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ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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講演会「北朝鮮の現状」(つづき)

2010-11-27 22:57:43 | 北朝鮮のもろもろ
 11月22日の記事に続いて、石丸次郎氏の講演会「北朝鮮の現状」についてです。

※この講演会については、<北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会>のサイトで、三浦小太郎氏が部分的な見解の相違は認めながらも好意的なコメントを記しています。

 この講演会では、子どもの頃北朝鮮に渡り、46年ぶりに日本に帰還した李さんが質問に答えるという形で北朝鮮について体験を基に話しました。彼が北朝鮮の人権問題でとくに重大なものとしてあげたのが次の3点です。

①強制収容所 
②公開処刑
③コッチェビ(浮浪児)


 とくに②について、実際に見た経験から具体的な説明がありました。
 「公開裁判」(←「公開処刑」とは書かれない)の公示があれば皆が見に行かなければならず、行かないとチェックされます。被告の家族も間近で見なければなりません。形式的に弁護士もいるとはいっても、裁判そのものは10分もかからず、判決が下されるとすぐ2人が囚人にさるぐつわをします。ヌルボも何かで読みましたが、囚人が体制に対する批判的言辞を叫ぶことを防ぐためです。即処刑に移り、白い布をかぶせた囚人に、3人の狙撃手が頭・胸・脚に1発ずつで、計9発の銃弾が撃ち込まれます。
 江戸時代、一揆の指導者のハリツケ刑の場合も村人たちは全員見守ることが義務づけられていたそうですが、それと同様の前近代的な形式ですね。(では日本の死刑制度はどうなのか?という問題は当然ありますが・・・。)

 講演会の最後の方で、石丸氏は今北朝鮮に対してどういうことができるのか、ということについて考えるところを話しました。
 「国交正常化をし、歴史清算すべき・・・」と語りはじめたので内心「あれっ?」と思いましたが、さらに以下のように論を進めました。
 国交正常化の前に解決すべき問題がある。拉致問題、核開発問題等々。北の住民の利益にならないような正常化はしない。金正日体制の維持や核武装化に使われる可能性があってはならず、民主化を進めることが前提。かつての植民地統治に対する贖罪意識、罪悪感からだけで国交正常化を唱えるのは、大事な問題を抜かしている。

・・・・ということで、私ヌルボもナットク。

 石丸氏が最後に強調した点は、北朝鮮の人権状況を伝え、国際的に問題化することの意義。それによって状況は少しずつ変わってきた、ということです。
以前は被疑者の取り調べの際殴ったりすることはふつうに行われていたが、今は殴らなくなったといいます。
 また人々も、以前は「人権(인권.インクォン)」という言葉すら知らなかったそうです。<権(권.クォン)>の音が<券>と同じなので、「それは何がもらえる<券>なのか?」と聞かれたりもしたとか。
 しかし今は「人権」という言葉も知られるようになっているそうです。

 官憲が暴力をふるう国はいくつもありますが、北朝鮮のように、個々の官憲の暴力ではなく、体制自体が、人権を抑圧するという管理的なシステムになっている、という点で北朝鮮は特異な国です。李さんに対して会場から「デモとかの、民衆の意思表示はないのか?」という質問がありましたが、相互監視体制の存在や、連座制(本人だけでなく家族まで殺される)のため、抗議行動はありえないとのことでした。

 そんな北朝鮮も、上記のように外国からの目は相当に気にしているので、国際世論を喚起していこう、という訴えで石丸氏は講演を終えました。

 その後関連のサイトをいくつか見た中で、<ノーフェンス>のサイト中からのリンクで見ることができる「北朝鮮人権問題に対する市民団体報告書」は、大きな共感をもって読みました。今年2月に、韓国で複数の市民団体が発表した提言です。多角的な、また具体的な北朝鮮の人権問題に対する提言です。

講演会「北朝鮮の現状」に行ってきました。

2010-11-22 21:04:30 | 北朝鮮のもろもろ
 20日(土)横浜YWCAのホールで開かれたアムネスティ主催の講演会「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の現状)」に行ってきました。講師はアジアプレスの石丸次郎氏です。
 4月9日の明治大学での講演会の時は、帰還者2人、日本に残った家族等4人のゲストがいて、その人たちの話がメインでした。しかし今回は石丸氏の外には、少年時代北朝鮮に渡り数年前脱北して46年ぶりに日本戻ってきた在日の方1人だけ。その李さんも質問に答える形で話をされたので、その分石丸氏自身の経験や見解を語る時間が多かったといえます。

 石丸氏は、最初に、なぜ北朝鮮報道に関わるようになったかを中心に自己紹介。1980年代に2年間半韓国に語学留学。その後1993年に中朝国境地帯を歩き、脱北者の話を聞いてショックを受けたことが以後の活動の契機になったとか。それまでは「自主・自立」の道を歩む北朝鮮という国にはむしろシンパシーを持っていただけに、その実態に触れたショックは大きかったそうです。
 以来17年間取材を続けてきて痛感したこと、というか結論なんですが、それは「北朝鮮社会の内部を伝えることは、外国人ジャーナリストでは無理!」ということ。
 北朝鮮当局は、ジャーナリストはなかなか入国させてくれないし、どうしても越えられない壁があるというわけです。そして北朝鮮住民とコンタクトをとって、その内部から情報を送ってもらう形で「リムジンガン」を創刊するに至ります。

 会場の聴衆は50人あまり。「この中で北朝鮮に行ったことがある人は?」との石丸氏の問いに挙手したのは私ヌルボともうお一方。私ヌルボは以前このブログ2009年8月30日の記事等に記したように1991年。もう1人の方は数年前、例のマスゲーム観覧のアリラン祭観光で。ヌルボは9日間で30万円近く、アリラン祭観光の方は5泊6日で27万円だったとか。
※アリラン祭の動画は →コチラたぶんマスゲーム見物の場合もヌルボの時と同様に現地住民とはほとんど接触する機会のない、北当局が見せたい所以外は時間が余っても見せないツアーだったと思います。

 少し前、ある雑誌に「北朝鮮で取材の自由がないのは日本人だから」とか、「北朝鮮に対する偏向報道のたれ流しはやめて、市民のふつうの生活をもっと伝えろ」というような意味の記事を見ましたが、伝えようにも取材の自由もないこと自体に問題があるわけだし、かりに市民にカメラやマイクを向けることができたとしても、住民が自由に個人的意見を述べることからして不可能な社会であるということは、多くの証言から明らかではありませんか。

 ※関川夏央は「世界とはいやなものである」という本の中で、94年4月「何よりも市民同士の関係を正常化することが大切だ」と新聞でコメントを出した小田実に言及して次のように記しています。
 北朝鮮に「市民」がいるという幻想は、北朝鮮を近代国民国家だと見るところから生まれる。北朝鮮には普通のひとびとはあまたいても「市民」はいない。そこは普通のひとびとが異常な体制下に生きている世界である。

