数日前からもうひとつ、フォーレの子守唄を奏(ひ)きはじめた。
先だってのLes Berceauxとは違う作品で、こちらのエモーションは明るくはれやか。
大好きな曲だったから、以前、ずいぶん熱心に練習したのだけれど、レガートなつぶやき、8分の6拍子の表現に苦労し続け、そのときは思うような演奏に達することができなかった。
そのころ、ラジオを聞いていて、偶然流れてきたフルート演奏でのこの曲のうつくしさに、しみじみ感動した記憶がある。
旋律がやわらかく変化しながら違う色合いにうつってゆくなめらかさ、ああこんなふうに奏でられたら、とためいきをついたことなど……。
暇をみつけて、ちょっとづつおさらいし続けたおかげで、腕やゆびさきの演奏筋肉、すこしづつ戻ってきた。
このBerceuseは、夜よりも、朝にふさわしい音楽と感じる。
眠り前に歌って聞かせたなら、あかちゃんの朝のめざめがさわやかだろうな、と。
ひるま、上村松園展最終日、「序の舞」を見てきた。
松園さんの描く女人の表情はどれも気高くて、なかでも、この作品は、最高傑作という思いなしもあって、わたしには、中宮寺の弥勒菩薩半跏思惟像を彷彿とさせる。
浮世ばなれした澄んだまなざしを、たくさんたくさんながめてきた。
それから、フォーレなどを弾いて、かたづけものをして、休日が過ぎていった。
しあわせな一日だった。
なだらかに感謝。