嵐に。
今日、甲信越は梅雨入りと。
一日中強い雨と風に晒された。今も海鳴りが聞こえるから、満ち潮かもしれない。
サルバドール・ダリの自画像。
ここまで描けるものか、と唖然とするほど細部まで上手い。彼には古典技法も可能だったのだろう。
画家自身の不安と自信の入り混じった内面を呵責なく明かし、やや狂気めいた雰囲気もあるが、強い力で作品を陽性な方へコントロールする。危うく一歩逸れれば耳を切ったゴッホになりかねないが、ダリの精神力の方が強かった。
華麗で豪奢な衣服の質感、陰影、背景の微妙で品格あるニュアンス、あたかも画面自体をぴしりとアクセントする鞭のように、左目の端を斜めによぎる直線の緊張感、またその直線を持つ手指の見慣れないー現実離れしたー奇妙な形は、妖しく視覚を刺激する。
普通にスタンダードな肖像画ならば、こんな奇形にさえ見える手は描かないだろう。
が、それらの要素すべてが魅力であり、個性化を遂げている。
シュールレアリズム作家の中でもダリの画力は傑出しているが、ウイーン幻想派のクリムトも、見事な古典的技量を持っていた。
そうした豊かな素地あってこそ、現実を超えた〈リアリティのある〉幻想への飛躍が可能だったのだろう。
この作品について、血走った目は嫌だが、こんなに上手に描けたら、と思う。
愛と感謝。