神経衰弱というトランプゲームをご存知でしょうか。
ジョーカーを除く52枚のカードをすべて裏返しに並べます。
順番に2枚ずつカードをめくり、AーA、5ー5などのように同じ数字が揃えばそのカードがもらえ、揃わなければ元のとおりにカードを伏せます。
一番多くカードを集めた人が勝ちとなります。
要するにこのゲームは、どこにどんなカードがあるかを記憶するゲームです。
冬のこの時期、チエちゃん家ではこたつを囲んでページワンや七ならべ、ババ抜き、神経衰弱などのトランプゲームを一家揃って楽しんだものでした。
神経衰弱ゲームは、チエちゃんがダントツに強いのです。
まだ小さい弟のたかひろ君は敵ではありません。
さあ、トランプゲームのはじまり、はじまり~
チエちゃんはどのカードを引こうか迷った末に、自分の右手の近くのカードを1枚めくりました。
ダイヤの7です。
7、7、7。7はどこにあるんだろう?
よし、おじいちゃんの目の前にあるあのカードだ!
ハートのQ。
残念。チエちゃんはトランプを元通りに裏返しました。
次はおじいちゃんの番です。
おじいちゃんは真ん中辺りのカードをめくりました。
スペードのQ。
ああ~、やばい。さっき、チエちゃんがめくったハートのQはおじいちゃんの真ん前です。
おじいちゃんに取られちゃう!
ところが、おじいちゃんは全然違うカードをめくって
こりゃ、ダメだ。と笑っています。
チエちゃんはホッとしながらも、思いました。
もしかしたら、おじいちゃんは孫のためにワザと違うカードを引いているのかしら?
私も還暦を過ぎた今、あの頃のおじいちゃんが孫のためにワザと負けてくれたんじゃないとわかりました。
本当に分からなかったのだと。
だって、私自身がそうなりつつあるのだから。
電話番号は完全に覚えられない(覚える気がない?)し、人の名前も出てこない。
さっきまで手に持っていたものを置き忘れて、探し物の日々。
あの頃のおじいちゃんより、まだ若い年齢なのに、大丈夫か?私。