 さて、北朝鮮の現在の状況についての石丸氏の話ですが、冒頭から「私にもわからないことだらけ」と前置きしながら、およそ次のようなことを語りました。

 北朝鮮という国に対して、日本人のあいだに大きな誤解がある。たとえば、
①「北朝鮮の人々は、洗脳されたロボットのような存在である。」
②「すべてのことは金正日が決定し、指令する。」
③「北朝鮮社会は停滞したままで、変化に乏しい。」

 ・・・これらはすべて誤解です。

 ①に対して石丸氏は、「たとえば朝鮮国営放送のTV等で流される住民の発言を聞くと、皆金正日体制支持と思ってしまうが、本当に支持している人は10%いくかどうか・・・。大半の人々は変化を求めている」という。一糸乱れぬ行進をしている兵士も、その2割ほどは慢性的に飢えているとか。
 ③については「とくにこの15年の間に(中国以上ともいえる)大変化があった」。つまり「市場経済の蔓延です。」
 1990年代、多くの住民が餓死して以降、発展していった市場経済すなわち闇市の発展は人々の意識をも変えた。配給も滞る国や党を人々はもうあてにしなくなり、また政府のコントロールも効かなくなっているということです。人々が「統一を望んでいる」のは、そうするとこの社会も変わるだろうという期待で、統一でなければ戦争を望むというのも、とにかく変わってほしいという願望がそれほど強いということです。

 この後、8月17日にテレビ朝日「報道ステーション」で放映された「北朝鮮デノミ崩壊」と題したDVD映像を観ました。
 いちばん印象に残ったのは、雑草を集めている女の子の映像。小学校児童に義務付けているウサギ飼育のための雑草だそうですが、たくさん集めてもパン1個の値段にもとどかないとか・・・。テロップを見て驚いたのは、黒くすすけた顔の女の子と思った彼女がじつは23歳とのこと。デノミの影響で現金収入の途を絶たれた両親が餓死。そしてコッチェビ(浮浪児)になってしまったとのことです。(石丸氏の説明によると、この撮影時(6月)からほどなく、彼女の死体が発見されたそうです。)
 また、闇市や路上で住民が保衛員(警察官)に大声で食ってかかっている場面もありました。これも以前では考えられなかったことでしょう。
 市場では食料や日用品に限らず、不動産の闇市場もあることは、「リムジンガン」の記事にもありましたが、労働市場というものまであるそうです。
 住民の願いは、もはや配給よりも、商売をやらせてほしいということだそうで、ヌルボが思うに、ようやく封建時代の末期に達して近代の曙光がちらっと見えてきたかな、という感じでしょうか。

※12月14日の付記
 上記の23歳の女子コッチェビの画像がありましたので載せておきます。

  

 日本に46年ぶりに帰還した李さんの話等については別記事にします。→コチラ

 ※「報道ステーション」で放映された「北朝鮮デノミ崩壊」については、<aoi blog>というブログに、ナレーターの音声や住民の声の字幕等をすべて文字化した記事があります。

[北朝鮮] 携帯電話の取締り強化 & 集会のお知らせ

2010-11-14 23:32:09 | 北朝鮮のもろもろ
 「週刊金曜日」11月12日号にアジアプレスの石丸次郎さんの寄稿が載っていました。
 「週刊金曜日」は、どうも北朝鮮寄りのような記事が多いような感じで、北朝鮮の人権問題についてもあまり取り上げていないような印象があるので、軽く「おっ!?」という感じ。

 ご存知の方も多いと思いますが、石丸さんは以前から北朝鮮住民や脱北者と直接接触して取材を続けていて、「サンデー毎日」や自身が創刊した「リムジンガン」に記事を載せています。近年はとくに携帯電話を利用して北朝鮮内の現地記者から情報を受け取ってきたということです。

 ところが、今回の記事によると、後継者(金正恩)確定の頃から携帯電話に対する取り締まりが強化されたとのこと。以前は捕まっても罰金程度だったのが、最近は携帯電話使用を探知して摘発し、刑も懲役刑を科すようになっているとか。当然内部の記者たちも危ない橋は渡れなくなります。「リムジンガン」の編集にも影響するのかな?

 かつのて東ドイツ等東欧諸国の崩壊の大きな要因として西側の情報流入がありました。私ヌルボは、北朝鮮も中国等から外の世界の情報が入ってくるのは防ぎようがないのでは、と思ってきましたが、さすがに(?)北朝鮮当局はしぶといなーと感心(?)しました。

 石丸次郎氏や北朝鮮関連のブログをいろいろ見てみると、ホントに世間にはいろんな人がいるもんだということを痛感します。北朝鮮非難がそのまま罵倒・蔑視に直結してしまっている人は現今めずらしくもなんともないですが、「差別主義者だ!」と石丸氏を継続的に批判しているブログや、北の3代にわたる権力世襲に対し「北朝鮮における革命と建設の運命に関する問題として捉える必要がある・・・。それは北朝鮮の全国民が実践の中で学んだ歴史的教訓でもあるでしょう」と北朝鮮に温かい理解(?)を示すブログ等々、実際どういう方々なのか、궁금해요~(気がかりです.知りたいです)。

●講演会のお知らせ(再掲)
 石丸次郎氏(アジアプレス大阪事務所代表)に聞く
 「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の現状」
 ―写真展示と脱北帰国者の話しを交えて―

    デノミ後の人びとの暮らしは?政権の今後は?

  講師;石丸次郎(アジアプレス大阪事務所代表)
  場所:横浜YWCAホール(YWの方です)
     (JR関内駅または石川町駅より徒歩6分、地下鉄関内駅1番出口徒歩8分)
  日時:11月20日(土)
  受付:13:30
  講演:14:00~16:00
  参加費:一般800円、学生500円
  定員:160名
  主催:アムネスティ・インターナショナル日本 神奈川連絡会
  連絡先:(amnestykanagawa@hotmail.co.jp)
      090-6471-7542(10:00~20:00))
  協力:アジアプレス


[付記]共感を覚える北朝鮮関係ブログが少ない中で、<朝鮮民主主義研究センター>の基本姿勢はナットクしながら読みました。とくに次の項目。
(1) 朝民研は、北朝鮮の民衆が飢餓や人権侵害に苦しんでいることを現在の東北アジアにおけるもっとも重要な問題と考える。また、そのような状況をもたらした主要な原因は北朝鮮の現体制にあり、その改革または革命なくして問題の解決はない、と考えている。
(2) 北朝鮮に対する武力行使や経済制裁を日本政府に求める国家主義的主張や、朝鮮人をまるごと犯罪者扱いしたり日本社会からの在日朝鮮人の排除を主張したりする排外主義的主張には与しない。同時に、植民地支配の歴史や在日コリアンに対する迫害・差別にばかり関心を向け、北朝鮮の現体制が抱えている問題から目をそらそうとする「反日主義」的主張にも同調しない。

