学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

去年の歴史学研究会総会決議案

2012-05-26 | 歴史学研究会と歴史科学協議会
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年 5月26日(土)09時14分58秒

一年後に読み直すと、かなり妙なものですね。

----------
東電福島第一原発で発生した事故はチェルノブイリに匹敵する破局的事態であるにもかかわらず、その実態に関する情報提供は極端に遅れ、放射能の影響等に関する客観的データや指標が体系的に発表されることもないという状況が続いた。政府・東電による情報提供の不適切さは、インターネット上等における様々な不安の声や、時として不確実な情報の氾濫を招いた。これは情報公開の遅れや不十分さが引き起こした事態であるにもかかわらず、このようなさまざまな声を、「風評」「デマ」等のレッテルを貼ることにより、封殺しようとする動きが観察される。また、一部マスコミ・報道機関や研究者の間には、現状を客観的に分析し、将来を予測し、公表することを控える動きが広がっている。
こうした情報統制、情報発信の自主規制のもとでは、現在の危機をどう収拾すべきかをめぐる、冷静・客観的な議論は不可能となってしまう。災害がきっかけとなって、社会の統制の強化やファシズム化が進行し、異論を封じ、「他者」を排除する傾向が強まる場合があることは関東大震災の際の苦い教訓が示す通りであるが、こうした現象が繰り返されることがあってはならない。我々は、今回の原発事故をめぐる情報が迅速かつ体系的に公表されること、すべての記録が保存・公開されて事故の全容が明らかにされ、国民の英知を民主的・科学的に広く結集することを通じて、解決の道が見出されることを強く求める。
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/5873


「社会の統制の強化やファシズム化が進行」するなどと考える人は、完全に時代遅れになっていますね。
この一年間で実際に発生したのは「情報統制、情報発信の自主規制」ではなく、武田邦彦・早川由紀夫等、放射能の恐怖をひたすら煽る悪質な情報発信者の完全な自由、「風評」「デマ」の野放し状態でした。
その結果、きちんとした研究実績を持つまともな医学・生物学研究者の間では「現状を客観的に分析し、将来を予測し、公表することを控える動き」が広がりましたね。
そして、「異論を封じ『他者』を排除する傾向」が国家権力側ではなく、インターネットを駆使する「国民」の手によって主導され、強化されました。
京都の大文字騒動、河内長野市の橋桁騒動、愛知県日進市の花火騒動等、各地の非科学的な「国民」による悪質な差別事件が相次ぎ、今も被災地の瓦礫をめぐって全国各地で凄まじい差別が続いていますね。
恐怖に満ちた噂を作り出す人、その噂を安易に信じて周辺にまき散らす人が続出し、ちょうど関東大震災後の朝鮮人虐殺と同じような状況です。
「関東大震災の際の苦い教訓」はどうなったのか。
歴史研究者が考えなければならない課題は多いですね。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 緑のたぬき・中沢新一 | トップ | 開沼博『「フクシマ」論─原子... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

歴史学研究会と歴史科学協議会」カテゴリの最新記事