ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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[韓国の大統領選]朴槿恵・文在寅以外の5人の候補者(上)

2012-12-08 23:51:56 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
 東京都知事選は、有力候補者は何人になるんでしょうか? 「泡沫」ともいえない□□氏や△△氏は、はたして「有力」といえるのかどうか?

 今回の韓国の大統領選の場合ははっきりしています。有力候補者はセヌリ党の朴槿恵(박근혜.パク・クネ)と民主統合党の文在寅(문재인.ムン・ジェイン)の2人。
 日本の新聞には、この2人以外は11月23日不出馬を宣言した安哲秀(アン・チョルス)の名前くらいしかこれまでほとんど載っていないので、候補者が実は計7人もいるということはほとんど知られていないと思います。

 韓国の大統領選の行方は日韓関係の今後にも関わるということもあって、注目している人も多いでしょうし、上記2人の有力候補者についての情報もそれなりに伝えられているので、私ヌルボとしてはそのスキマをねらって(?)有力ではない5人の候補者について書いてみることにします。

 前の記事で少し説明した番号順にみていきます。
 まず③李正姫(이정희.イ・ジョンヒ)について。
 統合進歩党。有力候補者でないにしても、「有名」候補者であることはたしかです。
 2008年6月のローソクデモの際他の市民とともに連行され、その時の激烈な(?)写真が話題になったりもしました。(※コチラの写真入り記事参照。)
 ソウルの女子高生時代はすごく優秀で、韓国ウィキには学力考査の全国順位(!)まで出てます。
 ソウル大法学部当時は総女子学生会長。卒業後在韓米軍や女性問題と関わりながら弁護士となって活動を続け、2008年に議会内最左派の民主労働党の比例代表として国会議員に当選。党代表を務め、政党再編後の 統合進歩党でも共同代表を務めました。
 その統合進歩党、今春4月の総選挙では選挙前を6上回る13議席を獲得し、自由先進党を抜いて3党に躍進したものの、比例代表候補の党内予備選で代理投票等の不正行為が明るみに出て党内はしっちゃかめっちゃか。党外からの「従北派」批判も高まる中で彼女は共同代表を下りました。
 ※「しっちゃかめっちゃか」のその後の詳細は→ウィキ参照。

 ・・・というわけで現在統合進歩党の支持率も急減、李正姫候補の支持率も1%に満たない状態です。
 しかし、その李正姫候補が2人の有力候補とともになぜ12月4日のテレビ討論に出ることができたかというと、「世論調査の支持率5%以上」という条件からは外れても「国会議席5以上の党候補」に該当(現有6議席)するから。
 そして臨んだこのテレビ討論で、李正姫候補は「非常に目立った」と伝えられています。「産経新聞」黒田勝弘ソウル支局長は→コチラの記事で「視聴者は当選を競う2大政党の朴・文候補による政策討論を期待したが、保守与党の朴非難に熱を上げる親北・左翼の李候補の毒舌ばかりが目立ち、討論はぶちこわしになってしまった」と書いています。続けて「李正姫氏は学生運動上がりの弁護士。「朴候補を落とすために来た」と公言し冒頭から朴候補の父・朴正煕大統領について「元日本軍将校タカギ・マサオという名前だった」などと“親日派批判”をまくしたてた。延坪島砲撃やミサイル発射など自らに都合の悪い北朝鮮問題は意図的に無視。朴候補に対する人身攻撃など言いたい放題だった」と、黒田記者自身も主観交じりどころか主観丸出し書きたい放題の記事になっちゃってます。

 たしかに、「維新独裁者・朴正熙の娘」であることを攻撃材料にしている一方で、北朝鮮の3代世襲については、「保守政党と複数のメディアが3代世襲を非難している状況で、進歩政党まで葛藤を加えてはいけない」という理由で全然批判していないし、今回の選挙用横断幕を見ると、「ともに生きよう 大韓民国」とともに「想像せよ コリア連邦(상상하라 코리아연방)」と金日成が唱えた<高麗連邦>とよく似た言葉をスローガンとして掲げているようだし、テレビ討論の中で北朝鮮の長距離ロケット発射計画について討論中「南側政府は・・・」と言った後「大韓民国政府」と言い直したりもしてるし、「北朝鮮寄り」というよりも「北朝鮮べったり」ではないか、と言われる理由はたしかにたくさんありますね。
 ※あまり関係ないですけど、李正姫の「正姫」と朴正熙の「正熙」は全く同じ発音です。

 テレビ討論の李正姫について、「ハンギョレ」の記事はさすがに好意的です。(→コチラコチラ。)
 イデオロギー的・感情的・生理的(?)反発はおくとして、朴槿恵が全斗煥から生計費として6億ウォンを受け取った事実を明らかにしたこと、整理解雇問題や労働者に対する暴力的弾圧、済州海軍基地、龍山惨事、江原道ゴルフ場問題等々や、それらの問題を生み出したセヌリ党政権批判は耳を傾けるべき内容でしょう。
 また、以下のような核心公約(→コチラ参照)に賛意を表する人も多数いるのではないでしょうか?

1.韓米FTA廃棄で経済株券守護 
2.韓半島緊張緩和と平和体制実現
3.労動3策の実質的で完全な保障
4.基礎農産物国家収買制度で食糧株券実現
5.女性が幸せな社会
6.公教育正常化と教育費軽減
7.国家が責任を負う無償医療
8.1%の財閥解体で99%の庶民幸せ
9.富裕層と財閥に対する増税で福祉財源用意
10.原子力発電所廃棄、エネルギー転換


 これ以外に、国家保安法撤廃という主張も賛否を問わず注目すべきイシューですね。

 しかし、朴槿恵攻撃にターゲットを絞った李正姫候補のテレビ討論戦略の結果は、多くのメディアを見ると、文在寅の影が薄くなってしまい、また李正姫自身も反発を買ったりして、結局は彼女の意に反して朴槿恵を利することになってしまった、という見方が多いようです。
 (なぬなぬ? そこらへんの「陰謀論」なんつーのもあるの!? ホンマカイナ?? →コチラ参照。)

 ・・・で、最後になりましたが、私ヌルボに対して「ではオマエの立ち位置はどーなんだ?」という当然の疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。その回答は「どの候補者についても欠点が見える」。日本の総選挙も同様で、無責任といえば無責任かも。しかし根拠のない期待感だけで票を投じるのも無責任でないはずはないでしょ。何を重視すべきか熟慮して、欠点は了解した上でしかたなく1票を投ずるしかないんでしょうねー。やれやれ、です。ホントはマイナス票を投じたい。あ、これもたくさんあって迷いそう。

 あらら、5候補について書くつもりが、李正姫候補だけでずいぶん文字数を費やしてしまいました。まあ「人気者」ってことで、ネタはいっぱいある人だからねー。で他の4候補は次回に回します。

★2008年民主労働党から国会議員になって以来現在までの李正姫の人気の変化を「高さ(km)」で示した→コチラの記事(韓国語)がおもしろい。2011年11月には宇宙圏にまで達する高い人気だったのが、2012年5月には地面に墜落、以後地下1000km→2000km、さらに下降中・・・。