11月20日(土)横浜で脱北帰国者の話 & 北朝鮮の現状についての講演会

2010-10-22 23:42:17 | 北朝鮮のもろもろ
 下記の通り、11月20日に横浜で北朝鮮の現状についての講演会があります。
 講師はアジアプレスの石丸次郎さん、そして脱北帰国者の方も来場して体験を話されます。

○アムネスティ講演会
 石丸次郎氏(アジアプレス大阪事務所 代表)に聞く 
  「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の現状」―写真展示と脱北帰国者の話しを交えて―
 デノミ後の人びとの暮らしは?政権の今後は?
   講師;石丸次郎(アジアプレス大阪事務所代表)
      場所:横浜YWCA ホール(JR関内駅または石川町駅より徒歩6分、地下鉄関内駅1番出口徒歩 8分)
   日時:11月20日(土) 受付:13:30 講演:14:00~16:00
   参加費: 一般800円、学生500円
   定員:160名
   主催:アムネスティ・インターナショナル日本 神奈川連絡会
   連絡先:amnestykanagawa@hotmail.co.jp
       090-6471-7542(10:00~20:00)
   協力:アジアプレス


 同様の内容の"脱北帰国者との対話集会と、北朝鮮内部記者が撮ったミニ写真展"という集会が今年4月9日明治大学で開催されました。
 当ブログ3月31日の記事でもそのお知らせを掲載しました。
 当日は私ヌルボも会場の明治大学に行って、脱北帰国者の男性と女性(日本人妻)、家族のほとんどが北に渡ったという在日の女性、祖父・父・叔父等が北朝鮮に行った辛淑玉さんの話を聞き、かなり細かくメモも取ってきましたが、ブログでは記事にしませんでした。

 その話の中で、とくに強く印象に残っているのは、北朝鮮に「帰国」した身内の求める物を送り続けて彼らを支えようとした、日本に残った家族の大変さです。
 求められる物も当初はネッカチーフや時計等だったのが、だんだん高価な物、特殊な物(トラクター、工作機械、医学書、大量の注射針等々)になっていって、そうでなくても日本でかろうじて暮らしていってる程度なのに負担が増すばかり・・・。
 1人で家族の生活を支えていた辛淑玉さんは、結局ある時点で北朝鮮からの手紙を無視することにした、と声をつまらせながら語っていました。「自分の人生がなくなってしまう」と追いつめられた気持ちで・・・。もう一人の在日女性も「開いていない北からの手紙は家に今でも腐るほどあります」と言っていました。

 集会の後、会場から「北朝鮮に対してどのように対するのがいいと思いますか?」との質問が石丸次郎さんに投げかけられました。私ヌルボも尋ねたかったことですが、石丸さんは「とてもむずかしいです。われわれ皆の課題と言うことでご容赦を・・・。ただ、できるだけ多くの人に実態を知ってほしい」との回答でした。

 脱北して日本に戻ったお2人の話の内容は今はあえて記しません。
 今度の11月20日に来られるのが同じ方かどうかわかりませんが、できるだけ多くの方が集会に参加されることを期待しています。

訂正は、忘れた頃にやっと出る(「毎日」 金正恩の写真について)

2010-10-06 12:31:16 | 北朝鮮のもろもろ
 4月20日の朝刊で「金正銀の初の近影写真」を報じた「毎日新聞」。
 本ブログでも紹介したように、その直後、各方面から誤報との指摘がありました。
 しかし、私ヌルボも注視していたにもかかわらず、「毎日」には続報は全然載らないまま。

 ところが今日(10月6日)の朝刊の8面(国際欄)に、「4月掲載「正恩氏」は別人 東京歯科大教授鑑定」との見出しで先の記事の誤りをその根拠を示して認めるとともに、「複数の情報源 事実と誤認」と題して取材の経緯、誤報となった背景と、反省の記事を載せています。

 4月、誤報との指摘があった時点で訂正記事を出さなかった理由を考えてみました。
①<北朝鮮内部の有力な情報筋>というネタ元に対する信頼度が高かった。

 ・・・こんなところでしょうか?

 しかし、今回の記事で鑑定に出した「99年に撮影された中学校のクラス写真」と、4月20日の記事に載せられた「製鉄工場視察の金正日総書記のそばに写っている人物の写真」の2枚については4月の記事掲載の前に鑑定することもできたわけだから、周到さを欠いていたとの非難は免れないところです。
 上記3つの理由の中では、やっぱり③が一番の理由だったような気がしますねー・・・。

 少しだけ弁護すれば、ことほどさように彼の国についての正確な情報は得るのがむずかしいということでしょう。具体的にはわかりませんが、<北朝鮮内部の有力な情報筋>からのネタでも信頼を置き過ぎると誤ってしまうというわけです。
 そのことは、われわれも念頭においておくべきことだと思います。北朝鮮関係の情報は常に心の中に「?」を確保しておくことです。

 上記の件と直接関係はないのですが、金正恩について何人かの知り合いとの話の中で、彼の漢字表記が話題になりました。
 「なぜなかなかわからなかったのか?」「なぜ北朝鮮当局はもっと早く公表しなかったのか?」等々。
 私ヌルボの考えでは、こうした質問が出ること自体が日本人としての1特性だと思います。
 韓国では、親しい友人でも相手の名の漢字表記を知らないケースはめずらしくありません。
 それでも韓国の新聞等の場合、簡単で便利な漢字は用い、また必要最低限の漢字はハングルの後にカッコ書きで入っていますが、北朝鮮の場合は公式サイト<우리 민족 끼리(ウリミンジョクキリ.わが民族同士)>をみると100%ハングルです。そういう国ですから、「日本人はなんでそんなに漢字が気になるの?」という感じではないでしょうか?
 ※韓国の「東亜日報」を見ると、韓・日・中・美(アメリカ)・英・北(北朝鮮)のような国名はしばしば漢字を用いています。その他、男・女・法・大等は比較的よく見る漢字。

 さて、今回明らかになった金正恩の写真について、さっそく「金日成に似ている」「似せて整形した」等々の話から、韓国サイトでは「人相から性格・人物像をみると・・・」等々、さまざまな情報が飛びかっているようです。
 本ブログでは、このネタについてはもう少し落ち着いてから(書くことがあれば)書くというスタンスでいきたいと思います。

みなとみらいに北朝鮮工作船を見に行く

2010-08-29 23:15:15 | 北朝鮮のもろもろ
 26日に、北朝鮮工作船を見に行ってきました。
 2001年12月22日、九州南西海域で巡視船との銃撃戦の末、自爆と思われる爆発で沈没した北朝鮮工作船は、02年9月引き揚げられ、03年5月~04年2月船の科学館で一般公開されました。04年12月以降は横浜みなとみらいの赤レンガ倉庫近くの海上保安資料館横浜館(工作船展示館)で保存・展示されています。

