気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

瓊花  英保志郎  

2013-05-26 00:14:04 | つれづれ
眼を病みし和上の記憶に映したる花影は白きたまなす瓊花

水に生(あ)れしとほき記憶の目覚めつつ梅雨の窓辺に読む散文詩

をみなごの掌にて掬へる螢火のみどり女(をんな)の咽頭(のみど)を照らす

咲ききはむる花の哀しみ これ以上咲くことはない今年の桜

きちきちと水面に鳥の声ながれみなつき杜に夏闇ふかし

晩秋の古寺にあかき野苺を喰みつつ錯誤の坂下りゆく

生きて在る罪と悲しみわれにあり甕満つ水のほのにほふ夜

散り敷ける花びらを喰む鹿のゐて飛火野(とびひの)に春は緩らかに過ぐ

肩車の高さより見し春の空 そののちの父の無念は知らず

口中に死者の悲しみ包むごとしグラウンド-ゼロのzi‐rouなる韻き

(英保志郎 瓊花 短歌研究社)

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短歌結社「青樫」の編集・発行人である英保(あぼ)志郎氏と、先日行われた「日豪合同歌会」でお会いする機会があり、歌集を交換することになった。
青樫のことを、よく知らなかったが、塚本邦雄が関わっていた結社だと、教えていただいた。もの知らずで、失礼をしてしまったが、親切に経緯を話してくださった。
歌集の題名『瓊花』は、「けいくわ」=「けいか」と読むのだろう。紫陽花のことのようだ。
歌集は、短歌のお手本といった様相で、端正な歌が並ぶ。
歌歴四十年の満を持しての第一歌集。装丁も美しく、読み応えがあった。