市の星月夜日記

織江市の短歌、エッセイ

去りし人あまた揺らぎぬ大風は他界とこの世の壁崩すごと

2022-06-06 22:00:00 | Weblog

 嵐に。

 今日、甲信越は梅雨入りと。

 一日中強い雨と風に晒された。今も海鳴りが聞こえるから、満ち潮かもしれない。


 


 サルバドール・ダリの自画像。
 ここまで描けるものか、と唖然とするほど細部まで上手い。彼には古典技法も可能だったのだろう。
 画家自身の不安と自信の入り混じった内面を呵責なく明かし、やや狂気めいた雰囲気もあるが、強い力で作品を陽性な方へコントロールする。危うく一歩逸れれば耳を切ったゴッホになりかねないが、ダリの精神力の方が強かった。
 華麗で豪奢な衣服の質感、陰影、背景の微妙で品格あるニュアンス、あたかも画面自体をぴしりとアクセントする鞭のように、左目の端を斜めによぎる直線の緊張感、またその直線を持つ手指の見慣れないー現実離れしたー奇妙な形は、妖しく視覚を刺激する。
 普通にスタンダードな肖像画ならば、こんな奇形にさえ見える手は描かないだろう。
 が、それらの要素すべてが魅力であり、個性化を遂げている。
 シュールレアリズム作家の中でもダリの画力は傑出しているが、ウイーン幻想派のクリムトも、見事な古典的技量を持っていた。
 そうした豊かな素地あってこそ、現実を超えた〈リアリティのある〉幻想への飛躍が可能だったのだろう。

 この作品について、血走った目は嫌だが、こんなに上手に描けたら、と思う。


 

 愛と感謝。
 

 
コメント
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