 もう9年も経つんですねー。私ヌルボも03年船の科学館に見に行きました。ずいぶん大勢の人が見にきていました。

    
      【船の科学館で公開された工作船(2003年9月)
 年のせいで(だけじゃない?)記憶力が衰え、ほとんど覚えていないことに思い至り、自宅からバイクで10分くらいの近場でもあるので、上記の工作船展示館を初めて訪れました。
 詳しい場所からして知らなかったのですが、下の写真のように赤レンガ倉庫のすぐ海側です。バイクの駐輪場もすぐ近くにあってラッキー。(有料駐車場もある。)

    
  【左奥の白い三角屋根が工作船展示館。右端が赤レンガ倉庫。

     
         【工作船展示館の入口。

 中に入り(無料)今改めて工作船を見ると、「でかい!」です。約30m。
 多くの穴(弾痕)があります。貫通してるものもあります。船体を軽くするため鉄板を薄くしてあるそうです。

 
         【でかい!・・・です。

 奥には約10mの小型船も展示されています。コチラは時速90㎞の高速船だとか。(工作船は時速60㎞。)

  
   【小型高速船。その奥にロシア製対空機関銃がある。

 船内から見つかったいろんな物が展示されています。各種武器、水中スクーター、船名擬装用の漢字の型。シャープ製の小型パソコン。そしてタバコや赤飯の缶詰等々・・・。

      
赤飯ととりめしの缶詰。山形県寒河江市の日東ベスト社の製品。どんな経路でここに?

 もっと詳しくいろいろ調べた上で記事にしようと思ったのですが、<海上保安資料館横浜館>のサイトにもいろいろ説明が載っているし、パンフレットも見ることができます。
 また<工作船を見学して思う 第二弾><北朝鮮工作船><北朝鮮工作船(不審船) 船の科学館>等々のサイト、ブログに実に仔細に写真付きで紹介されていて、ここで新たにつけ加えることはありません。
 館内で流されていた説明音声付き実映像も、YouTubeで見ることができるんですねー。

 この資料館ですが、海上保安庁がその役割・任務について広く知らせるために設けたものでしょうが、私ヌルボとしては船と運命をともにした工作船の乗員7人のことを考えてしまいます。北朝鮮政府は彼らの家族にどのように訃報を伝えたのだろうか?とか、彼らにとっての職業的使命感とはどんなものだったんだろう?とか・・・。

 上記<北朝鮮工作船>の記事は次のような言葉で結ばれています。ヌルボも同感です!
 「最後に、工作船乗組員(工作員)には罪はないとおもいます。単に罪がないと言ってしまうと語弊がありますが、彼ら若者は北朝鮮に生まれてこなければ決してこのような運命をたどることはなかったでしょう。北朝鮮という独裁国家・犯罪国家が存在し、そこに生まれてしまったがために過酷な運命を背負わされ、若くして散ってしまったのです。彼らは被害者であり、真の罪人は金正日ではないだろうかとおもいます。」

北朝鮮の公式サイトを見る方法②(ツイッター、YouTubeについて)

2010-08-18 13:19:43 | 北朝鮮のもろもろ
 北朝鮮の公式サイトを見る方法①で北朝鮮の公式サイト<わが民族同士(우리 민족끼리.ウリミンジョクキリ)>を紹介しました。

 さて、このHP画面右上の部分の「▶ 우리 민족끼리 – 유트브」がYouTube(유트브)、「▶ 우리 민족끼리 – 트위터」がツイッター(트위터)です。(下図参照)

 YouTubeの方の手っ取り早い見方は、YouTubeの検索窓に「uriminzokkiri」と入れて検索すればいいんですけどね。

 実際に見て見ると、ツイッターの方は政治宣伝といったものばかりのようです。YouTubeは、まだ一部しか見ていませんが、政治宣伝以外にもそれなりに興味深いものもありました。
 3例だけ紹介します。動画画像は各リンク先でご覧ください。

[A] 「가야금병창 귀틀집 실물레(伽耶琴伴奏 丸太小屋の糸車)」・・・軍服姿(!)で伽耶琴(カヤグム)等の楽器を演奏しています。 →リンク先

[B] 「수중교예 집체조형, 륜돌리기(水中サーカス、集体造形、輪回し)」・・・すごい妙技! →リンク先

[C] 「아동영화 야웅이의 인사(児童映画 ヤウンイの挨拶)」・・・こういうのもあるんですね。内容(あらすじ等はいずれ書き足しておきます。 →リンク先

北朝鮮の公式サイトを見る方法①(ハングルを知らない人でもOK)

2010-08-18 12:45:54 | 北朝鮮のもろもろ
 北朝鮮の公式サイト<わが民族同士(우리 민족끼리.ウリミンジョクキリ)>は以前からたまに見たりしていましたが、最近ツイッターやYouTubeでの動画提供まで始めたことは、一昨日(8月11日)の「毎日新聞」(東京.夕刊)の記事で初めて知りました。

 確認してみたら、たしかにありました(当然)。
 アドレスはコチラです。→http://www.uriminzokkiri.com

 HPのタイトルの下に<조국평화통일위원회(祖国平和統一委員会)>とありますが、このサイトから「労働新聞(로동신문)」や朝鮮中央通信(조선중앙통신)の記事等も見ることができ、まごうかたなき北朝鮮の公式ウェブサイトです。

 いろいろコンテンツが盛り込まれている中で、私ヌルボのお薦めは、上部のバーの「조선영화(朝鮮映画)」、「조선명곡(朝鮮名曲)」「화면음악(画面音楽)」「음악감상실(音楽鑑賞室)」から入って見たり聴いたりできる音楽や動画。
 それから、なんとゲーム(게임)まであるんですねー。
 これらについては、いずれ別記事でとりあげたいと思っています。

 ハングルが読める方はそれらをクリックしてご随意に見ていただくとして、ハングルを全然読めない方も日本語訳で読む方法をご説明します。

[2013年4月6日の付記]
 以下、いろいろ書いてありますが、一番手っ取り早いのは、google翻訳の韓国語→日本語の左側の窓に上記のURL=http://www.uriminzokkiri.comをそのままコピペして翻訳、という方法です。

(1) 記事のタイトルと思われる部分を範囲指定する。(記事内の文章、たとえば冒頭部分等でもよい。)

  

(2) googleの検索窓に貼りつけて検索する。

  

(3) ヒットしたら、[このページを訳す]をクリックする。

  

(4) すると訳文があらわれる。正しく訳されない部分も目につきますが、おおよその文意はわかると思います。

  

 他の方法もあるかと思いますが、タイトルや文章の一部をコピペしてそのままググるのは、もちろん北朝鮮サイトに限らず応用範囲は広いですね。

 また、曲名のわからない歌を聴いて、その聴きとれた部分だけでもハングル入力し、가사(歌詞)の語もプラスして検索すると曲名や歌詞全部がわかることはよくあります。(要は日本の歌の情報探索と同じ、ということです。)

 北朝鮮の公式サイトを見る方法②(ツイッター、YouTubeについて)は→コチラ

「毎日新聞」の<朴奉珠元首相の復権>報道を考える

2010-08-15 13:44:34 | 北朝鮮のもろもろ
 今日(8月15日)の「毎日新聞」は1面トップで北朝鮮の中枢人事についての記事を掲載しています。
 記事の要点は、2007年に首相を解任された朴奉珠(パク・ポンジュ)の復権。朝鮮労働党の要職である軽工業部第1副部長のポストに就いた、というものです。

 「毎日新聞」は今年4月、別人と思われる写真を「金正雲の写真」として1面トップで報じてしまったことは記憶に新しいところです。※本ブログ4月20日の記事参照。
 ニュース・ソースは「平壌中枢に詳しい複数の関係者」とありますが、今回は大丈夫なんでしょうか?

