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『宵山万華鏡』と『恋文の技術』

2018-09-03 | 映画・演劇・美術・音楽
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2018年 9月 3日(月)23時38分35秒

森見登美彦ワールドから脱出できず、『宵山万華鏡』(集英社、2009)と『恋文の技術』(ポプラ社、2009)を読んでみました。
プチホラー風味の『宵山万華鏡』には「奥州斎川孫太郎虫」というものが登場し(p45)、最初は作者の創作なのかなと思ったら実在する昆虫とそれを原料とする漢方薬みたいなものだそうですね。
検索すると、例えばJATAFF(公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会)サイトに、

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 そうしたなかにあってわが「孫太郎虫」こそは、これぞ日本が独自に生んだ「漢方薬」ならぬ、昆虫としてはほとんど唯一の「和方薬」であった。孫太郎虫の正体はアミメカゲロウ目のヘビトンボの幼虫で、 成虫がトンボのような翅を持ち、幼虫の頭が扁平でヘビの頭に似ていることがその名の由来である(図1、2)。この幼虫は九州以北の日本各地の河川の清流に棲み、ほかの水生昆虫や小動物を捕食し、 成長すると体長が6センチ内外になる。大型で大あごが発達していて咬まれるとかなり痛いという。この幼虫とその薬用乾物を「孫太郎虫」と称し、黒焼きにして粉末にしたものが子供の疳(かん)の薬として昔から知られていた。 そのほか、戦時中の昭和18年(1943)に日本の薬用昆虫の記録をまとめた梅村甚太郎の『昆虫本草』によれば、「炒って食べれば駆虫剤としても効果があり」、さらに「尚世間にては之を肺病、胃腸薬、 十二指腸虫の疾患にも炙って食はしむ」とある。


といった説明があります。
奥州斎川は宮城県斎川村(合併して現在は白石市)のことですが、上記サイトによれば斎川の田村神社には孫太郎虫ゆかりの石碑だとか資料館があるそうです。
実は私、この田村神社には一度参詣したことがあるのですが、孫太郎虫のことは全く覚えていませんでした。
自分の記憶力は大丈夫だろうかとちょっと不安になりましたが、田村神社の社名はもちろん坂上田村麻呂に由来し、悪路王伝説があり、佐藤継信・忠信ゆかりの甲冑堂が有名で、おまけに芭蕉の歌碑もある盛り沢山の神社なので、まあ、孫太郎虫のことは覚えていなくても仕方ないかな、という感じもします。


『恋文の技術』は特に賞をもらったりはしていないようなので、何となく読む順番が遅くなってしまったのですが、これは本当にツボに嵌ってしまいました。
森見登美彦の他の作品の場合、私は極めて謹厳な顔つきで、まるで法律書でも眺めているかのような雰囲気を周囲に漂わせつつ読むことが可能なのですが、とある公共図書館で『恋文の技術』を読み始めたら暫くして顔面崩壊の危機に陥り、中断して自宅に持ち帰りました。
そして畳に寝っころがって読書を再開したところ、「第二話 私史上最高厄介なお姉様へ」で少しむせてしまい、それがいつまでたっても治まらず、最後には呼吸困難っぽくなってしまって、このまま死ぬかも、などとチラッと思ったりしました。

>キラーカーンさん
>「公定力」よりも一足先に「特別権力関係」は鬼籍に入りました。

近時の「立憲主義」騒動も、数十年したらどのような評価を受けるのですかね。

※キラーカーンさんの下記投稿へのレスです。

駄レス 2018/09/20(木) 01:47:10
>>「債権の法」と「債務の法」
昔、「クイズ タイムショック」で
『坂の街で有名な長崎、「上り坂」と「下り坂」とどちらが多い』
という問題が出たことを思い出しました。
(答えは、当然「同じ」です)

>>「公定力」概念ももはや風前の灯
「公定力」よりも一足先に「特別権力関係」は鬼籍に入りました。
しかし、田母神航空幕僚長(当時)の「論文」事件で、自衛官の人権制限を正当化する理由として
「特別権力関係」或いはそれによく似た何かを黄泉の国から召喚しようとしていた憲法学者や行政法学者はいました
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