ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国でも知られつつある四国八十八箇所霊場巡り・・・・と書き始めるはずだったのに。

2014-04-11 22:50:05 | 韓国・朝鮮と日本の間のいろいろ
           

 「갑신년의 세 친구(甲申年の3人の友)」を読み終えた後、次は何を読むかな、とツンドクになったままの韓国書の中から選んだのが「남자한테 차여서 시코쿠라니(男にふられて四国って)」という本です。

 ・・・と、この本の紹介文を書き始めたのが1ヵ月ほど前。ま、早い話が30歳ちょっとの韓国人女性キム・ジヨン(김지영)さんの四国八十八箇所巡礼記録なんですが・・・。

 ところが一昨日、その記事を仕上げようと再度取りかかったところ、たまたま<お遍路に外国人排斥の紙 徳島 霊場会「差別許されない」>という見出しのニュース記事が同日(4月9日)「東京新聞」に掲載されました。(→コチラ)。
 「日刊スポーツ」(→コチラ)、「産経新聞」(→コチラ)でもほぼ同内容の記事が載りました。(つまり、共同通信の配信。)

 チェ・サンヒ(崔象喜.최상희)さんという韓国人女性がハングルの案内シール(4000枚)を遍路道の道沿いに貼ったことを念頭において、次のような文面の貼り紙が徳島県の休憩所に貼られていたというものです。
 「大切な遍路道」を朝鮮人の手から守りましょう。最近、礼儀しらずな朝鮮人達が、気持ち悪いシールを、四国中に貼り回っています。「日本の遍路道」を守る為、見つけ次第、はがしましょう (日本の遍路道を守ろう会)
 続報では、その後香川・愛媛両県でも見つかったとのことです。

 チェ・サンヒさんについては、これまでも何度か新聞に取り上げられてきました。
 2013年5月9日「毎日新聞」地方版の<お遍路:日韓の橋渡し 崔さん「大窪寺」到着、4度目の結願果たす 韓国人初の「先達」へ>、2013年5月16日「徳島新聞」の<「お遍路」韓国に広がれ 崔さん、道沿いに案内シール>、2013年12月17日「四国新聞」の<外国人女性初の「先達」/韓国の崔象喜さん公認>等です。
 ※チェ・サンヒさんが開設したホームページは→コチラです。

 これらのチェさんへの好意的な記事に対して、早くから疑問を呈していたのは2013年5月の→コチラのブログ記事。<無許可で遍路道にハングル自作ステッカーを貼る韓国人の愚行と、美談として報じるNHK・毎日新聞・読売新聞>という見出しです。
 韓国に対する批判記事が多いブログですが、感情露わな嫌韓ブログではなさそうです。
 批判の主旨は「もっと韓国人に知ってほしい、来てほしい、というチェさんの気持ちはありがたいですが、そこまでお遍路に惚れ込んでいるのなら、ハングルで案内をあちこちに貼るという発想がどれほど短絡的で傲慢なことかも考えてほしかった」というものです。また、「ちゃんと許可を得て貼っていたかどうか?」も気にかかっているようです。
 私ヌルボとしては、「ふうん、そういうふうに考える人もいるのか」ということと、「ステッカーがハングルではなく英語だったらどういう反応を示すのだろうか?」ということを思いました。「許可の有無」については、多くの日本人が気にするのでは? NHK徳島が「許可を得てからステッカーを貼っていました」と報じたというのも、当然その点が引っかかったからでしょう。

 ところが、今回の<日本の遍路道を守ろう会>による貼り紙は、浦和レッズのサポーターの「差別横断幕」事件同様、日本を愛していると思っている人のオウンゴールのようですね。
 (はたして、この貼り紙は許可を得て貼ったのかな?) 

 先に引用したブログ主さんも、4月9日のニュース報道直後に<遍路休憩所に朝鮮人批判の紙 良くない行為なのは確かだが差別の一言で片付けずその背景と対策も考えるべき>(→コチラ)という記事で、その貼り紙自体について否定的に見ています。

 一方、この報道をめぐる2ちゃんねるの<「『大切な遍路道』を朝鮮人の手から守りましょう」お遍路休憩所に貼り紙>というスレ(→コチラ)はシッチャカメッチャカ。ステッカーを剥がす行為を「除染」とよんだり、まあいろいろ。中には「同じ日本同胞として世界からレイシストと誤解されて恥ずかしい」というのもありますが・・・。
 レッテルの貼り合いというのは実に不毛です。
 この件でも私ヌルボが思うのは、いわゆる「嫌韓」日本人はいわゆる「反日」韓国人とよく似ているなー、ということ。
 たとえば、次のようなカキコミ。

 逆のケースを考えてみれば良い。もし日本人の旅行者が韓国のハイキングコースなどに勝手に日本語で書いたシールを貼って、それを朝鮮人が新聞で取り上げて「日本人が勝手に我が国の自然を汚すのを止めさせよう」と言ったとする。おそらく誰もこの朝鮮人を非難しないどころかシールを貼った日本人に批判が殺到することだろう。

 この文章中の「日本」を「韓国」に、「韓国」を「日本」におきかえると、そのまま同じことを今一部の日本人がやっているということ。「韓国人が日本人に嫌われても当然のことをしているなら、日本人が韓国人に嫌われても当然のことをしてもいい」と思ってしまうと、結局は「お互い仲間同士」ということになりますが、そう思わないのかなー?

 先の「徳島新聞」の記事によると、チェさんは「四国に来てお遍路をすれば、日本に対するイメージは大きく変わる。国と国との問題も、人と人との交流で変えられるはず」と言ってたのに、今回のことが韓国で報じられて、「日本のイメージは変わらない」ということになっちゃうとはねー。
 チェ・サンヒさんのステッカー貼りについて批判的な意見を持つのはいいとしても(←ヌルボがそれに賛同しているわけでもないが)、先の読みが全然ない短絡的・感情的な方法を取ってしまったことで、かえって日本のイメージを損なってしまったのは非常に残念なことです。
 四国八十八箇所巡礼の国際化は、地元関係者だけでなく多くの人が望んでいることなのに、思わぬところでミソをつけてしまったという感じです。(多くの日本人を困らせ、一部の韓国人(?)を喜ばせてどーする?)
 ※4月6日「朝日新聞」の記事<ハロー「日本の巡礼路」 お遍路歩く外国人客>は→コチラ

 それにしても、どこのどういう人がこういう貼り紙をしたり、ハングルの案内ステッカーを剥がしていったのかわかりませんが、なんともすごい情熱だなあと思います。その人は、このような事態になることをどこまで想定していたのでしょうか?
 ヌルボ思うに、「レイシスト!」とか「バカウヨ!」とかの言葉を投げつけても意味はないので、立場を問わず、たとえば上久保誠人立命館大学教授の<浦和レッズ問題と保守派の言動から垣間見える、日本人の「経験不足」>という論考(→コチラ)でも読んでいろいろ考えてみましょう。

 ・・・「明らかな差別貼り紙なのに、ヌルボはずいぶん手ぬるい書き方だな」と思われるだろうな・・・。

 あ、冒頭に掲げた本のことを全然書いてなかった!