 朴奉珠前首相が解任されたのは2007年4月。韓国ウィキペディアによると、解任理由は「‘先軍政治’時代に軍需経済に非協調的だったため」とあります。そして左遷された先が平安南道順川(スンチョン)市のビナロン連合企業所の支配人という地位。

 順川のビナロン連合企業所といえば、今年2月の「朝鮮新報」の記事に最近の状況が伝えられました。
 工場では長く生産がストップしていましたたが、朴奉珠の左遷から間もない2007年8月に<金正日総書記の現地指導>で再生計画が始動し、この2月6日には再稼働にこぎつけて、祝賀の咸興市群衆大会には10万人あまりが集まり、そこに金正日総書記も出席したとのことです。
 ※ワウコリアの記事を参照しました。

 このビナロン工場の生産再開と今回の朴奉珠前首相の復権と、何らかの関係があるのかないのか・・・はよくわかりません。

 2007年の首相更迭の分析については、<河信基の深読み>というブログ内の<朴奉珠総理更迭と北朝鮮経済改革の展望(上)(下)>という記事が参考になりました。

 他のサイトの記事でも、中国式の改革開放を主張する穏健・交渉派と、軍部に色濃い従来の思想重視・強硬派との路線争いの中で、前者に属する朴奉珠は「守旧派の目の敵」とされていて、彼の更迭は後者が優位に立ったことを示す、という意味だとのことでした。

 ・・・ということは、今回の彼の復権は、今後北朝鮮が改革開放路線をとる、ということなのでしょうか?
 最初の「毎日」の情報信頼度からして不確定要素もあるので、もちろん憶測レベル、そう考えてみました、という程度のものですが・・・。

※韓国メディアの反応は、サイトで見るかぎり「毎日」の記事をそのまま紹介しているだけで、とくにコメントを付けたものはないようです。

※「毎日」は、金正日の妹で張成沢の夫人キム・キョンヒ(김경희)の漢字表記を金慶喜としています。他の多くのメディアではこれまで金敬姬と表記しています。どちらが正しいかを気にするのは日本人的発想なのかも・・・。しかし「毎日」が慶喜としたのは何か根拠があるのか、疑問です。

金正日ジョーク3つ(その3)

2010-08-12 00:57:38 | 北朝鮮のもろもろ
 とりあえず3連続の最後です。

  “아! 행복해”
 영국, 프랑스, 북한 사람이 잡담을 나누고 있다.  
 영국인“나는 집에서 팬티 한 장 입고, 모닥불 앞에 앉아 있을 때 가장 행복하더군.”
 프랑스인“자네 영국인들은 참 호연지기가 없네. 행복이란 모름지기 이런거지. 지중해 해변에서 금발이 물결치는 미녀와…”
 북한인“한밤중에 말입니다. 비밀경찰이 문을 두드리면서 외치는 소리가 들려요. ‘강성미, 넌 체포됐다.’ 그랬을 때 ‘경찰 동무, 강성미는 옆집에 삽니다’라고 말할 수 있을 때. 난 그때가 가장 행복합디다.”


  ああ! しあわせだ
 イギリス、フランス、北朝鮮の人が雑談している。 
 イギリス人「私は家でパンツ1丁で焚火の前に座っている時一番しあわせだったなあ。」
 フランス人「君たちイギリス人は本当に浩然の気がないね。しあわせとは当然こういうことだよ。地中海の海岸で金髪が波打つ美女と・・・」
 朝鮮人「真夜中にですね、秘密警察が戸をたたきながら叫ぶ声が聞こえてきます。「カン・ソンミ、おまえを逮捕する。」 そんな時、「警察同志、カン・ソンミは隣の家にいます」と言える時。私はその時が一番しあわせです。」


 映画「クロッシング」の一場面を思い浮かべてしまいます。また、島田事件という幼女誘拐殺害事件の犯人とされ、死刑確定の約30年後に再審無罪となったAさんから聞いた「朝、刑務官が歩みを止めて自分の獄房の前に立った」(=すぐ刑が執行される)後、間違いに気づいた刑務官が隣の房に向かったという恐怖の体験談も思い出しました。

 おまけにもうひとつ追加。

  “당 중앙이신지요?”
 두 사람이 평양 지하철에서 이야기를 나누고 있다. 
 A“안녕하시오, 동무.”
 B“왜 그러시오.”
 A“동무. 실례지만, 노동당 중앙에서 일하시오?”
 B“아니오.”
 A“혹시 예전에 일한 적 있소”
 B“아니 전혀.”
 A“가족 중에 누구 당 중앙위원회에서 일하는 사람이 있소?”
 B“아뇨.”
 A“당신 내 발 밟았소, 발 치우시오”


  党中央でいらっしゃいますか?
 二人の男が平壌の地下鉄で話をしている。 
A「こんにちは、同志。」
B「どうかされましたか?」
A「同志。失礼ですが、労働党中央で働いていらっしゃいますか?」
B「いいえ。」
A「もしかして、以前働いていたことがおありですか?」
B「いえ、全然。」
A「家族のどなたか党中央委員会で働いている方がいますか?」
B「いえ。」
A「あなた、私の足を踏んでます。足をどけてください。」


 ・・・これは以前何かで読んだ記憶があります。

 本当の北朝鮮内でのジョークは、たとえば<アジア・プレス>のサイト中の「リムジンガン」の記事中に<ジョークと流行語 一覧>というのがあります。アネクドートのような政治風刺というよりも、もっと実生活に即した笑い話のようですが、詳細を知りたい方はアジア・プレスに所定の料金を支払ってご覧ください。

 この際オマケで、日本のジョーク。もうご存じの方も多いでしょうが・・・。

 「日本には正体不明の鳥がいる。 
 中国から見ればカモに見える。米国から見ればチキンに見える。欧州から見ればアホウドリに見える。日本の有権者にはサギだと思われている。オザワから見ればオウムのような存在。でも、鳥自身はハトだと言い張っているようだ。


 けっこう知れ渡った鳩山ジョークですが、最初に考え出したのは誰なんでしょうね? よくできてると思います。あえて難を言えば毒気に欠けるかも・・・。まあ、それが日本たる所以ですけどね。

