気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

でろんでろ 足立尚彦歌集

2013-05-01 01:23:24 | つれづれ
手にとれば賞味期限は亡き妻の誕生日なり納豆を買う

しょうゆさしがしょうゆの色に染まりゆく互いに少し年をとったよ

なむあみだなみだみたいだなむあみだなみだみたいにぬれている月

冷蔵庫の中に孤独は点在し期限のきれた惣菜を食う

枕カバー破れ枕も破れそう孤独はつまりぼろぼろである

募金箱におつりを入れてコンビニを出でたりくらき偽善を連れて

手回しで鉛筆削る 満ちてくるぐるりゆるりと昔むかしが

ヤマボウシの花は何より白く咲く妻の余命を知りし季節に

結婚をしようなどとは言い出せぬままにあなたとする雨宿り

歯磨き粉の残り測るは難しくこんなものかな空即是色

(足立尚彦 でろんでろ ミューズ・コーポレーション)

******************************

足立尚彦の第四歌集『でろんでろ』を読む。
宮崎市在住で「八雁」所属。石田比呂志の系列の方のようだ。
歌はわかりやすく、ストレートに心に響く。奥様を亡くされて、その挽歌もあるが、極力抑えてある。それが却って、作者の孤独感を強調して、効果を上げている。何の説明も要らない、わかりやすい表現。「言い過ぎ」と評する人もいるだろうが、私は支持したい。一気に読んでしまった。