ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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「ディア・ピョンヤン」にみる北朝鮮(その1) あれ?景色がゆがんで見える!

2009-08-30 09:10:20 | 北朝鮮のもろもろ
 別の記事に記したように、梁英姫(ヤン・ヨンヒ)監督のドキュメント映画「ディア・ピョンヤン」はいい映画です。その映画自体の評価とは別に、私ヌルボ、その画面から読み取ったピョンヤンの実情(の一端)その他をメモしました。

①映画の最初の方で映されていた平壌の街並み。と見ると、波状のゆがみが上下に動いているのに気付きました。
 私ヌルボが思い出したのは、1991年北朝鮮に行った時のこと。団体バスで元山から平壌に向かう途中の休憩所で、なんとなく外を眺めると、なんかヘン。景色がゆがんで見えるのです。
 つまり、窓ガラスが均質でないため、そう見えるんですね。
 日本ならふつうの、平らで均質なガラスを作るということが、国によっては必ずしも当り前ではないんだな、と思ったものです。湯呑み茶碗をテーブルに置いても、底が真っ平らになっていないので、少しぐらぐらするし・・・。またこれは北朝鮮だけでなく韓国や中国でも思ったのですが、扇子の要があまりしっかりしていない等々。
 技術レベルの問題だけでなく、国民性といったものとも関わりがあるのかもしれませんが・・・。

②新潟港を出た万景峰号が着くのは元山(ウォンサン)港。「20年間変わっていない」とナレーション。
 ・・・ということは、私ヌルボが行った1991年も同じだったということ。たしかに、迎える側の人々の姿、ブラスバンドの曲(ミーミ/ミッミミレド/レッミレドミ/レッソソッソ/ラーラ/ソッソミレド/レッミレドラ/ドッドド  (/と/の間は2拍)、映画に映っていたそのままです。
 着岸前、甲板から元山の街を見て、私はその人通りの少ない、何かどろーんと停滞しているような雰囲気に、まったく違った世界、まったく違った時代に来てしまったような感覚にとらわれました。
 1959年以降、帰国船でこの元山や清津に下り立った人たちのかなり多くが、その時点で自らが選択を間違ったと悟ったということです。ヌルボの場合は「私は旅行者だから日本に帰れるのだ」ということを頭の中で確認して少しほっとしたのですが、彼らの気持ちを推し量ると、心が痛みます。

③元山の丘の中腹等に、大きくスローガンの板が掲げられているのもヌルボが見たまま。
 その文字は「速度戦」「電撃戦」「殲滅戦」のハングル表記。元山だけでなく、いろんな所に同様のものがありました。(そのように鼓舞しないと働く気にならない?)

④平壌の街で、路上で練炭を干している光景が映されていました。家々の中は暗く、電力不足は慢性的なんでしょうね。
 山に緑が乏しく、ヌルボは最初緯度とか気候の関係かなと思いましたが、燃料用に木を切ってしまった結果だとある本で読みました。
 5年前に、中国東北地方の、北朝鮮との国境近くに行ったのですが、そちら方面の山は木々がふつうに生い茂っていました。

⑤映画を見ていてこれも同じだったなあと思ったのは、土埃で霞んだ平壌の空気。 ヌルボが行ったのは夏で乾燥していたためか・・・。バスの車窓から見ると、工事現場がかなりの土埃の発生源のようでした。(季節にもよるが中国からの黄砂の関係があるかも。) 重機類は全然と言っていいほど見られず、大きな立方体のコンクリート塊をほとんど人力で積み重ねているような建築現場でした。

⑥高級アパートに見えても、実際はいろいろ問題が・・・。
 パンフレットによると、「映画で見ると兄貴たちはいい部屋に暮らしているように見えますが、実際は床に空いた穴をカーペットで隠しています。兄たちの家族の一ヵ月の生活費は日本円で約3万円なんですが、これは兄貴たちが内職して生活を切り詰めて1日3回ご飯を食べられるレベルです。北朝鮮では上の中くらいの水準でしょうか」とあります。
 ※ヌルボが払った約30万円がいかに<大金>であったことか・・・
 高層アパートも、エレベーターが稼働していなくて階段を上り下りしなければならなかったり、④で書いたように日常的に停電の時間帯が設定されるようなこともあったりして、日本のモノサシで考えると不便なことがたくさんあるようです。それでも北朝鮮では平壌に住んでいること自体が恵まれている証しですが・・・。

⑦芸術やスポーツ等の隠れた名手はいるかも・・・。
 兄の息子、つまり梁監督の甥は、1995年の訪問時点で平壌音楽舞踊大学付属小学校。2001年の訪問時にはリストとか弾いていました。上手いです。(パンフには「学校でトップ3に入る名手」とありました。) ショパンの「革命」も。<この曲>が<ここ>で<このような少年>によって弾かれるというのは、相当にスケールの大きな、一種の皮肉である、と思いました。これらの楽譜は、日本から送られた物です。
 このような学校に通えて、自宅にもピアノがあって、というのはやはり<上流階級>なんでしょう。
※平壌音楽舞踊大学は日本でいえば東京芸術大学、といったところ。

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