投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2016年 9月 1日(木)23時18分4秒
新安保法制の話はそんなに長く続けるつもりはなくて、ちょっとした仮想事例に即して、新安保法制を批判する憲法学者・内閣法制局元長官・最高裁判所元判事の論理を検証するに留めようと思っています。
どのような仮想事例かというと、共産党が選挙で勝利して衆議院・参議院とも過半数を握るも、改憲発議に必要な三分の二は確保できていない、という状況が生じた場合ですね。
現実の共産党の得票率はせいぜい5%、どんなに多くても10%くらいが関の山でしょうから、実際には殆どありえない状況ですが、こういう状況を設定することによって、自民党憎し・安倍憎しという感情からいったん離れて、批判派の論理のみを検証することができるのではないかと思っています。
このような状況になった場合、共産党内閣の首相は、当然、新安保法制の廃止を目指すでしょうが、更に旧来の内閣法制局の憲法9条解釈をも否定して、個別的自衛権の否定・自衛隊の否定という最も素直な憲法9条の文理解釈に戻そうとするのではないかと思います。
そして、そのためには内閣法制局長官の更迭や従来の政府解釈を変更する閣議決定も必要になりそうですが、そのような方向転換には「立憲主義」の観点からどのような問題が生じるのか、を考えてみたいですね。
ま、それはともかく、とりあえず南野森氏の内閣法制局絶賛の続きです。(『憲法主義─条文には書かれていない本質』、p172以下)
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◆内山 内閣法制局もお役所ですか?
官僚組織の一つです。法律に詳しい人が揃っています。この内閣法制局の審査が、ものすごく厳しい。
僕も審査の様子を見に行ったことがあります。大きな机に内閣法制局のおじさんが座っていて、法律の難しい本がたくさん積んである。そこにドアをノックして「財務省です」などと言いながら、官庁の役人が何人か法案を持って入ってきて着席する。「では、1条から読んでいきましょう」と言って、「あ、この言葉づかいは違うね」とか、「10条にはこう書いてあるけど、2条と矛盾するんじゃないの?」とか、赤ペン先生のように添削していくのです。
じつはここで、憲法に違反しないかのチェックも行われます。「こんな書き方だと裁判所に憲法違反と判断されますよ。昭和〇年の判例にはこう書いてある」といった突っ込みが入るのです。内閣法制局の人がすごいのは、そういうデータが全部頭に入っている。
◆内山 すごい……。
そういう審査を受けて、赤ペンを入れられたところを直して、また見てもらって赤ペンを入れられて……ということを繰り返して、ようやく法案ができて閣議に提出されます。
こうしてできた内閣提出法案が国会の立法のほとんどを占めているわけですから、法案は国会に出てきた段階でまず間違いがない。それだけでなく、憲法に違反していないかという審査もすんでいることになります。
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この後の内山奈月氏の質問はちょっと面白いのですが、また後で。
>筆綾丸さん
長谷部恭男編『安保法制から考える憲法と立憲主義・民主主義』(有斐閣、2016)を入手し、パラパラ眺めているところなのですが、「熟議」は<「熟議の日」の提唱者として知られるエール大のブルース・アッカマン教授>(豊秀一氏の発言、p89)からの輸入品みたいですね。
「熟議の日」や「熟議民主主義」には不案内なので、少し調べてみるつもりです。
『安保法制から考える憲法と立憲主義・民主主義』
>とても頭の良い人ですね。
南野氏とのやり取りを見ると、内山奈月氏の状況を把握するカンの良さと頭の回転の速さには本当に感心しますね。
※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
タレントの才能 2016/09/01(木) 13:54:19
小太郎さん
『憲法主義─条文には書かれていない本質』(PHP研究所、2014)、読んでみます。
共著者の内山奈月氏ですが、AKB48でアイドルをしながら、慶應(経済)に受験で入学したのなら、とても頭の良い人ですね。慶應(経済)は数学が必須のはずですから、「又は」と「若しくは」の相違にいちばん馴染むのは因数分解ですね、といえば、なーんだ、と即座に理解するかもしれませんね。
余談
http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/57/oui201608300101.html
昨日は、このサイトで王位戦第5局を観戦していて、159手目先手の手番、▲2九香で逆転勝ちだ、と思ったのですが、羽生王位はなんと▲3三桂成と指し、結局、負けました。両者とも一分将棋で、秒読みに追われていたとはいえ、羽生さんほどの天才も間違えるんだな、と感動しました。局後の感想で、▲2九香の一手でした、と羽生さんも認めていますが、コンピュータではありえないことですね。
日本将棋連盟は、年度末に、名局を一局選ぶのですが、8月末現在、この将棋が一番です(失着をとがめて、これは名局ではない、という人もいるかもしれませんが)。徳島・渭水苑の大盤解説を聞いた人は運がいいですね。
小太郎さん
『憲法主義─条文には書かれていない本質』(PHP研究所、2014)、読んでみます。
共著者の内山奈月氏ですが、AKB48でアイドルをしながら、慶應(経済)に受験で入学したのなら、とても頭の良い人ですね。慶應(経済)は数学が必須のはずですから、「又は」と「若しくは」の相違にいちばん馴染むのは因数分解ですね、といえば、なーんだ、と即座に理解するかもしれませんね。
余談
http://live.shogi.or.jp/oui/kifu/57/oui201608300101.html
昨日は、このサイトで王位戦第5局を観戦していて、159手目先手の手番、▲2九香で逆転勝ちだ、と思ったのですが、羽生王位はなんと▲3三桂成と指し、結局、負けました。両者とも一分将棋で、秒読みに追われていたとはいえ、羽生さんほどの天才も間違えるんだな、と感動しました。局後の感想で、▲2九香の一手でした、と羽生さんも認めていますが、コンピュータではありえないことですね。
日本将棋連盟は、年度末に、名局を一局選ぶのですが、8月末現在、この将棋が一番です(失着をとがめて、これは名局ではない、という人もいるかもしれませんが)。徳島・渭水苑の大盤解説を聞いた人は運がいいですね。