ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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韓国の習いごと1位=「学習誌」をめぐる状況[1]

2012-03-26 23:51:25 | 韓国の時事関係(政治・経済・社会等)
  ≪「学習誌」とは何か?≫

 2月6日付「朝鮮日報」に「小学生、勉強に酷使・・・休む時間1日に3時間、高校生と同じ」という記事がありました。「小学生は習い事がたくさんあって休む暇さえない」というのがその趣旨ですが、この記事中に「일주일에 한번은 학습지교사가 집으로 찾아오고」という部分がありました。「1週間に1回は학습지教師が家にやってきて」ということですが、この「학습지」が「学習紙」なのか「学習誌」なのか、またいずれにしろどういう意味なのか、私ヌルボ、よくわかりませんでした。

 まもなく日本語版に載ったこの記事の訳を見ると、「週に1度は学習誌の訪問教師が家に来る」となっていました。
 つまり「学習誌」というのは、学習誌の購入とセットで業者派遣の教師が定期的に家庭を訪問して、その学習誌を用いて子どもを指導する、というものなんですね。(教師の指導時間は1科目について約15分前後のようです。)

 その後この「学習誌」について調べてみて、韓国の幼児教育の場で非常に大きな比重を占めていることを知りました。
 たとえば、下の図。ベネッセ教育開発センターが2006年東京・ソウル・北京・上海の3~6歳の就学前の幼児をもつ保護者を対象として実施した「幼児の生活アンケート」の調査結果の一部です。 (参照サイトは→コチラ。<アジアの人気習いごと、韓国「学習誌」、中国「絵画教室」>という見出しがついています)

    
  【ソウルでは「学習誌」が半数以上と圧倒的。「英会話など」は東京の方が少し多いが、「学習誌」には英語も含まれている。】
※ベネッセ教育開発センターの他の調査結果も興味深いものがあります。(→コチラ。)

 さて、その「学習誌」についてもう少し詳しくみてみると・・・。

  ≪各社が競合する大教育市場≫

 代表的な学習誌会社としては、以下の各社があげられます。
 業界トップの<ヌンノッピ(눈높이)>という学習誌を運営している大教(대교.テギョ)、<シンクビッグ(씽크빅)>の熊津(웅진.ウンジン)、「48カ国・地域に教室を展開している」という、日本が本家の教元公文(キョウォンクモン. 교원구몬)は、1月30日のニュースによると、学習誌部門の価値評価1位だった<赤ペン(빨간펜.パルガンペン)>を発行。 ※2位はヌンノッピ、3位はシンクビッグ(씽크빅)となっています。
※日本では<赤ペン先生>といえば公文のライバルの進研ゼミの採点者のことですが・・・。そして<才能教育(재능교육.チェヌンキョユク)>のJEI
 以上がビッグ4とよばれる最大手4社です。
 ハンソル教育(ハンソルキョユク.한솔교육)はサムスン系の業社で、タイや北京・上海にも進出しています。(「ハンソル」は「大きな松」という意味。)
 その他、壮元教育(장원교육.チャンウォンキョユク)、<英才二倍に学習(영재두배로학습.ヨンジェトゥベロハクスプ)>の発行元の英教(영교.ヨンギョ)、UP教育(UP교육.ユピキョユク)等の業者があります。

   ≪多種多彩な内容 英語や漢字はもちろん、迷路・音楽(楽譜)・読書なども≫

 さて、その学習誌で何を教えるか、ということですが、共通しているものは、まずはハングル算数。ハングルも、レベルによって書き取り、作文、読み物等々いろいろあります。また英語も各社共通。単語のスペルがメインですが、絵とかカードとか、各社それぞれに工夫しています。英語以外にも、中国語日本語を含む学習誌もあります。その他、漢字もほとんどの学習誌で扱っています。世界の国とか、科学歴史もあります。
 およそ子どもが5~6歳の時に始めるのが一般的のようですが、もっと早くから(満3歳頃)始める子どももいて、そんな幼児用に、遊び感覚で学べる教具・教材を用意しているところもあります。上記各社のサイトを見ると、迷路や切抜き、紙工作等々、子どもの興味を引きそうなものがいろいろあります。

       
    【ウンジン発行の幼児向け歴史全集。個人的には読んでみたい気もしますが・・・。】

       
  【切り貼りして筆立てのようなものを作って、「~아리」の付く言葉を覚えようというのかな? どう使うのでしょう?】

    ≪親が教えるタイプも。増えるオンライン利用≫

 前述の各学習誌はいずれも各家庭を指導教師が訪問して教えるというものですが、それ以外に、毎週または毎月学習誌が配達され、各家庭で親が教える方式の学習誌会社もあります。
 このタイプの学習誌会社としては、<プルネット(푸르넷.プルネッ)>を刊行している金星出版社(금성출판사)や、<ソロモンシリーズ(솔로몬시리즈)>のノーベルとアリ(노벨과개미)などがあります。
 最近の目立った変化といえば、パソコン(とくにモバイル)を利用する学習誌が登場したことです。
 昨2011年3月の「スポーツ韓国」の記事「学習誌市場に変化の風」によると、2010年9月ウンジンが初めてオンラインとオフラインを結合させて自己学習を可能にした「シンクU数学」を開始。以後3ヵ月で4万9千人の会員を確保して好調なスタートを切り、以後他科目も開設しているとのことです。同じ大手のテギョもその後を追って同様のタイプを始めました。
 さらには、モバイルを利用したオンラインに限定した運営を進めている業者も出てきているそうです。
 私ヌルボが探してみたところでは、<エニースクール(애니스쿨)><セムトゥルアイ(샘틀아이)>がその例で、オンラインを利用して親が指導するという方式に特化した業者のようです。
※「セムトゥル(샘틀)」とはコンピューターの韓国語固有語だそうです。

    ≪みんな大変! 子どもも親も、業者も、そして・・・ ≫

 以上、長々と韓国の学習誌のあらましをみてきました。
 他国と比べて教育熱が非常に高く、私教育費の負担が大きい韓国ならではの状況がこの学習誌に如実に現われているようで、業者間の競争の激しさを読み取ることができます。
 親たち(韓国では「学父母(학부모.ハクプモ)」)も必死で、ポータルサイトのQ&A掲示板では「どの学習誌がいいか?」「何歳から始めるとよいか?」等の質問も多くみられ、またそれに対して多くの人が多様な回答を寄せています。
 そして何よりも、当の子どもたちこそ一番大変かもしれませんね、きっと。

 そしてさらに近年、また別にとても大変な思いをしている人たちがいて、それがニュースにまでなっているんですね。
 ・・・その人たちのことについては<続き>で書くことにします。
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