学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

森本あんり『異端の時代─正統のかたちを求めて』

2019-05-27 | 森本あんり『異端の時代─正統のかたちを求めて』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2019年 5月27日(月)10時29分11秒

今回の深井騒動、個人的に一番良かったのは森本あんり氏の著書を読むきっかけになったことですね。
Aug.T 氏が、

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Twitterでの反応へのコメント。
①「深井氏の不正は有名だったというが、なぜ放置していたのか」
⇒学会誌上で論述の不備への批判・警告は度々あった。『日本の神学』に限っても前述の小柳先生の書評(52号)のほか、水谷誠先生(49号)、森本あんり先生の書評(44号)など。

https://twitter.com/mad_sad_toad/status/1127063344358105088

と書かれているように、森本氏は既に2005年の時点で深井氏の論述方法について批判されていますね。
ま、全体的には深井氏に非常に好意的な内容ではありますが。

書評(深井智朗著『超越と認識――二〇世紀神学史における神認識の問題』(創文社、二〇〇四年、三六〇頁))
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihonnoshingaku1962/2005/44/2005_44_183/_pdf

森本あんり氏の『異端の時代─正統のかたちを求めて』(岩波新書、2018)、興味深い記述が極めて多いですね。

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なぜトランプは世界を席巻し続けるのか.蔓延するポピュリズムは民主主義の異端か,それとも正統と化したのか――.キリスト教史の展開,丸山眞男らの議論を精緻に辿り,「正統と異端」の力学から現代人のかくれた宗教性と,その陥穽を示す.神学者が十年来抱えたテーマがついに結実,混迷する世界を読み解く鍵がここにある.
https://www.iwanami.co.jp/book/b372705.html

森本あんりさん『異端の時代――正統のかたちを求めて』インタビュー
https://www.iwanamishinsho80.com/contents/morimotoanri

同書の「第8章 退屈な組織と煌めく個人」では、ラルフ・ウォルドー・エマソンの思想を紹介した後、

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 では、この宗教性はその後どのように発展してゆくのだろうか。後年、エマソンの話を聞いたある人が友人に宛てて書いている。

エマソンの演説は、今まで以上にめちゃくちゃだ。何の脈絡もなしに始まり、あらゆる方面へと展開したまま、唐突に終わる。それなのに、そのばらばらな一つ一つの言葉が、すべて星くずのように煌めいていて美しいのだ。それはまるで、もう少し見続けていれば、ぼうっとした星の雲が渦のようにぐるぐると回り出し、やがてそれ自身の体系がもつ重力の数学的な正確さで惑星へと形をなしてゆくに違いない、と思わせるほどだ(Lowell,86)。

 暗黒の虚空に妖しく光り輝く星雲の渦が、はたしてどのような実体へと凝集することになるのか。それを見届けたい、と思う人は少なくないだろう。この煌めきへの期待感が、エディンバラでギフォード卿を虜にしたエマソンの魅力である。エマソンのように優れた個人の感性をもって、既存の宗教や制度に囚われず、私心なく自然と宇宙、神と魂の本質を究めるなら、どんなにすばらしい成果がもたらされることであろうか─それが、「自然神学」を主題に掲げるギフォード講演設立の動機であった。
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とあります。(p206以下)
ここに出てくる Lowell なる人物、星の話も伴うので、天文台に名を残す著名な天文学者で、明治日本への訪問記『能登』も書いたパーシヴァル・ローウェル(1855-1916)かと思ったら、「引用文献/参考文献」に、

Lowell,J.R. Letter quoted in Marcus Cunliffe, The Literature of the United States. Baltimore, MD,:Penguin Books,1954

とあり(p248)、詩人・外交官のジェイムズ・ラッセル・ローウェル(1819-1891)のようですね。
パーシヴァル・ローウェルの36年前に生れた人です。
無意味な文字列がズラズラ並ぶのが面倒なのでウィキペディアの英語版の方にリンクを張っておきますが、日本語版もかなり充実していますね。

Percival Lowell
https://en.wikipedia.org/wiki/Percival_Lowell
James Russell Lowell
https://en.wikipedia.org/wiki/James_Russell_Lowell

ボストンの名門ローウェル一族は綺羅星のごとく有名人を輩出していますが、系図を見ると、二人はそれほど近い関係ではないようですね。

Lowell family
https://en.wikipedia.org/wiki/Lowell_family
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