気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

月蝕書簡 寺山修司

2008-05-16 14:02:51 | つれづれ
おとうとよ月蝕すすみいる夜は左手で書けわが家の歴史

一匹の生くる蛍をはさみ閉じ燃え上がるを待つ悪魔の事典

駄菓子屋でビー玉一つ買いてより眼球譚のはじまりとなる

眼帯の中に一羽の蝶かくし受刑のきみを見送りにゆく

亡き兄の指紋さがしに今日も来る少年倶楽部の貸本屋かな

満月に墓石はこぶ男来て肩の肉より消えてゆくなり

(寺山修司 月蝕書簡 岩波書店)

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没後25年になる寺山修司の遺歌集を読む。
いままで、寺山修司の短歌をちゃんと読んで来てなくて、アンソロジーで少し知っている程度だが、記憶に残るキーワードがここでもよく出てくる。
架空の家族たちを中心に、眼球、蝶、月蝕、蛍、面売りなどなど。耽美な寺山ワールドへ、もう一度入りなおす気分で読んでいる。

詩人とはならずものだと母の言ふ寺山修司 タバコのにほひ
(近藤かすみ)