気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

それより七日

2007-05-14 00:29:15 | つれづれ
夜半しづかに猫は寄り来つ生涯の終りの恋のごとき気配に

千疋屋のメロンでなければいやと言ひ美しき顔せりそれより七日

あどけなく寐ねたりしかば死にがほに通へるを見きそれより三日

シルバー券が嬉しい一人と恥づかしい一人観覧車に歳は暮れつつ

床屋さんの兎飴ん棒につながれて麗かやひと日ひくひくしてゐる

(酒井佑子 矩形の空)

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この歌集には、猫と死の匂いがしている。
それより七日、それより三日、の歌を読むと、胸が締め付けられるような感覚に襲われる。わたしは自分の父や母の最期をこんなに丁寧に見て来なかった。母は急死だったし、父のときはこわくて現実から逃げていた。この歌に出てくる死者はおなじ病棟のひとで他人だから、冷静なのだろうか。ほかにも挙げたい歌はいっぱいあった。床屋さんの兎の歌、なんとも自在な詠いぶり。

こうして、いろんな歌集をつぎつぎ読んで、いいなあと思ってまた次を読んでまったく飽きない。読み飛ばすような読み方をするのは、作者に失礼だし、じっくり読みたいが、また次々読みたいものが出て来る。

そう言えば、五月の第二日曜は母の日。夕方、娘から「母の日やね~」と電話があった。

人生はひと色ならず亡き母のオパールの指輪秋の陽にかざす
(近藤かすみ)


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