気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人5月号 同人のうた その3

2013-05-10 22:49:45 | 短歌人同人のうた
白粥に小倉屋えびすめ二片ほど吉井勇を読まむ今宵は
(原野久仁子)

鈴のごとく震えていたり白梅の蕊と蕊との間の空気
(守谷茂泰)

福寿草のあかるい黄は放射能浴びても褪せぬ色と知りたり
(岡田悠束)

立ち返る父の言葉をひとつひとつわれはなぞりぬ脈絡もなく
(関谷啓子)

菫色のかすかな明かり見えし日か石巻に生きると君は呟く
(梶田ひな子)

喜楽沼、斯かるバス停あるをしも知らず来し古希にならん歳まで
(宮田長洋)

雑貨屋のサンタクロースをつまみあげ見つめたり 同じところに戻す
(内山晶太)

生きたつてせいぜい八十年なれば美味いうまいと食ふ牡蠣フライ
(中地俊夫)

黄砂ふる春よゆつくりカート押す野菜売場のなかの菜のはな
(渡英子)

歌会の下見の帰りふたりしてかつ丼食べしことも偲ばる
(斎藤典子)

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短歌人5月号、同人1欄より。

短歌人5月号 同人のうた その2

2013-05-10 01:30:09 | 短歌人同人のうた
あちら側は母を送りて生きている者らの食ぶる膳にしゃぶしゃぶ
(今井千草)

金宮の梅割り一杯三百円三杯飲みて小舟を漕ぎぬ
(宇田川寛之)

白梅と紅梅より添ひ咲きゐるはやさしきかたち宵の緑道
(蒔田さくら子)

しっかりと磨いたやうな星たちが頭上にありて春の立つらし
(檜垣宏子)

生と死はわづかな違ひかもしれぬ雪は水面にふれて融けゆく
(原田千万)

許される許されないは薄紙の一重ほどにて嘘の数々
(村田馨)

遺影にする写真がないという義母の髪ととのえて撮る冬の午後
(平林文枝)

老いと言ふ面妖なものにいざなはれ顔が顔みる鏡の面
(新谷統)

もう乗らなくていい病院行きのバスが行く静かに揺らるる三人見えつ
(松崎圭子)

臨終に袋のひもを握りしめ何をあちらに持っていったの
(廣西昌也)

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短歌人5月号、同人1欄より。

近づけばたちまち点る灯のしたをひかりのかたちにふる春の雪
(近藤かすみ)