気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人5月号 初夏のプロムナード その2

2013-05-02 18:35:46 | 短歌人同人のうた
地下鉄の高齢者席にわれはゐて点眼液を三種類注す

有終の美といふはかなき日本語を残して小さき同人誌消ゆ

<あなたにしか出来ない歌を作れ>とふこゑがまたする闇のなかより

(明石雅子 闇のなか)

白雲は空にくつきりその下に死の這ひ寄るは誰も知らずに

冬枯れの庭に遊ぶは風ばかり地震(なゐ)よりこなた雀が居らず

もう誰もかへらぬ家の葉牡丹の白冴え冴えと夕陽を迎ふ

(大和類子 白雲)

寡黙なる河原の石は孤独にて春の流れにうす目をあける

ねころびてけむりの輪っか作らむとほほポンと打つ弥生の空に

となりあう死とは思えど呵呵と笑えばペパーミントの風吹きわたる

(松永博之 弥生の空)

損益のバランスなどは考へもせずに一日レントゲン撮る

冬越せるブルーテントの三軒がそれなりの距離空けて立つ岸

雪舞へるなかを郵便自動車が道に出でむと一時停車す

(神代勝敏 風塵抄)

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短歌人5月号、初夏のプロムナードより。