※ネット社会ではさらに次のように続く。(元来これがオリジナル?)
 それでいて、約束をしたらウソに見え、身体検査をしたらカラスのように真っ黒、釈明会見ではキュウカンチョウになるが、実際は単なる鵜飼いのウ。私はあの鳥は日本のガンだと思う。

金正日ジョーク3つ(その2)

2010-08-11 18:23:44 | 北朝鮮のもろもろ
 このジョークも韓国のサイトから。同様のものがいくつかありました。

  “저에겐 아내와 가족이…”
 모스크바에서 열린 김정일과 블라디미르 푸틴의 정상회담 자리. 휴식시간인데 두 사람은 심심했다. 누구의 경호원이 더 충성심이 있는지 내기를 하기로 의기투합했다. 푸틴이 먼저 경호원 이반을 불렀다. 20층 사무실 창문을 열고 명령했다. “이반, 뛰어내려!” 이반은 흐느끼기 시작했다. “대통령님, 어떻게 그러실 수 있습니까. 저에겐 아내와 가족이 있습니다. 흑흑.” 푸틴은 함께 눈물을 흘리며 사과했다. “미안하네, 이반.”
 다음은 김정일의 차례. “이명만, 뛰어내려!” 1초의 망설임 없이 이명만은 창문 밖으로 몸을 날리려 했다. 깜짝 놀란 푸틴이 이명만을 잡으며 “자네, 정신 나갔나? 여긴 20층이야. 뛰어내리면 죽어”라고 했다. 하지만 이명만은 푸틴의 손아귀에서 빠져나가 창문 밖으로 뛰어내리려 안간힘을 쓰며 소리쳤다. “푸틴 대통령님, 제발 놔 주세요. 저에겐 아내와 가족이 있어요.”


  家に妻と家族が・・・
 モスクワで開かれた金正日とウラジーミル・プーチンのトップ会談の席。休息時間なのだが二人は退屈だった。どちらのボディガードがより忠誠心があるか賭けをしようと意気投合した。プーチンがまずボディガードのイワンを呼んだ。20階の事務室の窓を開けて命令した。「イワン、飛び降りろ!」 イワンはすすり泣きはじめた。「大統領様、どうしてそう仰られますか。私には妻と家族がいます。シクシク。」 プーチンはともに涙を流して謝った。「すまなかったね、イワン。」
 次は金正日の番。「李明万、飛び降りろ!」 1秒のためらいもなく李明万は窓の外に身体を投げ出そうとした。あっと驚いたプーチンが李明万をつかまえて「おまえ、気はたしかか? ここは20階だ。飛び降りたら死ぬぞ」と言った。けれども李明万はプーチンの手から抜け出て窓の外に飛び降りようと必死になって叫んだ。「プーチン大統領様、とにかく放してください。私には妻と家族がいます。」


 伝えられるところによると、北朝鮮では昨年デノミを実施して失敗した朝鮮労働党・朴南基前部長が処刑(銃殺)されたそうです。支配者層でこれだから、一介のボディガードが金正日に抗弁できるわけはないでしょう。
 このジョークも、必ずしも極端な仮定の話ともいえないような気がします。まじめに考えると怖いかも・・・。

金正日ジョーク3つ(その1)

2010-08-11 17:41:27 | 北朝鮮のもろもろ
 とりあえず、ジョークを1つ紹介します。韓国のサイトから拾ったものです。
 韓国語はパス、という方は訳文で・・・。

  “김정일 장군 만세!
 북한 집단농장 일꾼 장만용씨. 하루는 낚시갔다 물고기를 한 마리 낚았다. 기분이 좋아진 장씨, 부인에게 요리를 지시하는데….
 부인 “집에 식용유가 없어요.”
 장씨 “그럼 끓여 먹읍시다.”
 부인 “휴~ 냄비도 없어요.”
 장씨 “아 그럼, 구워 먹으면 되지.”
 부인 “장작이 어딨소?”
 화가 난 장씨, 강으로 돌아가 물고기를 물로 던져 버렸다. 천만다행, 구사일생의 물고기는 소리쳤다. “김정일 장군 만세!”


  金正日将軍万歳
 北朝鮮の集団農場労働者チャン・マンヨン氏、ある日釣りに行って魚を1尾釣った。気分を良くしたチャン氏、妻に料理をいいつけたが・・・ 
 妻「家に食用油がないわよ。」
 チャン氏「じゃあ煮て食べよう。」
 妻「あーあ、鍋もないわよ。」
 チャン氏「ああ、じゃ焼いて食べりゃいい。」
 妻「薪がどこにあるの?」
 怒ったチャン氏、川に戻って魚を水に投げてしまった。何という幸運、九死に一生を得た魚は叫んだ。「金正日将軍万歳!」


 私ヌルボ、政治ジョークの類は好きで、「スターリン・ジョーク」等のタイトルで刊行されている旧ソ連のアネクドート集や「ヒトラー・ジョーク」等々いろいろ読んできました。
 好きな理由は単純におもしろいからですが、多少理屈をつけると、圧政下にあっても、民衆の心のゆとりとたくましさが感じられるからです。江戸時代の狂歌同様、知識階級の逃避等の否定的見方もあるでしょうが、厳しい状況の中で、時代と社会を客観視できる自由な精神は貴重だと思います。
 旧ソ連やナチスドイツ関係のジョークに比べ、中国関係のジョークはないのかなと思っていたら、90年代頃からぼちぼち出回ってきました。

 では、現在の北朝鮮内でそんな政治風刺ジョークがあるのかな、とネット内を探したところ、ある脱北者の記した「北朝鮮にも笑い話があります」という記事がありました。しかし内容は政治批判というものではありません。この件については、もう少し材料を集めて記事にまとめたいと思います。

 日本のサイトで、北朝鮮ジョークはたくさんあります。質的には玉石混淆、というか、石の方が多いかも・・・。笑い、風刺というよりも、侮蔑・嘲笑の要素が強いものがかなり混じっている感じです。

 で、今回は韓国サイトの中で北韓ジョークを拾ってみました。韓国では北朝鮮をどう見ているか、ということもうかがわれるのでは、と考えたからです。
 ※韓国ではジョークよりもユーモア(유머)という語の方が広く使われているようです。

 さて、上掲のジョーク、おもしろいけど、はっきり言ってシビアですねー。現実にこんな(orこれに近い)社会だし、笑いのネタにするのもホントはよくないかも・・・。ましてや、北の住民の同胞である韓国の人はどう考えているんでしょうね? 北に家族・親族のいる人、笑えるのかなあ? 日本人のヌルボもそこらへんビミョーなのにねー・・・。

野口孝行「脱北、逃避行」を読む ・・・いろんなオドロキ

2010-07-29 20:57:57 | 北朝鮮のもろもろ
       

 野口孝行「脱北、逃避行」(新人物往来社)を2日間で読了しました。
 4月発行ですが、6月22日に著者の野口さんが「毎日新聞」の<ひと>欄で紹介されていたのを読んで知った本です。

