
白い巨塔でも使われ私も好きになって、今となっては故本田美奈子の代表曲のようになったアメイジンググレイス。彼女の歌い方はちょ~っと気合いが入り過ぎで苦手。
白い巨塔の主題歌を歌ったヘイリーの声は優しくて好きだ。
大きな御胸に世界の平和を委ねます…というその日本語歌詞からは、神への感謝の言葉ととれるものがあるけれど、決して暗さはなくて希望の歌と捉えていたようだ。
映画のチラシもなんだか音楽風だけれど、映画には何度もこの歌が歌われるが、決してこの曲に関するものではない。
アメイジンググレイスは作曲者は不明だが、作詞者はジョン・ニュートンによる賛美歌であった。
ジョン自身も黒人奴隷を輸送する船の船長として奴隷貿易で巨万の冨を得ていた人物で、船を降りた後牧師となり奴隷貿易に関わった事に対する悔恨と、こんな悪人である自分をも救ってくれた神に対する感謝が込められ生まれたものであった。
1797年イギリスは奴隷制度は支えられていた。
1797年と言えば松平定信の寛政の改革あたり。(覚えている訳がありません調べました(^^;)
当時欧米列強は黒人奴隷をアメリカなどのプランテーションに利用するため、アフリカから拉致・誘拐し輸送船に乗せ奴隷貿易を行なっていた。
特にイギリスでは議会の中でも議員の大半が、奴隷貿易によって財を成したもので占められ、反対するものはウィルバーフォースと数人であり、奴隷貿易をやめることは国益に反する。国を売る行為だと大変な反対を受ける。
しかしウィルバーフォースは奴隷貿易に反対する法案を通すため、40万近い署名を集め、貴族にもその犯罪を訴えたり、黒人奴隷であった仲間が書いた伝記を出版したりと奔走した。
しかし貿易の恩恵を預かる議員達の強力な反対により、諦めかけるウィルバーフォースであったが、世界各地で奴隷による反乱も起き始め、今なら世論も付いて来るだろうともう一度挑戦する。それも誰も考えもしなかった法案の出し方で。
結果、賛成283、反対16で法案成立となり、事実上奴隷貿易の終焉の引き金とした。
この映画はイギリス議会が奴隷貿易廃止してからおよそ200年にあたる2000年に公開された。
しかし、これだけ時間が経ってもアフリカでは現地住民の拉致・誘拐による世代断絶の影響も拭い切れず、無理矢理に引かれた国境線による部族対立も起きて、奴隷貿易の罪の大きさがどれほどか人間の歴史の中で最も罪深い犯罪のように思える。また、未だにカカオやコーヒーの原産地では搾取され続けているのも現実。
奴隷を描いた映画は「アミスタッド」しか観たことはないが、このアメイジンググレイスではウィルバーフォースから過酷な輸送船の状況を語る場面しかないものの、イギリスでのこうした動きを映画にしたという事は評価すべき。
チョコレートやコーヒーを飲む時、原料を誰が収穫しているのかホンのちょっと考えてみるのはどうかと思う。