学問空間

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牧原出『「安倍一強」の謎』

2016-09-10 | 天皇生前退位

投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2016年 9月10日(土)09時57分31秒

細谷雄一氏『安保論争』の「文献案内」に、

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 安保法制成立の経緯については、朝日新聞政治部取材班『安倍政権の裏の顔─「攻防 集団的自衛権」ドキュメント』(講談社、二〇一五)がもっとも詳細であり、信頼できる内容といえる。そこでは、内閣法制局の動向と与党内協議について、とりわけ詳しくその経緯が克明に記録されている。高名な政治学者によって書かれた、牧原出『「安倍一強」の謎』(朝日新書、二〇一六)は、内閣法制局のこの問題をめぐる姿勢の変化について、その政治過程が見事に描かれている。
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とあったので両書を入手してみましたが、『安倍政権の裏の顔』は「第一章 安倍の歪んだ執念 禁じ手「小松一郎」の登用」みたいな安っぽい文章が耐えがたく、半分ほどで挫折してしまいました。
どちらかというと「朝日新聞の裏の顔」を描いた本ですね。
『「安倍一強」の謎』は、閣議についての簡明な説明が有難かったですね。(p97以下)

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閣議議事録とは何か

 この特定秘密保護法の制定過程で浮上したのが、閣議と閣僚懇談会の議事録の公開である。これは地味ながらも重要な改革である。内閣史始まって以来の一大転換であり、2014年4月1日の閣議議事録が22日に首相官邸のホームページに掲載された。
 公文書管理の観点からは、最長30年で国の歴史的公文書は、国立公文書館に移管されなければならない。ところが、これまでは最重要の公文書というべき閣議の正式な記録は作成されないものとされてきた。備忘録としてのメモはあるが、それは閣僚の事後チェックを経た正式な記録とはされていなかった。各省の官僚は大臣の発言を確認するために、出席していた事務方の内閣法制局長官、内閣官房副長官に問い合わせていたのである。
 これに対して、第2次安倍内閣は情報公開の観点から、閣議から3週間後をめどに公式の議事録を作成して公表した。
 それにしても、そもそも閣議と閣僚懇談会とは何か。これまで議事録が作成されていないために、よく知られていない制度となっている。閣議の議事が「形骸化」しており、事実上閣議とは「サイン会」に過ぎないといった指摘は、かなり前からされていた。その発端は菅直人が橋本龍太郎内閣の厚生大臣の経験をもとに主張したことである(菅直人『大臣』岩波新書、1998年)。新しい公開の手続きの中では、「発言内容は、事前に官僚が文書で用意しており、「議事録も、内閣総務官室がこれらの文書をつなぎ合わせて作っている」とも指摘されている(朝日4月23日付)。
 その上で、今回の公開の意味は何だったのか。まずは閣議のメモの作成過程がおさえられなければならない。閣議に閣僚が出席しているが、それ以外の事務方の関与はあまり知られていないからである。
 「公表の流れ」を簡明にまとめれば、閣僚以外に、内閣法制局長官と3人の官房副長官が陪席しており、官房長官が不開示情報を削除し、閣僚のチェックを経て議事録が確定する。取りまとめ役は、「作成補助者」たる内閣総務官である。言い換えれば「内閣総務官が説明を受けて議事録案をつくる」のである(日経4月20日付)。
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まだまだ続くのですが、さすがに引用が長くなりすぎたので省略します。
恥ずかしながら、私は閣議の議事録が首相官邸HPに掲載されていることすら気づいていなかったのですが、例えば2014年7月1日の閣議議事録はこんな具合なんですね。

http://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2014/kakugi-2014070102.html
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2014/__icsFiles/afieldfile/2014/07/22/260701rinjigijiroku.pdf

石川健治教授の言う「七月クーデター」は、内閣自身の手で克明に記録されている訳ですね。

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田中耕太郎が好き

2016-09-10 | 天皇生前退位

投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2016年 9月10日(土)09時13分23秒

ブログ「学問空間」の方の検索機能を使って、今まで自分が田中耕太郎に言及した投稿を数えたら32もありました。
私の田中耕太郎好きもそれなりに年季が入ってきましたね。
投稿内容は多様、というか雑多で、それなりに丁寧に紹介しているのもあれば、

岩元禎と田中耕太郎
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/60c053a8f0567517d5ea52128c2141b8
「そんなものに学者が入ったら、後世の笑いを買いますよ」(by 田中耕太郎)
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/caf1e058fe025565a3b9fcd4856b9f32
尾高朝雄と田中耕太郎
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/367fdadb174eb44edffbf1cbee913fc7
「四十年のふ思議なつきあい」(by 志賀義雄)
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/475bca9c33cec69ded3b19191ebd5126

こんな感じで名前が出てくるだけ、というのもありますが。

歴史学研究会・会員向けクイズ
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/82dac9e1be4c6f96eebabf450b24ddc6

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