学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学の中間領域を研究。

森見作品に触発された綾小路きみまろ的感慨

2018-09-29 | 映画・演劇・美術・音楽

投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2018年 9月29日(土)12時31分20秒

>筆綾丸さん
>『夜は短し 歩けよ乙女』
私は映画『ペンギン・ハイウェイ』の原作から始めて、短期間にほぼ全ての森見作品を読み尽くしてしまったのですが、どの作品も面白いですね。
変てこな内容であっても文章に清潔感があって、読んでいて気持ちが良いです。
ただ、デビュー作の『太陽の塔』(新潮社、2003)だけは少し異質で、生々しい失恋の記憶を反芻する一種のストーカー小説ですから、そこまで書かなくとも、と少し戸惑う部分もありますね。
森見登美彦は寮生活の経験はないそうですが、『太陽の塔』などの四畳半シリーズを読んでいると、自分が寮生活をしていた頃の出来事が思い出されてきます。

「モスクワ横丁」こと駒場寮中寮二階
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/7864f25db25bc54b188200c10925ac6f

私と同室で一年上だった人に開成高出身の哲学青年がいて、群馬の田舎でのんびり育った私は、難解な書物で溢れていたその人の書棚を見て、都会の秀才は違うな、とびっくりしたのですが、その人を時々訪問してきた仲間の中に、その人を更に上回る博識の人物がいて、難解な哲学・思想用語が飛び交う会話にはとてもついていけませんでした。
後にその人物が研究者として大学に残ったことを知り、やはり学者になるような連中は違うな、とずっと思っていたのですが、最近になってその人物が書いた『迷走する民主主義』(ちくま新書、2016)という本を読んだら、意外なことにそれほど感心するような内容でもありませんでした。
不遜な言い方ですが、あれだけ才能に満ち溢れていたように見えた人でも、結局はこの程度なのか、みたいな感じですね。

森政稔『迷走する民主主義』
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480068811/
松岡正剛の千夜千冊、森政稔『変貌する民主主義』
https://1000ya.isis.ne.jp/1277.html

石川健治教授なども昔は周囲から羨望の目で見られるような秀才だったのでしょうが、四十代で清宮四郎のストーカーを始めて以降、すっかり隘路に入り込んでしまっている感じがしますね。

石川健治教授の「憲法考古学」もしくは「憲法郷土史」
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/cf4f5a44c409b736631232d49b35e0f1
石川憲法学の「土着ボケ黒ミサ」
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/5bf547fcd41f62a1df77cc76e0277f3b

苅部直教授も昔は大変な秀才と目されていたのでしょうが、少なくとも『「維新革命」への道』と『歴史という皮膚』はあまり感心しませんでした。

山崎正和氏の『「維新革命」への道』への評価について
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/81a04f41be09e3c6518fc6d6fd26b766
真夏のスランプ
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/8cbc35f8111d92298f989fe9adbf48bf


私など、自分が研究者になって大学に残ろうなどと一かけらも思ったことはなく、その能力もなかったのですが、それでも地味にコツコツと色んな本を読んでいるうちに、それなりに知識も増えて学問が楽しく思えるようになりました。
逆に若い頃、まかりまちがって研究者の世界に入り込んでいたら、今ごろはすっかり燃え尽きていたかもしれないですね。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

言葉の発酵 2018/09/27(木) 13:29:34
小太郎さん
森見登美彦氏『夜は短し 歩けよ乙女』の第一章を読みましたが、大変な才能ですね。農学部卒とは思えぬほど語彙が豊富で、専門は(言葉の)発酵学かもしれないですね。
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