ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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往年の人気コメディアン李朱一(イ・ジュイル)が肺がんの苦しみの中で訴えた禁煙(2002年)

2017-05-30 16:49:22 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 →1つ前の記事<笑っちゃったけど、笑いごとじゃない? この韓国のタバコの警告文&写真>の最後で「東京オリンピックを前にして禁煙・喫煙の場所が問題になっていますが、その件もこの警告写真についても日本が世界の趨勢から遅れているということなんですかねー?」と書きました。
 それに対し、「本当に日本はタバコ規制の世界的潮流から遅れています。韓国も議会はオジサン支配でタバコぷかぷかの印象だったのですが、どうやって屋内禁煙やタバコパッケージ警告表示を実現できたのか、興味があります。」とのコメントをいただきました。
 思いつくままにレスを書いていたら少し長くなりそうなので記事にまとめることにしました。
 
 たしかに、以前は韓国の方が日本より多くの人がスパスパ吸っていたという印象があります。ところが、今世紀に入って以降、韓国は禁煙については日本を追い越したようですね。
 あ、健康志向とか自然志向、環境保護等々も急速に進んだ感があります。

 禁煙運動については、とくに往年の人気コメディアン李朱一(イ・ジュイル.1940~2002)が肺がんで入院した時に禁煙を呼びかけたのが大きな契機となったと思います。(※李朱一は80年代のTVで大きな人気を博した伝説的なコメディアン。当時の全斗煥に似た顔で、「못생겨서 죄송합니다(ブサイクですみません)」等の流行語を生んだ。90年代には国会議員に当選し4年間在任したこともある。)
 2001年10月に肺がんの判定を受けた彼は国立がんセンターに入院します。そしてマスコミの取材に対し「私のように苦しまないために喫煙を止めましょう」と呼びかけた言葉と、その痛々しい姿は大きな反響を呼びました。
 私ヌルボがそのことを知ったのは、当時(2002年?)発行の月刊誌「말(言葉)」に彼の写真が表紙に用いられ、記事でも大きく取り上げられていたのを読んだからです。(今その現物はどこかな??)
 結局彼は2002年8月満61歳で亡くなりました。
 YouTubeにその間撮った彼の禁煙公共広告の動画(日本語字幕)があったので貼っておきます。

 なお、李朱一には死後、コメディアンとしてではなく禁煙運動への貢献によって国民勲章牡丹章が贈られました。

 今の話。韓国で街中の禁煙区域の拡大や喫煙場所の設置等が進んでいる等のことについては→コチラ<何だ? この<女性専用>というエリアは・・・・ ★韓国の禁煙事情>と題した記事で少し書きました。

 公共施設や、食堂等の一般店舗についての禁煙の基準は国によって内容が異なります。
 <e-ヘルスネット>の「進んでいる世界の受動喫煙対策」と題した記事(→コチラ)にWHOによる2012年の国別の調査結果の表があったので貼っておきます。

 日本が遅れをとっていることが一目瞭然でわかります。
 5年前の資料ですが、その後どれほど変わってきているのでしょうか?
 
 韓国では、博物館等の大型建築物・大型ショッピングセンター・居酒屋・バーを含む飲食店の屋内、ホテルのロビー等・自治体が管理する20以上の公園・中央バスレーン停留所が喫煙禁止になっています。
 2015年1月1日からすべての飲食店(カフェ・居酒屋・レストラン・食堂)で喫煙不可となりました。摘発されると罰金が科せられます。外国人旅行者については「厳重指導」されます。

 私ヌルボ、韓国の喫煙規制の推進には上述のような近年の韓国社会の趨勢に加えて、2018平昌冬季オリンピックとの関連もあるのではと思います。昨年5月の連合ニュース(→コチラ.韓国語)によると、平昌オリンピック組織委員会は世界保健機関(WHO)が推進するスポーツ禁煙キャンペーンに参加することを明らかにしました。そのキャンペーンは、スポーツでの喫煙行為の禁止、競技場受動喫煙禁止、たばこ関連総合広告、タバコ会社の後援の禁止等などを主な内容とするものとのことです。

 日本でも2020年東京オリンピックを前に論議が進められていますが、はたしてどんな形でまとめられるのか、各々の支持団体の要求をまず第1に考えるような政治家の主張が通るとなるとなんだかなーという結果になっちゃいそうです。

 ただ、いろいろな規制策が整えられていっても、それがちゃんと守られるかどうかといった問題があります。これも前の記事のコメントで教えていただいた→コチラのMBN(毎日放送)TVニュースでは、小・中学校の門から50m以内は禁煙区域に指定されているにもかかわらず、タバコを吸っている大人が多いことを報じています。記事中の動画を見ると、学校の柵には「門から50m以内禁煙区域」「喫煙した時は10万ウォン・・・」と大きく書かれた横断幕が掲げられているのに、無視して吸っている人のなんと多いことか! また吸い殻のポイ捨てもあきれるほど。つい5日前(5月25日)のニュースですが、これが現実ということでしょうか。
 結局は行政の施策や法的規制だけでなく、教育やメディア等を通じた長期的な働きかけが必要という(なんとも当たり障りのない)結論になってしまいます。

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3 コメント

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ありがとうございます (山田)
2017-05-31 22:23:51
うーん、2002年のことは、しかしそれほど大きな影響があるんでしょうか。
韓国はやっぱり、世襲議員が少なくて、老人議員も少ないんですかね。議員の男女比も気になります。
女性が多ければ、禁煙も進むでしょうから・・・
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Unknown (ランチタイムだけでも禁煙切望)
2017-06-29 01:07:45
後先考えずにとりあえずやる!っていう態度が功を奏しているのじゃないかと思います。レジ袋有料、ホテルの歯ブラシ廃止も早かったです。
返信する
遅くなってすみませんでした。 (ヌルボ)
2017-07-06 14:03:15
 レスが遅くなってすみませんでした。

山田さんへ
 この記事で書いた2002年の李朱日のことは、彼の訴えが当時の韓国社会に影響を及ぼすほど「機が熟していた」ということではないでしょうか? もし10年前だったら「人気コメディアンの死亡」はニュースになっても、「死因は肺がん云々」はそんなに注目されなかったのでは?

Unknownさんへ
 「ホテルの歯ブラシ廃止」というのは知りませんでした。
 たしかに、こうと決めたら突っ走るという事例はいろいろありそうですね。
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