投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2014年 5月22日(木)10時30分30秒
今週末は駒澤大学で歴研大会ですが、中世史部会の発表者は下村周太郎氏(「鎌倉幕府の歴史意識・自己認識と政治社会動向」)と木下聡氏(「室町幕府の秩序編成と武家社会」)だそうですね。
http://rekiken.jp/annual_meetings/
中世史部会の「主旨説明」には、
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中世社会は身分秩序や礼的秩序などさまざまな秩序によって規定され、その構造のもとに、諸階層が直接的・間接的に中央政権・国家に連なるとされる。故実や先例によって形成される秩序が、統合のたがとして現実的な効力を持っていたことは、これまでの身分秩序や儀礼等の研究によって明らかにされつつある。多様な社会と中央政権・国家を結ぶのはこれらの秩序であり、権力による秩序形成の問題と、社会における秩序の受容と再生産の問題は、権力と社会のあり方を考える上で、不可欠であるといえる。
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とあり、「礼的秩序」から石母田正氏を連想したので、参考文献に紹介されている木下聡氏の『中世武家官位の研究』(吉川弘文館、2011年)を眺めてみたのですが、意外なことに石母田正氏への特別な言及はありませんでした。
図書館で『歴史学研究』のバックナンバーをあたってみたら、904号(2013年4月)で山田貴司氏が同書の書評を書かれていて、その中で、
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(前略)加えて、「礼の秩序」の一端を解明することを目的とする」(2頁)と明言しながら、「礼の秩序」について説明や著者自身の見解がまったく提示されない点は物足りない。「礼の秩序」について述べた石母田正「解説」(『中世政治社会思想 上』岩波書店、1972年)が参考文献として注記されているのも、第二部第二章のみである。それゆえに、しばしば登場する「礼的秩序の対抗」といった表現の意図にも、いささかわかりにくさが感じられた。
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と言われていますね。
ただ、まあ、2月上旬に少し検討したように、『中世政治社会思想 上』の「礼の秩序」論は量的にも内容的にも貧弱なものであり、正直、私は石母田氏の勇み足程度に思っているので、木下氏が格別言及する必要を認めなかったとしても、それ自体は不思議ではありません。
定義をしない石母田氏
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/79f5086171277a65985537b635aa696b
これが石母田氏の「国家」の定義?
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/dc0d4a90a52fa3a0b66c3af7a4fb3b3c
石母田氏の「礼の秩序」論
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/0141c707a7d365c7ca717ee2ea455dfe
歴史学者の人物誌を探求している関係で、このところ生硬なイデオロギー用語が飛び交った一昔前の論文を読む機会も多いのですが、キューティー・羽仁五郎や安良城・BENI・盛昭の論文あたりを見た後で『中世武家官位の研究』を読むと、まるで除菌されているのではないかと思えるくらい清潔感が溢れていて、すこし戸惑いを覚えます。
表を作るのが好きらしい木下氏には「思想」の匂いが全くなく、こういうタイプの人が歴研大会で発表するようになったのだなあ、と少し感心しました。
>筆綾丸さん
>あんなふう
私も全然分からないのですが、同時代の人のエッセイなどを当たってみるつもりです。
>ベケットとジョイス
日本で言ったら護衛艦「川端康成」とか潜水艦「大江健三郎」みたいなもので、妙な命名ですね。
弱い上に命令に従わなさそう。
※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
小太郎さん
全く不案内で恐縮ですが、尾藤氏の「どうして、あんなふうになったか分からないなぁ」の「あんなふう」とは、どんなふうのことなのでしょうか。
http://en.wikipedia.org/wiki/Irish_Naval_Service
軍艦サミュエル・ベケットのことは初めて知りましたが、強烈な風刺を好むアイルランド人らしい命名かもしれないですね。
Godot ≒ God(神)+ Tod(死)とすれば、ゴドーはやはりニーチェの「神は死んだ」を踏まえているのでしょうね。
LÉ Aoife、LÉ Aisling、LÉ Eithne、LÉ Orla、LÉ Ciara、LÉ Róisín、LÉ Niamhと、先行する軍艦が女性名に由来することを考えると、ベケットとジョイスの異質性が少し気になりますね。
http://www.mod.go.jp/msdf/formal/gallery/ships/dd/index.html
ベケットの基準排水量1,933トンは、海上自衛隊の護衛艦では、最少の「あぶくま型」と同程度ですね。
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