学問空間

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0115 当面の運営方針について(再考)

2024-07-11 | 鈴木小太郎チャンネル「学問空間」
第115回配信です。


一、前回配信の補足

木下論文の<拡大→整理モデル>は宗教に応用できるのではないか。

「拡大の局面と整理の局面の二つの交替・移行として戦争の展開が把握される」(p138)

平雅行氏は「中世においては、呪詛という宗教的暴力が実態的パワーをもつと考えられており、祈りは暴力として機能していた。そうである以上、武家権力も含め、中世国家が暴力装置を発動させる際に、顕密仏教の祈禱を動員するのは当然のことである」などと言われるが、本格的な戦争においては顕密仏教(加持祈祷)など具体的戦力にはならない。
加持祈祷などに頼って戦略・戦術の工夫を怠った勢力は「敗者」となって歴史から消えて行く。

0110 平雅行氏「序章 鎌倉仏教研究の課題と総括的検討」を読む。(その10)〔2024-06-30〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/b2982104d97a297b5a77354b94b9234b
0102 平雅行氏「序章 鎌倉仏教研究の課題と総括的検討」を読む。(その4)〔2024-06-13〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/6343197fc56e0040ac43e0c0c38781c7

しかし、宗教は戦争によって「拡大」された混乱を「整理」し、新しい秩序を安定化させて行く際には必須。
戦争で顕密仏教を必要としなかった「勝者」も、戦後は顕密仏教によって新しい秩序を正統化する。
支配の荘厳こそが顕密仏教に最も期待された役割ではないか。

二、当面の運用方針(再考)

小川剛生『「和歌所」の鎌倉時代』の検討は時期尚早。
暫く様子を見て、書評が集まってから行いたい。

木下論文は最先端の議論。
川合康説は一応検討済みだが、川合説と木下説をつなぐものとして、高橋典幸氏の「鎌倉幕府論」(『岩波講座日本歴史6 中世1』、2013)を先に検討しておくべきだった。

木下(p132)
「現代の鎌倉幕府論の大きな論点は、中世の国制において部分的な存在である幕府が、いかなる外延をもっていたかということである[高橋典幸二〇一三]」

0111 木下竜馬氏「治承・寿永の内乱から生まれた鎌倉幕府─その謙抑性の起源」(その1)
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/6345a16c7c0729fa520a1f463e51af15

高橋典幸(p100)
「戦前来一般的だった鎌倉幕府論との関係にも注意しておきたい。すなわち、中世の政治体制を武家政権に収斂させ、鎌倉幕府を中世の国家機構そのものとみてあやしまない通説の「過大評価」を見直そうとする点に、東国国家論・権門体制論ともに議論の立脚点を置いていたと考えられるのである。東国国家論はそれを東国という場の問題として、権門体制論は治安・警察機能という権能の問題として、それぞれ論じ直したわけである。そうした意味でいえば、両者ともに、鎌倉幕府の空間的もしくは機能的な「外延」に関心を向けたといえよう。その先に想定される存在がいずれも朝廷ということになるわけだが、外延を設定したことは、鎌倉幕府論にとって画期的なことであったことを指摘しておきたい。
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私は高橋典幸氏の承久の乱に関する見解に極めて批判的。
冗談めかした議論しかしていないが、改めて真面目に検討したい。

「朝幕関係が一変したとか、幕府が朝廷を従属下に置こうとしたというわけではない」(by 高橋典幸氏)(2021年 9月29日)
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/8fc879a7e15b24002c5aa3efd256d232
東京大学教授・高橋典幸氏に捧ぐ「隠岐にて実朝を偲ぶ歌(後鳥羽院)」〔2021-10-01〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/715897be49d108c681eb0c462e2af4f8

あわせて、佐藤雄基氏の「鎌倉時代における天皇像と将軍・得宗」(『史学雑誌』129編10号、2020)についても一応の決着をつけておきたい。

0024 佐藤雄基氏の研究について(その1)〔2024-01-24〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/b40ce7a34a7da740383ef93a82085e32

更に東島誠氏の『「幕府」とは何か 武家政権の正当性』(NHKブックス、2013)についても若干の検討を行いたい。

流布本・慈光寺本『承久記』の検討を再開します。〔2023-04-15〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/a869e0e411418f40cc948250a4db0329
0084 「太平記史観」について(その2)〔2024-05-08〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/862767e9de4731e704f12d62c2176317
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