 野口さんは北朝鮮難民救援基金というNPOのメンバー。
 脱北して中国内に隠れ住む元・在日を無事国外に脱出させ、日本に帰すという任務に実際に関わった際の記録です。

 読んでみて、驚いたこと、初めて知ったことがいろいろありました。
 前述の「毎日」の記事で「無事帰国の姉妹からは詳しく書きすぎだと言われた」とありますが、ホントにここまで手の内を明かしていいの?・・・という感じです。中国内の協力者やシェルター(庇護を受ける家)のこと、国外脱出のルート等々・・・。

 驚いた点を列挙します。

・野口孝行さん自身のこと。1971年生まれで30代。商社にサラリーマンとして勤めていたが、
 「脱北者を救うために自分自身が具体的に行動を起こしたいという思いに駆られ、いつでも海外に出ていける日雇いの仕事(主に医薬品の販売促進)をするようになっていた」。
 ・・・この直情径行というか、軽挙妄動(?)というか、ご両親は当然反対。そりゃそうでしょうねー・・・。
 自身の生活もあえて不安定な道を択んでまで、逮捕・投獄の危険、もしかしたら生命の危険さえあるかもしれない仕事をやろうというわけですから・・・。さらには、うまくいったからといってそれが大きな収入につながるわけでもなし。
 しかし、こういう人がいるからこそ、危機的な状況から救われる人もいるということですね。

・野口さんは、中国語は多少の意思疎通は可能のようですが、朝鮮語はできないし、最初の救出任務にあたった2003年には上海も初めてで、ベトナム国境付近も同様でした。そういう人に重大な任務を任せる組織については少し疑問も感じましたが、それでも大丈夫(?)なほどいろんな機関・組織や、現地協力者等とのネットワークがしっかり組まれている、ということかもしれません。

当の脱北者、あるいは現地協力者が、読んでいてハラハラするほど無警戒・無防備な場面がしばしばあります。ついその場には不自然な言葉(日本語や朝鮮語)で話をしていたり等々。
 この本に登場する現地協力者の女性は、兄嫁が脱北者で、兄と兄嫁は<基金>の支援で日本に渡り暮らしているとのこと。ところがこの崔さんという女性、乗ったタクシーが高い料金をふっかけてきたと運転手に対して声を荒げてやりあったりもしています。日本円にすればほんの小銭程度なのに・・・。

・脱北者をめぐる悲劇の第一原因は北朝鮮政府にあることはいうまでもありませんが、この本を読んで痛感したのが中国公安の厳しさ。脱北者だけが対象というわけではないかもしれませんが、身分証やパスポートの提示を求められることはないか、不断の注意が必要なんですね。
 中国の公安関係者はどんなつもりで職務を遂行しているんだろう、という疑問にかられますが、たぶん彼らのみならず、中国では人権についての認識が日本とはかなり違いがあるようです。
 この本の後半は、ベトナムとの国境近くの町のホテルで公安に踏み込まれて拘束され、さらにその後243日間の看守所(未決囚収容所)で生活したの記録ですが、その中で取り調べに際して通訳を担当している中国人女性が、それまで中国の悪口を一度も言ったことのない野口さんに尋ねます。
 「野口さんは、どうして中国がそんなに嫌いですか?」 野口さんが「どうして私が中国のことを嫌いだと思うのですか?」と聞き返すと、彼女は答えます。
 「だって、中国に来て、法律を破って、そのことさえも認めないで公安に反抗しているじゃないですか? それはやっぱり中国が嫌いということでしょう。中国のどこがそんなに嫌いですか?」
 ・・・中国南部ではふつうに蛇飯をたべたり、看守所で野口さんを含む未決囚たちがやったように犬をツブして食ったり、その他こっそりと(?)サルを食ったりというような食文化や、生活文化の違いもいろいろ承知しておく必要があるわけですが。日本人にとっては常識的な思考回路もどこでも通用するものじゃないということも再認識しました。

聞きしに勝る、と思ったのが「地獄の沙汰も次第」という中国社会北京駅ではなんと駅員自身がダフ屋をやってたりします。看守所内でも金さえ払えば冷たいビールも飲めるし、甚だしくは獄中生活を送るべき未決囚が所外で安楽な日々を過ごしていたり、ここらへんはよくわかりません。

・金といえば、この脱北者問題自体が多くの人と金を引き寄せる大きなネタになっているわけで、その実態も想像以上のものがあるようです。
 これだけ多くの北朝鮮住民がいるとなると、脱出の手引きをするブローカーの他、人身売買の組織等もあるようだし・・・。また中国国外へのある脱出ルートが注目されるようになると(たとえばモンゴル・ルート)公安は当然取締りを強化するから別のルートを開拓しなければならず、すると人も金も移動していくということで、状況は常に流動している、という感じです。

・看守所内での中国人未決囚たちのようす等々、他にも興味深い記述はあるのですが、すでに長々と書き連ねましたので、最後に北朝鮮難民基金関係のサイトを紹介して終わりにしておきます。

北朝鮮難民救援基金HP

「韓国籍の脱北女性3人処刑か」は真偽不明報道

2010-07-23 11:44:05 | 北朝鮮のもろもろ
 今月初め、<韓国籍の脱北女性3人処刑か=中国で拘束、送還-北朝鮮>というニュースが伝えられました。→<時事ドットコム>参照

 昨年9月に韓国に入国した韓国籍の脱北女性3人が今年春中国で北朝鮮の国家安全保衛部要員らに拘束され、北朝鮮に送還後の6月末、咸鏡北道で銃殺刑に処されたというものです。

 私ヌルボ、これはひどい事件だなあと思いました。映画「クロッシング」、あるいはそれ以上。
 とくに韓国籍となると、韓国政府もなんらかの対応があるのでは、と続くニュースに注目していました。
 ところが、ないのです。続くニュースが・・・。
 
 その理由を推測してみました。
①北韓ならやりそうなことだと考えて、そのままスルーしてしまっている。
②事実を確認中。または確認できない。もしくは虚報だった。

 ・・・こういう場合の定石で、ニュースソースを見てみると<自由北韓放送(자유북한방송)>とあります。
このサイトを見ると、直接ラジオを聴けたりして興味深いのですが、この事件についての詳報はわからず。

 さらに韓国のニュースサイトを探ると、インターネットTVのYTN7月5日の放送記事中に求めていた記事がみつかりました。

 見出しは「韓国国籍脱北者3人、北韓に拉致され銃殺
 「」がついているところがポイントです。
 記事の前半部分は日本の諸報道と同じで、自由北韓放送の発表をそのまま伝えています。

