から最後の米軍の高速輸送船が多数の避難民を乗せて撤収しました。
 国際市場は、釜山の有名な市場、影島は釜山港の向かい側の、橋で繋がっている島。
 なお、歌詞中の「1.4(イルサ)」とは「1.4後退(일사후퇴)」のこと。これは1951年1月4日の中朝軍によるソウルの再占領に基づく言葉で、「興南撤収作戦が1.4後退の始まり」のように、連合軍側の大規模な退却の意味で用いられています。
 ※「北侵統一」は後に「南北統一」と変えて歌われるようになっています。

 ・・・と、韓国では900万人に迫る観客を動員した大ヒット映画で、日本でもこの5月から公開されている「国際市場で逢いましょう」を観た人なら、上述の歌詞をざっと目を通しただけで、「なんだ、映画そのまんまじゃん」(ヌルボは横浜人)と思うでしょう。まさにその通り。
 実は、日本では認知度が高くないようですが、Mnet「SUPER STAR K6」の優勝者のクァク・ジノンと準優勝のキム・ピルが「国際市場で逢いましょう」のOSTを歌っているのですが、その曲が上記の「がんばれ、クムスン」のリメイクなんですね。ずいぶんフンイキが違うので、最初聴いた時同じ歌とは思えませんでした。

 ↑これに映画冒頭の興南撤収のシーンが用いられていますが、この部分はCGが多用されています。
    
 左が当時撮影の写真で、右が映画のCG映像の一場面です。

 最初、<韓国歴史博物館の音楽関係の展示>の記事として書き始めたのが、たまたまこの歌の歌詞を見、たまたま観た「国際市場で逢いましょう」との関連を知ったのでこの記事を独立させました。こんなことやってるからなかなか記事更新が進みません。あーあ。

 おまけ。1956年にデビューしたウンパンウル(銀滴)姉妹の歌は→コチラ。「北侵統一」と歌っています。
 おまけ2。2008年KBSの「火曜舞台」でおなじみの周炫美(チュ・ヒョンミ)もこの歌を歌っています。→コチラ。ここでは「南北統一」です。また歌詞の最後の「笑ってみよう」は「泣いてもみよう」になっています。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 韓国内の映画 Daumの人気順... | トップ | 韓国内の映画 Daumの人気順... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

韓国の音楽」カテゴリの最新記事