気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

電柱の  柏木進二  つづき 

2010-02-21 18:50:05 | つれづれ
ビル街のはざまの道をもりあがりながら富士山近づいてくる

糸切り歯覗かせながら軽躁の上野広小路田宮二郎は

放射式石油ストーブまん中に燃えてしっくり園まり歌う

流れつつ解散はせず十九歳名曲喫茶紫苑に及ぶ

大相撲の天井カメラ短靴を揃えて置いた枡席のひと

スマイリー小原踊るは執り成さん乱臣賊子高度成長

果てしなき彼方に向いて手旗うつ田勢康弘著「島倉千代子という人生」

一等は「ぺんてるえのぐ」夏休みの半日を割く写生大会

大輪の菊の尽(すが)れるアーケード黛ジュンの歌う「夕月」

(柏木進二 電柱の 沖積舎)

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一首目は、この歌集でわたしの一押しの歌。富士山がもりあがりながら近づいてくるなんて、すごい。作者にはたしかにそう見えたのだ。富士山は、たまに新幹線から見るという程度の私には出来ない歌。私が毎日見るの、比叡山だが、もりあがりながら近づいてきたことはない。ただそこにあるだけ。感性の違いなのだろうか。
ほか、田宮二郎、園まり、スマイリー小原など、懐かしい昭和の芸能人の名前が出てくる。うまくその人の特徴をとらえている。



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3 コメント

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柏木さんの歌は文体、発想 (山寺修象)
2010-02-21 11:55:04
ともに平凡、という範疇からでてはいないようにおもいますが、やはり、独特のものがあり、いいのではないでしょうか。もう2まわりくらいうまくなればとてもよくなりそうです。次の歌集に期待したいです。
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Unknown (かすみ)
2010-02-21 18:54:03
山寺さん こんばんは。

気の弱いわたしが言えないことを山寺さんが代わりに言ってくれたような・・・。
跋で小池さんが「この一冊は宝探しするつもりで読むのがいい{中略)それを掘り出すのは読者の眼力と幸運である」と書いておられます。
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ともに、と書いてしまいましたが (山寺修象)
2010-02-21 21:50:45
多分、文体の方がストイックで、あまり言い過ぎないのがいいのでしょう。それでいい歌が出来る可能性がある程度あるのでしょう。僕にしては、かなり褒めている方ですね。小池さんと違う言い方で同じことを言っているのなら恥ずかしいかぎりです。
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