チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
+昭和50年代~現在のお話も・・・

あちらにいる鬼/本

2023年06月15日 | 
著者:井上荒野(朝日新聞出版)2019年

不倫関係にあった瀬戸内晴美(寂聴)・井上光晴と、その妻をモデルとした小説を井上の娘が書いたということで、興味をそそられ読んでみました。
昨年、寂聴役を寺島しのぶさん、妻役を現在お騒がせ中の広末涼子さんで映画化もされました。(ちなみに、井上役は豊川悦司さん。本人よりそれらしいね)

読む前、「あちらにいる鬼」とは当然、長内みはる(瀬戸内晴美・寂聴)のことであろうと思っていたが、読み進めていくうちに、いやいやこれは「鬼」は白木篤郎(井上)の妻 笙子の方では?と思った。
(ネットなどの解説では、3人とも鬼と言えるのではないかと書いてある)
多くの女性との浮気を繰り返す篤郎に、笙子はその事実に気付きながらも平然と日常を過ごす。
(その心中は本人にしか分からないけれど)鬼でなければ、菩薩か?

私は、みはるはズルいと思った。出家という形でその関係から逃げ出した。
妻 笙子は逃げなかった。逃げられなかったのかもしれない。
娘は、こう書いている。

私(笙子)は気付いたーーー(中略)
私は長内みはるに出家してほくなかったのではなくて、出家する彼女が羨ましかったのだと。

みはるが出家した時、篤郎と別れたのかと思ったら、男女の関係ではなかったけれど、篤郎が癌で亡くなるまで付き合いは続いていたようだ。
篤郎は妻もみはるもどっちも愛していたのだと思う。
贅沢な男だ。我儘な男だ。自分に正直にしか生きられなかったのだろう。
だから作家だったのだ。

最後の章まで読み進めて、私(チエ)は気付いた。
彼女(著者)は、自分の母親のことを書きたかったのだと。

これは良い本です。おススメ!





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