「正義の行方」どこへ行く?
ドキュメント映画&講談社本
東の足利事件、西の飯塚事件と対比される。そう、九十年代に科学的と脚光を浴びた/浴びせたDNA鑑定。それで、スピード死刑になった西の久間三千年さん。
青木理「絞首刑」、里見繁「死刑冤罪―戦後六事件をたどる」、片岡健「絶望の牢獄から無実を叫ぶ 冤罪死刑囚八人の書画集」、弁護団「死刑執行された冤罪・飯塚事件 久間三千年さんの無罪を求める」などなどで、ずっと気になっていたDNA事件。
三十年以上前に起きた殺人事件と、その後。この春に劇場公開された。ものすごく期待して映画館に行った。
なのに途中で眠くなってしまった。まずい。知らない叔父さん爺さんが多々でてくるからか。元刑事が「百二十パーセント、犯人に間違いない」とか言うし、超むかつく。なんでも並べりゃ良いってもんじゃないだろう。
調査報道を現すのに、新聞記事パシャパシャ並べて映すのも変。見出しを読む隙も無く流れていくのに、疲れる。
でも貴重な映像、丹念な取材、ご縁の魔力か元警察庁長官まで出てくる。国松って刑事局長時代に、DNA旗振りやってるばかりか現場まで行ってるんだ。
NHKの良心を賭けて作成されたドキュメンタリーということでは、必見だろう。
チラシの惹句。これは私たちの「羅生門」。県警、弁護団、自社の報道に疑問を持った西日本新聞の調査報道。
飯田正剛弁護士は前号救援紙にて『映画は「情報」ではなく、主体の問題である。』と書いてらした。「不可知論」批判だって。 そうねえ、主体が感じられなかったのは残念。金聖雄監督の映画だと、びしびし伝わってくるのになあ。
原作じゃなくて取りまとめ本は、良かった。DNA鑑定、峠の目撃証言、車内の血痕、繊維鑑定。それら四つの証拠、いずれも弱い。新聞報道の酷さ、もろもろ。
警察は「離婚なら逢える」甘言にて、妻を騙す。弱い証拠で起訴したせいか、嘘発見器も使う手口。謎の六年前のジャンパー。
手弁当の四十人の再審弁護団。調査報道に光を見る。
余談。死刑直前に久間死刑囚は救援紙に投稿した。長いので短くしてくれとの対応のまま絞首台に。どんなにか無念だったことだろう。雪冤を晴らさねば。
★ ドキュメンタリー映画「正義の行方」公開中
★ 「正義の行方」 木寺一考・著 講談社・刊 千七百円+税