気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2008-05-12 23:15:09 | 朝日歌壇
母の日の朝寝の母の嵩低し起こさぬ様に母さんと呼ぶ
(京都市 松田千世子)

学徒動員、年金、後期高齢者、わたしを語るひらがながない
(千葉市 土屋まさ子)

数えるという美しきことのあり蝶は一頭絹は一疋(ひき)
(武蔵野市 野口由梨)

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一首目。啄木の歌で有名な「たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず」を思わせる歌。作者のお母様はだんだん年老いて、嵩が低くなっておられるのだろう。久しぶりに会うとそういう変化に気付くことがあるかもしれない。起こさない様に呼ぶところがやさしい。これが「・・・・・昼寝の母の嵩高し・・・・」では、歌として情緒に欠ける。
二首目。上句の漢字言葉の羅列に作者の辿った人生が表れている。役所の使う言葉は厳しく堅い。わたしを語るひらがなは、作者自身がさがすことばだ。もう「わたし」はひらがなになっている。
三首目。なるほど。一つ賢くなりました。辞書やネットで調べると、そういう数え方もあるそうだ。話題の提示に仕方に品があって美しい。

「かすみ」とふひらがなの名のやさしさにまたの一生(ひとよ)を得たる心地す
(近藤かすみ)

豆ごはんまで 坪内稔典歌集 つづき

2008-05-12 00:52:08 | つれづれ
手も足も勝手に動く感じしてキリンを見たりそのあと河馬も

職業は教師?いやいや、木の中の木の言葉など考えてます

ぼくの中にぼくの顔した河馬がいて水に写った虹を食べてる

えんどうの花のあたりに風が立ち遠い昔の鈴鳴るような

むの字には○がありますその○をのぞくと見えるえんどう畑

(坪内稔典 豆ごはんまで ながらみ書房)

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稔典先生は、とても忙しくいつも次々と予定をこなしておられるようだ。基本的には俳人で、性格も俳句的。著書『俳句的人間短歌的人間』にそのあたりは詳しく書かれている。題名、俳句的・・か短歌的・・かどちらが先がわからないような本の作りになっている。
きょう取り上げた歌の中では、特に最後のむの字の歌が好きだ。むの字に○があるという発想をいままでだれがしただろうか。とてもユニークだ。
↓の歌は、稔典先生の俳句講座で作った俳句から、発展させて短歌にしたもの。俳句のままの方がよかったそうな・・・。俳句は私には向いていないようで、行かなくなってしまった。すみません。

白日傘さして私を捨てにゆく とつぴんぱらりと雲ケ畑まで
(近藤かすみ)