 そして後半部分。
 「他の対北短波ラジオである<開かれた北韓放送>は、6月末穏城で3人が銃殺されたが、彼らの国籍は韓国籍の脱北者ではない、単純な北韓住民だとし、2人は殺人罪、1人は北韓女性を中国に売った人身売買の積みで公開処刑されたと報じています。
 <開かれた北韓放送>は、韓国籍の脱北者を処刑すれば、それは一地方の小都市穏城保衛部で処理できないことだと説明しました。」


 ヌルボの見るところ、昨年脱北の3人の女性とかだったら韓国当局は身元等特定できるだろうし、その後の報道がないところをみると、どうも<開かれた北韓放送>の方が正しいと思われます。

 日本のメディアは上記のことを知らないで報道したとすると軽率だったということになるし、内容が不確実と思いつつ報道したとすると、注目されそうな内容だからあのような記事にした、ということなんでしょうか・・・。

 情報の送り手・受け手ともども、メディア・リテラシーについて心しなければならないことは、韓国・朝鮮にかぎらずいろいろあるようです。

付記:韓国籍じゃなく北朝鮮住民でも、公開処刑がいいはずはありません。もっとも、死刑確定後、刑執行までほとんど秘密裏に行われている日本の場合はもっと公開しないと・・・。日本国民は死刑に対してもっと当事者意識をもつべきでしょう。裁判員制度よりも執行員制度を作って、というのはいかがでしょうか?

北朝鮮の文芸誌・月刊「朝鮮文学」に抱いたささやかな疑念・・・

2010-05-31 22:34:23 | 北朝鮮のもろもろ
    

 韓国語の研究や韓国文学の紹介等のさきがけとなった「朝鮮文学」全12冊(1970~74年)について書こうと思いつつ、その前に横浜市立図書館で関係資料はないか見てみたら、検索機にヒットしたのが北朝鮮の文芸雑誌「조선문학(朝鮮文学)」。北朝鮮の文学芸術出版社発行(←北朝鮮では<발행(発行)>ではなく<낸 곳(出した所)>なんですね)、印刷は平壌綜合印刷工場。
 月刊で、주체(主体)99(2010)年の4月号で累計750号(!)になります。
あ、<주체.チュチェ>というのは金日成生誕の1912年を元年とした年号です。

 で、今年の1~3月号をパラパラと2割程度読んでみました。
 全体的にみて、やっぱり「かなしい本」でした。
 紙が白くないのも「かなしい」ですが(すべすべしている点は、外国向け高級紙ということかも・・・)、何よりも「かなしい」のは権力への迎合のオン・パレードという点。

 「何をいまさら」と思われるでしょうが、一応具体例をあげてみますね。
 各号の表紙をめくると現れるのが下のページ。
 上の字は「偉大なる首領金日成同志の革命思想で徹底して武装しよう!」
花束に掛かっているリボンの字、右は「偉大なる首領金日成同志は」左は「永遠にわれわれとともにいらっしゃいます」

    


 「労働新聞」等々すべてそうですが、金日成父子の名前と、その<お言葉>は太字になっています。(下参照)

    

 下は2月号の表紙裏の詩。題は「白い雪におおわれた故郷の家」。
 いなかの雪景色を描いた詩かなとチラと思いましたが、やっぱり・・・です。

    

(訳)
はるかなる密林は 雪におおわれ
空と土 その果てまで まばゆい荒野
ああ 白い雪の中に
春の光を抱いた 故郷の家よ

花々は咲いて 雪の中にほほえみ
星々も下りきて 夢を守った家
ああ 朝鮮の春を
あたたかく育てた 故郷の家よ

崇厳な正日峰の 気を抱いて
吹き荒れる吹雪を鎮める家
ああ 千古の密林に
白頭が建てた 太陽の家よ

ああ 金正日同志
世紀を照らした 故郷の家よ


 「なさけないなー」と思いつつ読み進んで、「アレ?」とちょっと引っかかったのが各号の最後の方に収められている<資料>のページ。

 たとえば1月号にはハン・チョロク(한철옥)という人が「解放前進歩的童話文学での特性」という一文を寄せています。
 彼は1920~30年代のクォン・ハン(권한)、リ・ビョンホ(리병호)、ハン・チュン(한충)、パン・ジョンファン(방정환.方定煥)等の童話作家の作品を紹介しています。(方定煥は有名ですが、ほかの作家はちょっと調べてもわかりませんでした。)
 たとえば、ヨム・ボギン(염복인)の「トラ峠(호랑이 고개)」という童話は、次々とトラに呑みこまれた3人の友だち同士がトラの腹の中でマッチで火を点けてトラの肉を食ったり、力を合わせて中からトラの肉を割いて出たという話です。
 これらの童話は擬人化や誇張の手法によって、たとえば「搾取者たちを懲らし人民の念願を反映する幻想世界を創造した」というわけです。

 さらに2月号の資料ページにはキム・ミョンチョルという人が「高麗時代の農民生活を反映した新文学の思想情緒的特性」と題して高麗時代の詩人の作品を紹介しています。

 字数の関係で、ユン・ヨヒョン(尹汝衡.윤여형)の「ドングリの歌(도톨밤 노래.橡實歌.상률가)だけ見てみましょう。
※出典は、1478年成宗の命で徐居正(서거정)等を中心として編纂された朝鮮歴代の詩文選集「東文選」
※全文が、→<古典を網羅したすごい韓国のブログ>に載っていました。
 この36行中最後の6行がキム・ミョンチョル氏の文に引用されていました。

(訳)
あなたは見なかったか? 高官の家で一日食べるものが一万銭分
美味しいご馳走が星のように食膳に並び 五つの釜に溢れんばかりに盛られ
馬を使う下人まで酒に酔って 錦の敷物の上に吐き
肥えた馬は穀物を嫌って金の檻でいななき
彼ら誰が知ろうか 並べられたそのご馳走が
すべてみな村の年寄りの 眼の底の血だということを


 ・・・・うーん、いかがなものでしょうか?
 何のことかというと、この詩句はそのまま今の北朝鮮の支配者層への批判になってはいないか、ということなんですが・・・。それから、もしかしたら先の文も童話を語りながら、何か今の体制に対する見方がこめられているようでもあり・・・。

 まともな目を持っていたら、封建時代の支配者たちと今の彼らと変わらないじゃないか、と思わないですかねー・・・。
 とするともしかして、①ひそかにそんな本心を高麗時代の詩に仮託して表わした、か、②体制が変わった時に備えてアリバイ的にそうとも読める文にした、か・・・
 それとも③そんな反体制的なことは何も考えず、ただ現在の体制のタテマエをそのまま信じて書いた、か・・・。

 1938年、石川淳の「マルスの歌」が発禁処分をくらったように、ある程度わかりやすいフィクションで批判しようとすると、権力は即座に見抜いちゃうからねー。(誰にもわからないと意味ないし・・・、圧政下でマトモな精神を持っている作家は大変です。(あー、もろ他人事になってますねー・・・。)

 ・・・ちょっと深読みしすぎ、考えすぎ、ですかねー・・・。