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刑法各論

2012-12-27 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月27日(木)23時33分27秒

>筆綾丸さん
宗教感情を害する行為なので、保護法益の面では礼拝所不敬罪(刑法188条、6月以下の懲役若しくは禁固、10万円以下の罰金)が一番ピッタリ来ますね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A4%BC%E6%8B%9D%E6%89%80%E5%8F%8A%E3%81%B3%E5%A2%B3%E5%A2%93%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E7%BD%AA

ただ、問題が二つあって、まず「神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所」に該当するか、次に「公然」と言えるか、ですね。
前者で参考になるのは、今年の夏、那智の滝でロッククライミングをして軽犯罪法違反(第1条第32号「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」)で現行犯逮捕され、礼拝所不敬罪で書類送検された後、不起訴処分となった登山家のケースです。

http://wbs.co.jp/news/?p=10626

那智の滝は注連縄などで信仰の対象であることを明確化していますから、警察は書類送検に際し、「礼拝所」に該当すると判断した訳ですね。
検察が不起訴処分としたのは、容疑者が神社に謝罪するなどしたのを見て情状を酌量したからであって、「礼拝所」であることを否定したものではないと思います。
岩でも「礼拝所」になるのだから、注連縄を張るなどしてあれば「神木」もオッケーとなりそうですね。
次に除草剤をこっそり注入する行為が「公然」と言えるかですが、「午前2時頃に墓碑を押し倒す行為にも公然性は認められ本罪は成立する」とする判例があるので、議論の余地はあると思いますが、明るくなれば誰の目にも不敬行為である墓碑倒壊の事例とは事情が異なるので、かなり厳しい感じがします。
構成要件を全て充足しなければ犯罪は成立しないので、結局、礼拝所不敬罪は無理っぽいですね。

宗教感情とは関係のない犯罪としては、状況によっては建造物侵入罪(刑法130条)の成否も問題となると思います。
建物に接続して障壁等で囲まれている囲繞地(いにょうち)であると認められる場合には、建造物の一部として扱われ、そこへの侵入が建造物侵入罪を構成する(判例)のですが、これは「神木」の管理状況次第ですね。
広い境内や裏山の一画に、建物と無関係に木が生えているだけだと、ちょっと無理でしょうね。

とすると、広く「神木」一般に適用できそうなのは、やはり器物損壊罪(刑法第261条)となりますね。
もちろん、ロッククライミング同様、軽犯罪法にも該当する可能性は高いですが、これは法定刑が非常に軽いですね。

>漢詩
「萬兵斃」とか「粉骨碎身」とか、縁起でもない感じがしますねー。

※筆綾丸さんの投稿「神木と漢詩」へのレスです。
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6654
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