雑誌「世界」に連載されたルポルタージュを、まとめたもの。
ナオミ・クラインの「ショック・ドクトリン」が、この国でも侵攻している。
ひとの弱みにつけこんで、とんでもないことが起こっている。
東北三県のさま。宮城と岩手の違い。20年前の神戸。
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はじめに 「創造的復興」を追う
第1章 被災地の遺伝子研究
東北メディカル・メガバンク構想/医療費免除は打ち切り/メガバンク構想が抱える倫理的問題/置き去りにされた住民理解
第2章 20年前の創造的復興
荒涼とした人工島――神戸ポートアイランド/「創造的復興」原点の地へ/度重なる特区指定/生体肝移植ツーリズムの計画/「お手本は神戸とピッツバーグ」
第3章 迷走する復興予算――誰が復興を構想したのか
「被災者は社会的弱者ではない」/中央の倫理学会でも批判が続出/震災は「千載一遇の機会」/誰が宮城の復興を構想したか/東芝やドコモが参入
第4章 社会実験にかけられる被災地
村井宮城県知事の「民間活用」/被災地の漁協との対立/浜を分断する水産特区/水産特区は誰が構想したのか/繰り返されるショック・ドクトリン
第5章 協同ですすめる復旧復興
あまりにも対照的な復興/船も売り上げも全員で分け合った/答えは現場にある/初代組合長の教え/現場重視の水産行政
第6章 仙台空港民営化――見失われる着地点
津波に襲われた空港/コンセッション方式/空港民営化への地元の反応/PFI神話はすでに崩壊している/雇用と安全性にはどんな影響があるか/海外での空港民営化状況/風土が阻むショック・ドクトリン
第7章 被災地カジノ狂騒曲
仙台エアポートリゾート構想/チンゲン菜かカジノか/日本列島カジノ狂騒曲/「震災復興カジノ案」再び/空港民営化とカジノの皮肉な関係
第8章 イオンが被災地にやってきた
鉄の街に降ってわいたイオン進出/イオンが街にやってきた/日本最大の流通企業/断れば隣の街に行ってしまう/まとまって声を上げられない実情/追いつめられる仮設商店街/イオン視察団が見たものは/「ここにいる人」で復興はできないのか/田んぼの中に出現したイオン渋滞/地元の市場はガラガラ/ダメージを受ける地元の産直販売店/イオンで働く住民の声/街の中心が三つに分裂/生きた「まち」をつくれるか
第9章 社会的共通資本としての商店街――「まち」と「消費地」
「復興のシンボル」として/予想できなかったイオンの出店/地元商業者が反対できない理由/本当にイオンありきではないのか/用途地域変更という抜け道/世界の動きに逆行する日本/イオニストはゆりかごから墓場まで
おわりに 実験場としての被災地